京丁椎・反応性低血糖と戦う

ストレスや不規則な生活、そして食生活の乱れなどが原因でなる2型糖尿病。

幸いな事に発見から対処までの期間が短く、今の所合併症などにならず済んでいます。


インシュリンを分泌している膵臓も全く機能しなくなった訳ではなく、8割方機能しているらしく、薬や注射などに頼ることなく尿糖も出ておらず順調なのですが…


「先生、食後2時間~3時間すると思考力が落ちたり意識が怪しくなるんですが…」

「ああ、それは反応性低血糖ですね」


医師の説明によると食後に分泌されるインシュリンが若干遅れて出て来るそうで、血糖値が落ち始めた所へインシュリンの分泌ピークが来て血糖値が下がり過ぎるのだそうです。アクセルを踏んで暫くしてからターボが効くのと似ています。最近は珍しくなりましたが昔のターボ車に有ったターボラグそっくりです。


「ターボラグみたいですねぇ」

「そうですね、レスポンスが悪くなっていますねぇ」


驚いた事に内科の先生がターボラグの事を知っていました。車好きみたい。


ちなみに糖尿病外来の先生は可愛らしい女医さんです。京丁椎けいていしいは男です。美人の指示には逆らえません。この先生は褒めて伸ばすタイプです。京丁椎は褒められて伸びる子です。


そんな訳で困るのがバイクを修理していて夢中になって作業しているうちに反応性低血糖による集中力の低下及び意識の混濁、最悪な時には倒れたり動けなくなったりする事です。


ぐったりとして動けなくなった私を見た母は泣き崩れました。大型車を運転してそこら中を走り回っていた息子が弱ってしまった姿なんて見たくなかったのでしょう。我ながら親不孝者です。


ちなみに『みんな!オラに元気を分けてくれ~!』って集めた元気を一部の地域の人が無駄使いをする片棒を担ぐ仕事でした。具体的には職種は言えませんが。


「食後2時間~3時間が危険な時間帯やな…」


私はこれを『魔の食後2時間半』と命名しました。そのまんまやがなw

だいたいですが、この時間帯に作業した場所にミスが集中しています。

体を壊して以来、食事の時間を決めて、タイマーをセットして作業したりと気を付けていますが、やっぱりぼんやりしたり動けなくなってしまったりします。


「そういう時はですね、低GIの間食を食べてください」

「低GI?」


「低GIはですね…食べてからの血糖値の上昇が…」


説明によると、体にゆっくりと吸収される食品で、植物性で繊維が多いものだそうです。バナナとか大豆を血糖値が下がり過ぎるころに食べると良いそうです。


「午前10時にバナナ1本。午後3時に大豆のバーとか…かな?」

「はぁ…わかりました」


医師のアドバイスに従って10時・15時に適度な間食をするとミスが激減しました。


反応性低血糖の他にも体力低下とも戦っています。素直な性格の私(自分で言うなw)は初診の医師から『脚を切ることになるでしょうね』『失明しますわ』と言われました。もろに信じて減量40㎏。我ながらアホです。


「……と初診の時の先生に言われて怖くて怖くて…」

「ああ、あの医師はですね…」


私が行った病院では初見の医師が診て症状に合った医師に割り振るみたいな感じになっているのですが、最初に診てくれたのは、どうもあまり評判の良くない医師だったようです。


「糖尿病の患者さんって、言う事を聞いてくれない人が多くて…」

「もう少し考えて言って欲しかったですねぇ…俺、素直なんで」


自分で素直なんて言っていますが実際に素直です。そして不器用です。

怖がって体重を急激に落としたので筋力まで落ちてしまいました。


「コツコツと出来る範囲でトレーニングしましょう」

「はい。どんな事から始めたら良いですか?」


分からない事は聞くのが一番。私は相手が年下であろうが知らない事を聞くのは恥ずかしい事だと思いません。


「筋肉を付ければカロリーの消費も増えます。好きな事から始めましょう」


まぁそんな訳で機械好きな私はスーパーDioに始まり、ゴリラを組み立て、カブを組み立ててジャイロを修理した訳です。


最初はフライホイールのナットを外すのにも苦労していた体力はそこそこ回復しました。スタミナは微妙ですが、筋力は7割方回復したのかな?昔の溢れるパワーは望めませんが普通の人位の力は戻りました。30㎏の米袋だって普通に運べます。60㎏は無理ですが。


バイク弄りの他には腹筋・背筋・体幹トレーニング・鉄アレイ・スクワットなどで運動をして社会復帰へ向けて頑張っています。


ミニバイクが走り出すと共に私の体も少しずつ元気になっていきます。


ミニバイクに続いて復活するのは私です。40過ぎでの再出発は坂道発進より難しいかもしれませんが、幸い私は生きています。同期や友人の中には今の私と同じだったりもっと若い歳で亡くなった人もいます。生きているのだから再出発は出来ると自分に言い聞かせてこれからも生きていきます。


さて、このエッセイですが、今回で一区切り。完結です。


でも、私のバイク弄りは始まったばかり。人生もこれから長く続きます。またポンコツバイクを入手して修理したりするかもしれません。乗り始めたジャイロXが故障して再び修理することになるかも。


そこで、今後は更新するか分かりませんが、このエッセイは完結とせずに残しておこうかと思います。26歳で免許を取った遅咲きライダーは現在40歳を過ぎたばかり。バイクは直すばかりであまり乗っていません。このエッセイを次に更新するとすれば、修理したバイクに乗ってどこかへ行った話にしたいですね。そうなれるように頑張ります。


さてと、気楽に買い物やお出かけに使えるジャイロXが完成した事なので…


プルンッ…ブンブンブンブン…


キック1発でエンジン始動。今日もジャイロXは快調です。


今日は経過観察で検査の日。長距離ツーリングはまだできませんが、10㎞ほど離れた病院までバイクで行けるくらいまで元気になりました。今日は良い天気。バイクで移動するのに気持ちが良い日です。




では、行ってきます。




第一章 体を壊した元整備士のリハビリ おしまい。




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