第58話 近づく(2)
「カレシ、ここに来たことあるんでしょ?」
春奈はさらにつっこんで聞いてきた。
「ウ、ウン。」
「そりゃ、そうとう我慢強いね、」
彼女はおかしそうに笑った。
「我慢強い?」
「男って。 なんていうのかな。 そういうのって、心と体って違うって言うか。 部屋に二人っきりなんかになったら、正直・・スグだよ、」
スグって。
生々しい・・
夏希はドキドキしてしまった。
「春奈は・・いつだった?」
そのドキドキを押さえながら聞いてみた。
「え?」
「その・・初めてのときって・・」
「え~高1の時だったかなあ・・」
「高1??」
正直信じられなかった。
高1のころなんか
あたしは毎日毎日、家と学校とグラウンド以外は全くないと言ってもいいくらいだったのに。
「つきあって、1ヶ月くらいしたとき。 彼の部屋で。 なんとなくそういう感じになって・・」
今度は夏希のほうが身を乗り出した。
「なんかびっくりしちゃって。 あ、男の人って・・こうなんだって、思った。」
「こうって?」
「なんかね。 いつもと違う人になっちゃう感じ。」
「どういう風に?」
もう疑問だらけだった。
「あ、男なんだなあって。 そういう感じ。 理性とかそういうのが全部なくなると・・こうなるんだって。 動物っぽいっていうかね。 まあ、あたしも初めてだったし。 その時はわかんなかったけど、後から思うとそうかなって。 なんか、もう。 すんごい痛いばっかりで。 え~~? こんな??って思ったけど。」
とケラケラと笑った。
そんなに軽く笑って・・。
「そうかあ・・」
夏希はものすごく怖くなってしまった。
「でも、すぐ平気になっちゃった。 彼がそういう風になるのとおんなじで。 あたしも女としてこの人求めてるなあって思いだして。 抱かれたいって思うようになって。 正直・・すんごく気持ちいいし、」
なんだか
彼女がすごく大人に見えた。
「彼のこと、すっごく好きでしょう?」
と聞かれ、
「好き・・だけど。」
戸惑いながら答える。
「だけど?」
「つきあってるって・・いうか。 世話されてるって感じで、」
「ペット??」
春奈は大笑いした。
ああ、そんな感じかな。
エサもらったりして。
などと考えてしまった。
「誘ってみれば?」
春奈は軽くそう言った。
「は??」
「いきなり抱きつくとか。」
「だっ・・」
夏希はのけぞった。
「怖いのなんて最初だけだよ。 ジェットコースターだって最初は怖いけど、やみつきになるじゃん。 それと一緒だよ。 あんた、ジェットコースター好きだし、」
と言われて、
「ジェットコースターと一緒にしないでよ・・」
意味もなくドキドキしてきた。
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