第13話 ルーク対ベルガー

「知ってるか? これはなぁ、悪による悪の為に作られた呪いのアイテム、悪魔丸だ!」

「呪いアイテムだとぉ!」


 呪いアイテムについて、ロゼッタから聞いた事があるルーク。

 呪いアイテムを使うと効果は絶大だが、使用者に何が起きるかわからない禁断のアイテム。かつてそれを乱用した者が居たが、どんな副作用が起きるかわからず、時には人間としての理性を失うくらいに。あまりにも危険過ぎると言う事で市場に出回るのを全世界で禁止された。

 それを何故、盗賊団が持っている? どうやって入手した? とにかくこいつらを倒して問い詰める! とルークは誓った。


「グッフッフッフッ! 力がみなぎってくるぜぇ」


 ベルガー達の姿が完全に人間ではなくな、狼の姿と化す。その姿は知能を持ち合わせた狼型のモンスター、ウェアウルフとなった。

 悪魔丸は人間を魔物に変える恐ろしい呪いアイテム。はっきり言ってどんな魔物になるかはランダムだ。


「キャーッ! ご主人様ぁ、ウェアウルフですのぉ! そいつは冒険者レベル20以上ないと苦戦しますのぉ! オーガと違ってずる賢いですのぉ!」

「次から次へと面倒くせーな.......」


 一対一ならともかく、一緒にいる部下達を含めると四対一、はっきり言ってロゼッタが戦闘に加わっても足手まとい。


「おや? そう言えばお前冒険者じゃねーのか?」


 ベルガーが言いたい事、それはベルガーから見たら冒険者じゃないルークはレベル1のただのヒヨッコ。それを知った瞬間ベルガーは大笑い。


「お前間抜けもいい所だなぁ! レベル1のヒヨッコが俺に喧嘩を売るんだからなぁ!」

「お、お頭ぁ.....このガキ強えぇ.....」


 ベルガーが高笑いしている間に、ルークが部下達を一蹴した。ベルガーの視界から外れ、部下達を乱打で応戦し最後に強烈な蹴りをお見舞い、部下達は気を失ったのだ。


「お、お前レベル1だよな? 反則じゃねーか! 何者だお前?」

「街の武器屋のだよ! 但し俺はガキの頃から鍛練してきたからな! ちょっとは強えぇぞ!」

「ふざけるな! そんなレベル1の弱者が居てたまるかぁ!」


 逆上したベルガー、ジャブを連打し徐々にスピードが増していく。ガードをするのに精一杯なのに、ルークが対応しきれなくなってきた。次第にパンチの鋭さが増してルークに切傷が付けられる。


「お前、パンチをするフリして小型ナイフを仕込んでやがったのか!」

「良く見抜いたなぁ! だが見抜いた所でどうする事も出来まい」

「確実に相手を仕留める! それが俺様のモットーよ!」


 ふぅ....とばかり溜息をつくルーク。とことん悪を貫くベルガーに対し、怒りのボルテージが段々と上がっていく。今出来ることは、とにかくこいつをぶっ倒す!!

 幸いロゼッタもセラも無事であるし、気兼ねなく戦える。


「来いよ....」


 身構えるルーク。言われなくてもと言わんばかりに、ベルガーが刃をむき出し、ルークに襲い掛かる。

 それでもルークは微動だにしない。それを見たベルガーが、一瞬躊躇するのをルークは見逃さなかった。


「うおぉりゃーーー!」


 掛け声と同時に、ルークの拳がベルガーの顎にクリーンヒット。たまらずにベルガーが悶えだす。一体このガキにどこからそんな力が? ベルガーの中に迷いが生じる。


「立てよ...」


 ルークの鋭い眼光にベルガーが震え出す。

 この俺が? ビビってるのか? 嘘だろ? 


「いくぞ! オラァッ!」


 ルークのラッシュ攻撃が、あちらこちらとベルガーの体を痛めつける。

 負けるのか? この俺が負けるのか? ルークを見る度、次第と冷や汗がしたたり落ちる。


「ち、チクショー!! おい小僧これを見な!」


 一旦距離を置き、地面に落ちた聖剣セラフィムを手に取るベルガー。一体何をしようというのか?  

 ルークの攻撃の手もピタリと止まる。


「動くんじゃねー! 動いたらこの剣ぶっ壊す!」

「テメェ、やれよ....」

「はっ?」

「ご主人様ぁ!」


 誰もが耳を疑った。確かに壊してみろと、空白の時間が数秒続く。


「どうした? やってみろよ!」

「ぐっ、ぐぬぬ! 面白ぇー後悔するんじゃねーぞ小僧!」


 .....パキン!


 自慢の怪力で、聖剣セラフィムが真っ二つに折れてしまった。

 本当にやるとは、セラはこれっぽっちも微塵も思っていない。ルークがきっと助けるからと。あぁ...私の存在が消えてしまう...何て思いながらセラの頭に走馬灯が駆け巡る。ご主人様のバカーーーー! と今でも叫びたいくらいに。


「ギャハハ! ざまぁみろ! て...おい?」


 誰もが目を疑う光景。消えると言っておいて、消えていない。

 どういうことだ? と目を疑う光景。


「な、何で消えてねーーーー!」

「当たり前だ! 前に俺が一度試したからな」

「「はい?」」


 思わずセラまでもが耳を疑い出す。


「こいつを直すのに変な使命背負わされ、終いにはこの精霊様は呑気にぐーたら生活してやがる。怒りのあまり一回へし折ったんだよ!」

「「はいぃ?」」


 またしてもキョトンとするベルガーとセラ。

 それはルークが聖剣を手にした後の夜、あまりにもぐーたらしているセラに苛立ちと怒りがこみ上げ、やってられるかーーー! とばかり錆びついた刀身を拳で真っ二つ。


「あっいけね!」


 思わず我に返り、しっかりと剣を修理し今に至る。

 セラを見ると剣が折れたせいで、綺麗な恰好をしていたのに今じゃ完全にみすぼらしく、藁を体に巻いた姿であった。


「酷いですのぉーご主人様!」

「悪かったよ・・後できちんと直すからよ」

「さてと....行くぞ!」





























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