第69話 デート(3)

はああああああああ。


高宮は大きなため息をついた。


「く、くだらないって言ったじゃないですか、」

呆れられた、と思い夏希は赤面して言う。


高宮はのっそりと彼女に振り向いて、


「そん中からジェットコースター乗り倒しを選んだのが、よくわかんないけど。  ・・めちゃくちゃ・・」


「え? めちゃくちゃ? なんですか?」


高宮はいきなり夏希の手をぎゅっと握った。


「え・・」

ドキっとした。


「萌える・・」


「は?」


「・・って言うんでしょ? この場合。」



夏希は怪訝な顔をして、


「意味・・わかんないですよ。」

と言った。


「いこ、」

高宮は彼女の手を取った。



ほんっと

なんてカワイイんだ・・。

おれとずっと一緒にいたいだなんて!



高宮はもう腰が抜けそうなほど

『萌え』ていた。




遊園地でたっぷり遊ぶともう夕方だった。


「あ~、おもしろかったぁ。 高宮さんもけっこう楽しんでたじゃないですか、」

夏希は笑う。


「なんか我忘れちゃったなあ、」

高宮も笑った。


彼女といると

全然違う自分になる気がする。


電車に乗って都心に戻っていく。


「ね。 すんごいキレイな夕陽。」

夏希は高宮の肩を叩いて、後ろを指差す。


「ほんとだ・・」


車内がオレンジ色に染まる。

彼女の笑顔も。




ヒルズにある夜景が見えるイタリアンレストランに行った。


「こんな格好なのに、」

夏希は気にしたが、


「全然大丈夫だよ。 かわいいし。」

と真正面から言われて、ものすごく恥ずかしくなる。


大きな窓に面したカウンター席に座る。


「わ~・・手が届きそう。」

夏希は思わずちりばめられた光たちに手を伸ばした。


そんな彼女にまたクスっと笑う。


「え・・なんですか?」


「ん? 普通はそういうのって言うだけで、ほんとに手を出す人っていないかなって。」


「ま、またやっちゃいました? あたし、」

夏希は赤面した。


「ううん。 すっごく素直だよね。 そういうのって。 計算とかしてないって言うか。」


彼は

いつもすっごくまっすぐに気持ちをぶつけてくる。

それが

ちょっと恥ずかしくて

戸惑う。




「え~、コピー機壊しちゃったの?」


「や、だから壊したんじゃなくて。 勢いよくフタを開けたら・・バキって・・」


「壊したんじゃない、」

高宮は大笑いした。


「そんな力入れてないんですけどね~。」


「おれの足も砕いたしな。」

と言われて、


「ま! まだそのこと! あれも、ドアが重かったから・・勢いが・・」


高宮は笑いが止まらない。




食事を終えて店を出ると10時を回っていた。


「今日1日長かったなあ・・」

高宮は言った。


「ホント。 早起きすると1日って長いですよね~、」


その時

突然高宮は夏希を壁際に押しやってキスをした。


建物の影になっていて人通りのない場所ではあったが。


「ん・・」

息が漏れる。


外で

こんなに長いキス


恥ずかしい気持ちと。


やっぱり

気持ちいい・・。


って思ってしまう。


彼の二の腕に手をかけた。


キスの後、ぎゅっと抱きしめられた。


彼女の体の感覚が

少しずつ自分に気持ちを開いてくれているのがわかる。

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