第15話 ルーク対ベルガー3

 ロゼッタは静かに目を閉じ、精神を研ぎ澄ました。大気に流れるマナを感じ、地面から自分の体に魔力が流れるのをイメージし、指先に精神を集中させている。

 倒せなくてもいい...ただ、目の前の敵を怯ませる事が出来ればいい...後はルークが何とかしてくれると思いながら、魔力を解放させた。


「おいっ! どうした? さっきから一言も喋らねーじゃねーか!」

「....せー」

「あっ? なんだってぇ?」

「うるせーって言ってるんだよ! クソ野郎!」

「そんなに早死にしてーなら、望み通りにしてやるよ!」


 逆上したベルガーが怒り任せに、破片を連投しようとした。投球モーションに入った時、ロゼッタの手が赤く燃え上がりだす。心の中で詠唱を開始し、手のひらを返してファイヤボールを発動させた。ベルガーのお腹の辺りに当ててベルガーが吹き飛んだ。


「ウギャーーー! アチッ! アチィーー!」

「ロゼッタナイス! こっちに走れーー」

「うん!」


 裸足の状態でルークの元へ走るロゼッタ、おぼつかない足でルークの元へ。

 入れ違いにルークが最後の力を振り絞り、ベルガーに向けて一撃必殺の技を繰り出した。


「いくぞこの野郎! ついでに剣と手甲の修理代きっちり請求するからな!」

「こ、このガキィー! 調子に乗るんじゃねー!」


 体制を立て直し、ベルガーも反撃に応じるが、ルークの足が勝りジャンプし、

 ベルガーの首に足をかけた。一体何をしようというのか? ベルガーの反撃を許さずに、そのまま体の反動を利用して、地面へ垂直に叩き落した。程なくしてベルガーがふらつきながら立ち上がり、ルークに再び襲いかかる。


「俺流格闘術奥義! 玄武破壊脚!」


 玄武破壊脚、それはまたまたルークが勝手に命名した技。上段、中段、下段と蹴りを繰り返し、時折膝蹴りを交えたルークの脚技。鍛え上げた脚力をフルに活用した技である。これにはたまらず、ベルガーが反撃も出来ずその場に倒れて気を失った。


「見たか!」

「ルーク大丈夫?」

「やりましたのぉーご主人様」


 何とかやり過ごしロゼッタを救出したルーク、終わった途端に、疲れが一気に出てその場に座り込んでしまった。


「ルーク見た? アタシのファインプレイ!」

「お前なぁ...」

「でも、ごめんね...アタシとセラちゃんのせいで、聖剣折れちゃったね」

「ん? あぁ、気にするな、また直すさ」

「でもね! セラちゃんがまた、こんなみすぼらしい姿に...可哀そう」

「そうですのぉーーー! ご主人様責任取って下さいね!」


 セラを哀れむロゼッタ、絶賛お怒り中のセラ、いつもの日常に戻れるんだなと...ルークの胸の内もほっとしていた。それでもロゼッタとセラに散々説教を喰らいらい、助けておいてこれか? とルークはため息をついた。


「後は騎士団が処理してくれるだろう、帰ろうぜ腹減った」

「ルーク! アタシが何か作ってあげる」

「ロゼッタさんの手料理! 楽しみですのぉ」

「いや! いい! お前お菓子しか作れないだろ!」

「何よー! いけないの?」

「当たり前だ! お前は何でも料理にお菓子の材料入れやがる」

「むぅー」


 ロゼッタは良くおやつを作るのだが、クッキーやケーキ、パイなどのスィーツ系は得意だが、他の料理は全くもって不得意。そんなロゼッタにルークは冒険者よりも、パティシエの方が向いているんじゃないか? とつぐつぐ思う。ほっこりとした会話をしながら、ロゼッタを背負い帰路に向かう一行、夜風が心地よく出迎えてくれている。シルバーフォックスのアジトはどうなったのだろうか? 騎士団に後の処理を託して夜道を歩いていく。


「待てよ!」

「!!」


 後ろから声がすると思えば、ベルガーが瀕死の状態で立ち上がった。何てしぶといやつなんだ...ルークも慢心創意で今襲って来られたらひとたまりもない。


「この野郎...しぶとい野郎だな!」

「このまま、おめおめとやられるわけにはいかねーんだよ!」


 ロゼッタを背負った状態で慌てて距離を取るルーク。

 かなり逆上しているベルガーに、ルーク達は隠れた恐怖心に襲われていた。

「足が痺れてやがる...」

「おいどうした? さっきから棒立ちじゃねーか!」


 ルークを煽り立て、懐から爆弾を取り出した。完全にルーク達を道連れにする気満々だ。


「もう、俺には戦う気力はねー! お前らも木っ端微塵だぁぁー」


 ベルガーの持っている爆弾は地面に擦り付けて、導火線に火が付く爆弾。火種のいらない便利な爆弾ではあるのだが、着火スピードが早く投げられたら避ける間もない。それを今、ルーク達に目掛けて投げ出した。


「ヤバい、避けられねー!」


 投げたと同時に、ベルガーはその場に倒れ込み捨て台詞吐き、その場に倒れ込んだ。完全に死を覚悟したルーク達。無情にも爆弾がルーク達の目の前に飛んでくる。


「人生ここまでか....えっ?」


 完全に終わったかと思った。でも、全員無傷でいる。一体何が起こったんだ? 周囲を見渡すと、爆弾は見事に真っ二つになり、地面に落ちている。そして、見慣れない女性が二本のダガーを両手に持ち立っていた。格好からして、忍び装束の様な格好をし、ホルン王国にはない、異国の者の風貌であった。



















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