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第70話 関係(1)

「おやすみ。」


いつものようにマンションの前で手を振って別れた。


「おやすみ・・なさい。」


夏希も小さく手を振った。



それが少し寂しく。


胸がきゅんとなる。




「んね~。 昨日、どうだった?」


翌朝、さっそく南が夏希にすりよってくる。


「え・・おもしろかったですよ、」


夏希は普通に言う。


「どこに行ったん? ドライブ?」


「・・遊園地、」


「やっぱり。」


ちょっとがっくりした。


「んで。 コースター乗り倒し・・。」


「はあ??」


「も~、めちゃくちゃおもしろかったんです。 よみうりランドのコースター全部乗って~。」


「中学生のデート?」


南はまたまたがっくりした。


「って、南さんがそこから初めてみれば~って、」


夏希はちょっと不満そうだった。



それでも南はそれに付き合わされた高宮のことを想像し、


「高宮、疲れてなかった?」


と笑った。


「ちょっとヘロヘロでした、」


と言ったのでまた笑った。


「28の男がさあ。 そりゃ、ヘロヘロになるわ、」


「行きたいとこでいいって・・言うから、」


ちょっと膨れた。


「ま、そこが加瀬のかわいいトコやもんなあ、」


彼女の頭を背伸びして撫でた。


「コドモだったかなあ~。 やっぱり、」


夏希はちょっとだけ後悔した。


「ええんちゃう? 高宮もそんなん実は期待してたかもしれへんし。 ま、それはいいとして。 そのあとは??」


ニヤついてにじり寄る。


「え・・ヒルズに戻ってきて、ゴハン食べて。 帰りましたよ。」


「え、そんだけ?」


「はい・・」


「帰ったって、別々のトコに帰ったの?」


「え・・別々ですよ、」


夏希はぎょっとした。



「・・アカン、」


南はため息をついた。


「そんなこと言われても。」


「高宮も何やってんねん、も~~~。 昼間ヘロヘロになって夜もヘロヘロでどないすんねん!」


ひとりでぶつくさ言った。


「夜もヘロヘロって・・」


夏希はやや後ずさりをしてしまった。


「ほんまに、偉いな。 高宮は、」


南はつくづく言った。



「でも、なんかね。 お父さんみたいな感じで、」


夏希は笑う。


「お父さん?」


「なんて言ったら怒られそうですけど。 いっつもあったかく見ててくれてるみたいで。 ウチのお父さん、そういう人だったから、」


嬉しそうにそう言った。



高宮は相変わらず忙しい毎日を過ごしていた。


それでも。


彼女とは無理をせずに


こうして楽しいこといっぱいして。


自然に寄り添っていけたら。


夏希との関係をそう考えていた。


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