第2話 浅草(2)

「あっ! あたしっ!」


夏希はいきなりガバっとお辞儀をしようとして、おしりに鉢植えがぶつかってしまってひっくり返してしまった。


「あーっ!!」


慌ててそれを直し始めた。


「も~~、あやしいひと。なにしてんの??」


子供に言われ。




その騒ぎで


「なにをしてんねん、さっきから声だけ聞こえてなかなか入ってけえへん・・」


窓から志藤が顔を出した。


「は・・」


植木鉢のこぼれた土を拾っていた夏希は振り向いて驚いた。


「・・加瀬?」




「すみませんでした。 娘が失礼を、」


リビングもまた趣味のいいちょっとした絵やフラワーアレンジメントなどがさりげなく飾ってあって。


夏希は思わず見回してしまった。


「いえ、たしかに怪しかったので・・」


夏希はお茶を運んでもらって恐縮してしまった。


「これを持って来てくれたのはええけど。 1本電話しろや。」


志藤は彼女が持ってきてくれたファイルを手に笑った。


「ハア、確かに、」



それにしても


インテリアはもちろんなんだけど。


夏希は広いリビングを見回した。



「あ! 涼~! こぼしてるっ!」


「こころがおしたのっ!!」


「ママ~、ぎゅうにゅう・・」




子供、いっぱいいるなあ。


「静かにしなさい。 お客様なんだから。 ごめんなさいね。 騒がしくて。 あ・・申し遅れました。 志藤の妻のゆうこです。 いつも主人がお世話になっています。」



その可憐な人は


にっこり笑って優しく頭を下げた。


「い!いえ!こちらこそ! あ・・えっと! 去年の4月からクラシック事業部にお世話になってます加瀬夏希と申します!! ほっ、本部長のお世話がなって・・」


夏希は慌てて頭を下げた。


志藤は大笑いをして、


「おまえ、日本語めちゃくちゃ・・」


お茶を飲んだ。


「え? あ~~っと・・。」


あたふたする彼女がおかしくて、ゆうこもクスっと笑った。


「しんにゅうしゃいん~?」


さっきの女の子が寄ってきた。


「ひなた。 失礼でしょ。 ごあいさつをしなさい。」


ゆうこは促した。


「ええっと。 志藤ひなたです。 今、4年生。」


本当に志藤にソックリなその美少女はちょっとブスっとして言った。


「みんな、いらっしゃい。」


ゆうこはリビングのテーブルにいた子供たちを呼んだ。


その他にずらっと並んだ子供たち。



「この子が次女のななみで小学校2年生、そしてその下の長男の涼太郎で幼稚園の年長。 で、その下の三女のこころで3歳。 この子が一番下の次男の凛太郎、1歳です。」


ゆうこは抱っこした凛太郎の顔を見せてそう言った。


その凛太郎が夏希を見てにっこり笑って手を伸ばしたので、



「かんわい~~!! お姉ちゃんのトコ、来る?」


子供好きの夏希は凛太郎に両手を出しだした。


「え~~、もう。 めっちゃみんなカワイイですね! 幼稚園みたい!」


「幼稚園と言われるのも、複雑やけどな。」


志藤は笑う。


「小学生もいます!」


ひなたは憤慨していた。


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