第65話 心配(2)

「ま、でも。 カレシいますって断ったらしいで。 安心したら?」

志藤は高宮に言ったが。


正直。


彼女が他の男に好意を持たれてるってこと自体、あんまり考えなかった。



おれくらいだろ? みたいな?

彼女のよさをわかってる男は!

って。


高宮はさらに固まっていた。


「もう、そんな怖い顔して考え込まないでって。 加瀬だってあんた一筋やん。 親にウソつくくらいならホンモノだよ、」


南はヘンな励ましをした。


「でも! 加瀬ってあんなやけど。 まあ、顔はかわいいし。 背はでっかいけどスタイルはいいし。 性格も申し分ないし。 もててトーゼンと思うで。 今まではそういう機会がなかったってだけで。 あんまり油断せえへん方がええで。」

そうも言った。


「なんも知らないだけに、隙だらけやし。 斯波もあいつは隙が服着て歩いてるって言うてたから。」

志藤も笑った。



家に帰った高宮はなんとなく彼女が気になって電話をしてみた。


しかし

電波が悪いのか電源が入っていないのか、繋がらない。

ますます心配になってくる。


どこ

行ったんだろ。


しかし

その頃

夏希は爆睡していた。

携帯の電池切れであった・・。



そんな気持ちで

京都へ行くことになり。


はあああああ。


高宮はため息をついた。


一応、メールしとこうかな・・。


と思ったが、新幹線の隣に座る北都社長の目を気にしてやめた。


いきなり

彼女の周囲が気になり始めた。





夏希は斯波に頼まれたコピーを撮っていた。


すると南がやってきた。


「高宮、京都なんやって?」

と言われて、


「ああ、そんなこと言ってましたね。 金曜日まで社長についてって。 ナントカってウチが出資してる劇場の打ち合わせとか・・」


「ふーん・・」


沈黙があり、なんとなく視線を感じて、

「なんですか?」

夏希は南に言った。


「や・・別に。 ねえ、高宮とうまくいってるの?」

身を乗り出されて、


「え、うまくいってるかって、言われると・・まあ、」

ちょっと照れて答えた。


「毎日会っちゃったりしてんの? 家も近くなったんやろ?」


「毎日なんて。 高宮さん、忙しいですから。 電話とかはしますけど、」


「え、デートとかせえへんの?」

さらに突っ込まれ、少しのけぞりながら、


「し、しません。 ゴハン食べるとか・・そんなで、」


「また、食いモンかあ。 しゃあないなあ。 色気なくて、」


「だいたい、あたしがおなか空いてるんで・・」

情けなさそうに言う。


ぷっと吹き出しそうなのを堪えた。


「今度の日曜はお休みなんで。 どっかに行こうかって・・」

夏希はさらに恥ずかしそうに言う。


「へ~。 そやな。 最初は昼間から始めないと。 夜ばっかじゃ、」


「夜って、」

ぎょっとした。


「遊園地デートとか初めてみれば? ボーリングとか、」

とからかうと、


「中学生のグループ交際じゃないですか?・・それ、」


「だいたい一緒やろ?」


「そんなの楽しいかなあ。」


「楽しいって! 加瀬と一緒やったらどっこでも嬉しいやんかあ、」


南の言葉に、


「そ、そんなあ、」

夏希は大いに照れてコピーのフタを思いっきりバカっと開けた。


すると


「あっ・・」



ウソのようだが

フタがバキっという音をたてて壊れた。


「どんだけ力出してんねん・・」

南は呆れた。

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