第16話シルバーフォックス1

 一体誰なんだ? ルーク達がきょとんとした顔で女性を見つめる。それにしても、かなりのスタイリッシュな女性でボンキュッボンとはこういう事かと思わせ、彼女の戦闘スタイルなのか? 太ももを露にしている。


「君達危なかったね」


 おもむろに女性が口を開く。


「一応お礼は言っとく」

「お姉さんありがとう」

「礼には及ばないよ! 私もこいつに因縁があったから探す手間が省けた」

「!?」


 ベルガーと何かわけありのようだが、お構いなしに話が進む。夜風になびくポニーテールのヘアースタイルが、月明かりに照らされ異様に眩しく見えた。


「こいつさぁ、私達シルバーフォックスの名を汚した部下なの! ホントムカツクたらっありゃしない!」

「「シルバーフォックス?」」

「一応盗賊団、シルバーフォックスて名前の組織なんだけどぉ、私達は悪い奴らからしか金品を奪わないの! いい? ここ重要だからね!」


 強調して言われたが、盗っ人には変わりないのでは? 言う顔をするルーク達。


「なぁに? 疑ってるの?」


 それは疑いたくもなる...堂々と名乗られても...ベルガーはルークに自分が首領だと名乗ったのに、いまいち信用できない。


「こいつはね、私達と意見の食い違いで組織を裏切ったの! おかげでこいつのせいで王国に目を付けられるわで最悪! 堂々と首領を名乗ったわけだし、許すわけないじゃん!」


 爽やかな口調でシルバーフォックスを語る女性、ダガーを持ちながらベルガーに歩み寄る。哀れむ目でベルガーを凝視し、刃を向け始めた。


「ベルガー哀れね....」

「うっ...お、お頭! 何で?」


 目を覚ましたベルガー、瀕死の状態で立ち上がり身構えだした。


「ベルガーわかってるよね?」


 ダガーを持ち替え、ベルガーに刃を再び向けだした。さっきまでの明るい表情が消え、凄く冷徹な目をし出した女性。ベルガーが徐々に怯えだした。


「組織を裏切ったら組織の規律によって始末させてもらうよ!」

「か、か、勘弁してくれー」

「悪魔丸を飲んだら、どんな副作用が起こるかわからないて言われてるけど、わかってるの?」

「善人ぶりやがって、このアマァ! 悪い奴らから金品を奪い返し貧しい奴らに分け与えるのは結構だが、俺はこの手にした悪魔丸で一儲け思い付いたんだよ! それをお前が止めなければ、こうはならなかったんだー」


 逆上し、完全にターゲットを女性に絞ったベルガー、悪魔丸の恐ろしさが段々と露になる。


「これはなぁ、人並み外れた桁違いの力を得るけどよー! 副作用はなぁ、もう人間には戻れねー!」


 悪魔丸の副作用が明らかになり、凍り付く一同。名前の通り悪魔に魂を売る代物。治療法もない今、できる術はこいつを葬ることしかない。女性はダガーでベルガーに縦横無尽に斬りつけた。


「シルバーフォックス首領、タニアの名において、組織の規律によりお前を始末するわ! ベルガー」

「ぐっ....もう少しで大金が手に入ったのにチクショウーー!」


 謎の女性はタニアと名乗った。魔物とは言え元は人間、ルーク達は目の前で殺しの現場を目の当たりにしたのだった。

 ベルガーの姿は音もなく朽ち果て、姿形もなくなっていた。一体悪魔丸など誰が提供したのか? 市場にない禁断のアイテムのはずなのに。


「ふぅ、一丁上がり!」

「あんた凄いな...」


 タニアの剣技に思わず見とれてしまったルーク。ロゼッタは別の意味で嫉妬している様子だが、お構い無しに話しは続く。


「さて、私達の存在も王国にバレちゃったなぁ...どうしようかな?」


 暫く考え込むタニア、王国に捕まらずやり過ごすための知恵を絞り出す。しかし、組織が壊滅となると、貧しい人に手を差し伸べられない。仮に一人でやっても無理があるだろうと考えた。


「そうだ!」


 何かを思いついたのか、いきなりロゼッタに視線を向けるタニア。ルークが今ロゼッタを背負っているに関わらず。


「お嬢ちゃん、君被害者だよね?」

「は、はい....」

「じゃあ、お姉さん君達の命の恩人だよね?」


 何がしたいのか、何となく察した。ロゼッタにタニアは悪ではない事を証言して貰う魂胆。ルークも何か思いついたのか、一種の取引に出てみる。


「タニアさんだっけ? あんたのダガー立派だな。けど、ちょいと刃が欠けだしてないか?」


 ルークに言われ、改めて自分の武器に目をやるタニア。確かに言われた通り、刃が何ヵ所か刃こぼれしていた。流石武器屋の息子、何百いや、何千もの武器を父親と見てきただけある。









 











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