My sweet home~恋のカタチ。2 --bitter green--

森野日菜

Ready

第1話 浅草(1)

高宮が再び大阪へ帰って行って1週間。


再び離れ離れになった夏希と高宮は、それぞれまた日常が待っている。


夏希はいつもの調子を取り戻して、毎日頑張って仕事をしていた。


最近は日曜もみんなと同じように交代で出勤するようにもなった。



「あ、 いっけいない。 どうしよう、」


事業部社員兼志藤の秘書、栗栖萌香は志藤のデスクでファイルを見つけてひとり言を言った。


「どうしたんですか?」


夏希が声をかけた。


「今日、本部長お休みなんだけど。 明日、新春の公演がある幕張に直行することになってるの。 このファイルを渡すのを忘れてしまって。 明日必要なのに。」


時計を気にしながら言った。


「私もこれから出かけないと、」


「あたし暇ですから。 届けますよ。 本部長のお宅に。」


「え、いいの?」


「ぜんっぜんOKですから! で、お宅はどこですか?」


「浅草・・」


「浅草??」


意外な地名を言われた。




なんか


本部長のイメージじゃないなァ。


年は40になるというのに、オシャレでスタイリッシュで


イケメンで。


そんな佇まいからの関西弁でさえ、ものすごく意外なのに


住んでいるところが


東京の下町の代名詞になっている『浅草』。



萌香に書いてもらった地図を手に、夏希は駅を出てからキョロキョロと歩き始めた。



浅草寺だあ。


こっち来て5年くらいになるけど、浅草は来たことなかったし。


住所を辿っていくと、ほんと浅草寺と目と鼻の先で。



住所が『雷門』ってすごいなあ。


いちいち驚きながら何とか家の前にやって来た。



わ・・



そこは一軒家だったが。


3階建ての大きな家で。


門の周りには花の鉢植えがたくさんあった。



カワイイ。


それはきちんと手入れが行き届いていた。



ココ、


だよね??



表札には


『SHIDO』


って書いてあるし。



夏希は何となく中を覗き込んでいた。


すると、




「ちょっと! あやしい人!」



いきなり後ろから子供の声がして


「えっ!」


夏希は振り向く。



そこには


腕組みをした


美少女が立っていた。



「あ・・いや! あやしくはないんだけども・・」


夏希はあたふたしていると、



「ひなた、どなた?」


後から赤ちゃんを抱いた女性が現れた。


「ママ! なんか家の中のぞき込んでるよっ! この人!」


思いっきり指を指された。


「のぞきこんでませんって!」


手を顔の前でブンブンと振って否定した。



その


スラッと細身で、なんとも爽やかな可憐な女性は



「なにか、御用ですか?」


にっこり笑って夏希に言った。


「あのう、」


夏希は事情を説明しようとして、その少女の顔を見てハッとした。



本部長ソックリ!!


え?


娘???


って・・


いうことは。


この人が


奥さん??



一瞬にして繋がった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る