第154話 居場所(1)

は・・


はっくしょんっ!!!


自分のくしゃみで目が覚めた。


「なに??」


驚いて隣に寝ていた高宮も一緒に飛び起きてしまった。



ゆうべは


結局


裸のまま眠ってしまった。


「さぶ・・ってクーラー、ガンガンに利いてるし、」


夏希は上掛けを身にまとう。


「おれ消して寝たよ? 途中でつけただろ、」


高宮は慌ててリモコンでクーラーを消す。


「え? あたし?」


「絶対、夏希だよ。 おれ寝てる時クーラーつけないもん。ほんっと体に悪い、」


ブツブツ言いながら、まだ時間が早かったので高宮は寝てしまった。


「ウソ、点けてないって、」


なんだか悔しくて夏希は彼の体を揺さぶった。


「・・じゃあ、幽霊か?」


不機嫌そうにまた起き上がって高宮が言う。


「え、あたしだってそれ信じるほどバカじゃないですよ・・」


「もー眠いから。」


彼女に構わず彼はまた寝てしまった。


「ちょ、ちょっと!」




朝からハナが止まらなかった。


「風邪?」


萌香が心配をした。


「もう朝から鼻水が洪水のように出るんです、」


「へ・・裸で寝ちゃったんじゃないの~?」


隣にいた八神がからかう。


夏希は図星を指されて、恥ずかしくなり鼻水をかんだテイッシュを八神に投げつけた。


「ばっ・・なにすんだっ! きったねーっ!!」


頭をファイルではたかれた。


「う~~、なんかムカつくっ!」


夏希は悔し紛れにそう言った。


「それはこっちのセリフだっ!」


「もー、くだらないことでケンカしないで、」


萌香はため息をついた。




高宮は相変わらずの忙しさだった。


社長と共に、ホクトエンターテイメントの仕事プラスグループの系列のホテル建設の件で1週間も大阪に出張することになっていた。


「う~~~~、なんっか・・行をどうしても間違えてしまう・・」


夏希はパソコン画面に食い入るようにして格闘していた。


「もう帰れば? 一日中そんなして、」


八神は呆れて言った後に、


「あ、そっか。 高宮、大阪に1週間だって? さびしいもんなあ、帰っても。」


とからかった。


「それは、関係ないでしょう・・」


夏希は八神をジロっと睨む。


「大阪って、大阪支社だよな。 例のかわいいって評判の支社長秘書の子!『あ~、久しぶり~』なんて、盛り上がっちゃったりして!」


とさらに煽ると、夏希の背中がギクっとした。


「久しぶりに会うとさあ、お互い新鮮に思えちゃったりして、」


さらに続けられ、背中がふるふると震える。


「ちょっと、」


見かねた玉田が八神を小突く。


「え?」


我に返って夏希の背中を見ると、モロ動揺が背中に出ている。


「あ、ウソ、ウソだって! 冗談、冗談。」


慌ててフォローした。


「・・わ、わかってますよ!」


夏希が強がったので、八神はまたちょっと憎たらしくなり、


「ま、でも。 夜電話がなかったら・・アウトだな、」


最後のとどめをさしてしまった。


「八神!」


玉田に背中を叩かれた。




夏希はいきなりすごい勢いで帰り仕度を始めた。


その勢いで脇机にあった書類が雪崩のようにどどどっと落ちた。


「あ~あ~、もう、」


八神が拾うのを手伝ってやると、夏希は自分のしたことを思いっきり棚にあげて、


「おねがいします、」


と真剣な顔で言って、部屋から出て行ってしまった。


「って! おまえが落としたんだろっ! おねがいしますじゃねーだろっ!」


八神の声はもちろん聞こえなかった。




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