蘇れジャンクエンジン⑤
さて、漏れたオイルで配線がボロボロになっていたジェネレーターですが、フライホイールは生きているのでステーターと呼ばれるコイルを巻いた部分だけ買おうと思います。今回は4速のランプを光らせたいので4速に入っている事を検出する検出ピンク線が付いたプレスカブのステーターを捜します。ところがプレスカブステーターは出物が有りません。グリップヒーター付き用の発電量の多いものはDIY派に買われてしまいます。グリップヒーター無しの物は使い倒されてボロボロです。
「仕方ない。普通のジェネレーター丸ごとを買おうか」
そう思って調べると妙な事が解りました。プレスカブの配線は普通のスーパーカブやモンキーの物とは違ってボルトオンでは付かないのです。まぁ配線さえ入れ替えれば良いだけなんですが、なんと、プレスカブのヒーター付きのジェネレーターに付いているフライホイールは普通のスーパーカブと違った専用品だったのです。
「フライホイールに合わすとステーターはプレスカブグリップヒーター付き車用を買わんとならん。普通のジェネレーターを買うなら丸ごとか。どうしよう」
所が捨てる神あれば拾う神あり。運良くプレスカブのグリップヒーター付きステーターが見つかりました。しかも開封のみで未使用。値段はジェネレーターを丸ごと買うより格安。ステーターだけ買うなら割安感が無いものの、新品の半額以下のお値段です。迷わず入札しました。
「これは専用のフラホが無いと使えん。競る事は無いはずや」
もしも競って予算オーバーになったら普通のジェネレーター一式を買って配線を追加しようと思っていましたが、競る事無く無事に落札できました。
さて、ジェネレーターが来るまでに準備をしておきます。エンジン自体は組み終わったので掃除したり、フライホイルを付けるナットを捜したりしていました。
「このナットは使えるかな?」
そんな事を言いながらナットをはめようとするのですが、どのナットもクランクシャフトのネジに噛みません。別のM10・P1.25のボルトに付けるとスルスル回ります。ピッチやサイズは合っているのに付かない。これはクランクシャフトの雄ネジが傷んでいる証拠です。
「ここで登場、タラララッタラ~! 六角サラエナットダイス~!」
※大山のぶ代さんの声に吹き替えしていただくと、より楽しめます。
雄ネジの修正に使う『ダイス』って名前の工具ですが、今回使う『六角サラエナットダイス』はダイスホルダーではなくて、ご家庭にある普通のスパナやメガネレンチ、他にボックスレンチなどのボルト・ナットを回す工具にセットして使うダイスです。
「この六角サラエナットダイスは二面幅19mmです。今回は19mmのボックスレンチにセットして使います。大きな力がかかる訳では無いので、なるべく肉薄のボックスレンチのコマを使いましょう」
実は京丁椎はこの
(人は日々成長するものだ……)
現在使っているエンジンを最初に組んだ時、フライホイールを付けようとした作業完了直前の時にナットが噛まず、雄ネジの修正をしようと先輩にダイスを借りて修理しようとするもクランクシャフトの回り止めが上手く行かず、泣く泣くもう一度分解して別の中古クランクに組み直した事が有ります。今回そのクランクのネジ山も修正しておきました。そのうち別のエンジンで使います。
「普段からスーパーカブのエンジンを分解修理される方は用意しておくと良いでしょう。プロに修正してもらう料金と同じくらいの金額で買えます」
ここでクランクシャフトの回り止めにフライホイールをセットします。本来フライホイールは部品ですが、ここでは回り止めの工具として使います。
「フライホイールの取り外し時に使うプーラーの穴は……ボックスレンチの19mmのコマがギリギリ収まるサイズです。ダイスを1~2山噛ませて潤滑油を少し垂らしてから回します。刻印が有る方をボルトに向けてセットします」
潤滑油はネジ山を綺麗に仕上げる為です。
「ダイスを回すときは一気に回さず、手ごたえを感じたら緩め、再び締めるを繰り返すとキレイなネジ山に修正できます。私は『手ごたえを感じたら4分の1回転させてから戻す』と専門学校で習いました」
現在はダイスの切れ味が良くなったから必要無いと言う人もいるかもしれませんが、私は古い人間なので昔のやり方で修正しています。
「刻印が有る方がボルトに噛みやすい様に山が低くされています。このままだとフライホイールにダイスが当たって雄ネジの最後までネジ山が修正できません。一旦ダイスを外して裏返してネジ山を修正します。ダイスを裏返して面取りの無い方をセットして再びネジ山の修正です」
これでネジ山の修正が出来ました。あとはステーターの到着を待って装着すれば完成です。でもそれまで少し時間がかかります。次回は少しだけジャンクエンジンから離れてジャンク部品で遊んでみましょう。
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