Summer

第107話 展開(1)

「わかってる。 お盆のころに行けるかわからないけど、3日くらい帰れるように頼んでみるから。」


夏希は母に電話をした。


あんなに休んでしまったのに、これ以上夏休みなんて切り出しずらいな。


でも、GWの時はウソついちゃったし。


夏希はため息をついてふっとカレンダーを見た。



今日は7月29日。


あれ?


そういえば。



急に思い出した。



もう、2週間以上も遅れてる。



さすがの夏希もちょっとドキドキした。



今までこんなに遅れたことなかったのに。



何だか気になっておなかをおさえてしまった。


まさかね。


笑い飛ばそうとしてみたが。




萌香は女子ロッカー室で化粧を直していた。


すると


くらーい雰囲気で夏希が入ってくる。


「どうしたの? 元気ないわね、」


「え・・」


夏希は驚いたように顔を上げた。


「あたしって、なんで、すぐわかっちゃうんですかね、」


「は?」


「体から負のオーラがすぐ出ちゃうって言うか、」


「ま、わかりやすいかもね。」



ロッカーには二人きりだった。


「あのっ・・」


夏希は思い切って萌香に近づいた。


「・・1回だけじゃ、妊娠しませんよね?」


思いがけない言葉を投げかけられ、


「はあ??」


萌香は思わず声をあげてしまった。


「も、大きい声出さないで下さいよ~~、」


夏希は慌てた。


「なっ、どっ、どーしたの?」


「実は、」





「生理が? 遅れてる?」


「はあ、もうすぐ3週間くらい、」


「3週間??」


萌香は驚いた。



「普段、遅れたりとか、ないんで。」


「それって、可能性あるってこと?」


「・・かも、なんですかね・・」


他人事のように首を捻る。




萌香は慌てて手帳を取り出し、夏希に詳細を聞き始めた。


「これはかなり可能性はあるかも、」


と萌香に言われて、


「えっ、」


夏希はいきなり動揺し始めた。


「どう、しよう、」


「どうしようって、調べなくちゃ、」


「え、どうやって、」


夏希は緊張の糸が切れたように取り乱し始めた。



「と、とりあえず検査薬を買いに、ドラッグストアに、」


萌香までドキドキしはじめた。


「高宮さんは?」


「え、昨日から福岡に社長と出張で、」


「そっか、」


「でも、ちょっと気にしてくれてて。 あたしは、え、そんな1回きりでできっこないじゃん!って、思ってあんまり気にしてなかったんですけど、」


「1回きりって、」


こっちまで恥ずかしくなる。


「だって! それからは・・ほんっと! 毎回ちゃんとしてくれて!」


いきなり雑踏の中で絶叫し始めたので、萌香は慌てて夏希の口を押さえる。


「わ、わかったから! もう、こっちが赤面してくる。 1回きりでもタイミングがあったら、できる可能性はあるから、」


萌香は小声で言った。


「そ、そうなんだ、」


本気でそう言う彼女に、



ほんまに


何もわかってへんなあ。



萌香は心配になってきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る