第12話 ロゼッタ救出

 ホルン平原。ホルン王国と隣国トランプール王国を繋ぐ平原、行商人や旅人が良く使う平原であり、街道で整備されているが街道から外れると、たちまち迷子になる危ない平原。ホルン王国からホルン鉱山へ行くのと同じ作りだが、こっちの方がはっきり言って危ない。


 そんな街道から外れた場所にて布で口を猿ぐつわにされ、両手両足を縛られ身動きが取れないセラとロゼッタ。二人はまだ眠ったままだったのに、まだこの危機的状況を把握していない。


「チッ呑気なもんだぜ! まだグーすか寝てやがる」

「お頭! この女よく見ると中々の上玉じゃないですか?」


 パジャマ姿で拉致されたロゼッタだが、確かに半分生足出てるからセクシーに見えなくもない。流石にこれ以上手を出したらまずいのではないか? とシルバーフォックスの首領は葛藤している。


「いいか! こいつらはあの小僧を誘き出すエサだ! 余計な事するんじゃねー! 後の事は終わったら考える」


「ん、んん?」


 程なくしてロゼッタが目を覚ます。アタシ何で縛られている? 確かベッドですやすやと寝てたのに。

 ロゼッタの視界に、店主とその部下合わせ三人程視界に入る。ロゼッタは店主がシルバーフォックスの首領とはまだ知らない。


「おや? お嬢ちゃん目が覚めた?」

「んんーんー!」


 口を猿ぐつわに縛られ、喋る事も出来ないロゼッタ。何でも屋の店主が何でここにいる? と言いたいが伝わってない。


「そんなに怯えるなよ....悪いようにはしねーからよ!」


 そう言って、店主が自分の正体を明かしロゼッタにルークを始末する事を余裕綽々で話し出す。とは言うものの今のロゼッタにはルークの無事と助けを待つ事しか出来ない。


「んんーんんー!」

「チッ.....チビも目が覚めやがったか!」


 目が覚めたセラ、必要以上にもがき縄を手解こうとするが、きつく縛られ身動きが取れない。あまりにもうるさいから二人の猿ぐつわをした布だけは外した首領。


「「ぷはぁ!」」

「これからお前らに面白い物を見せてやるから黙って大人しくしていろ!」

「ちょっとオジさん! これは何の真似よ? こんな事をしたら王国が黙ってないよ!」

「そうですのぉ! 人間さん、ワタシはその剣の精霊ですのよぉ!」


 頭に血が上り、首領の足元に置いてある聖剣セラフィムに目線を送る。更にロゼッタがセラに聖剣セラフィムの事を簡単に話すな! と釘を差すが....時既に遅しと首領の耳に入る。


「おいおい......これがあの伝説の勇者フォトンが使用した聖剣セラフィムだとぉ!」


 暫く聖剣セラフィムを見つめ、何か考え込む首領。まさか新たな勇者の再来か? それとも魔王が復活する前触れなのか? と。

 そんな事はどうでもいい、今はルーク達を始末するそれだけだ! そう思い立った矢先、首領が大声で笑い出す。


「何がおかしいですのぉ? 今は以前と輝きのない剣ですけど、昔はもっとピカピカでしたのぉ!」

「いやいや、おかしくはねーよ! ちなみによぉ、この剣は悪しき者が手にしたらどうなるんだ?」

「そんなの決まってますのぉ! ワタクシの一存で主を選びますからね! 善悪の区別はつけられますのぉ!」


 鼻高々で話すセラ、首領は考えた。ルークを始末しても聖剣セラフィムは自分の物にはならない。おそらく剣を粉々になるまで破壊すれば、セラは消滅すると。


「じゃぁ、あの小僧が来るまで、この剣を二度と修復不可能なくらいに破壊してやるぜ」

「ふんぎゃぁぁぁぁぁ! や、止めて下さい! そんな事をしたらワタシは消滅しちゃいますのぉ!」

「ほぉ....良い事を聞いたぜ!」

「あっ! しまったですのぉ!」


 首領の推測が当たり、部下に巨大なハンマーを用意させる。公開処刑をするかの様に嘲笑い、勝ち誇り絶望的になるセラを見ては高笑いを続けた。


「勇者なんて二度と生まれないように、勇者フォトン伝説クソくらえ!」


 重さ十五キロはあるハンマーを振り回し、聖剣セラフィムにめがけ、渾身の一振りが今放たれる。危うしセラ! このまま以前の輝きを取り戻さず朽ち果てるのか?


「死ねやぁぁ!」

「ふんぎゃぁぁぁぁぁ!!」

「セラちゃん!!」


 ......だが、何も起きなかった。むしろ聖剣セラフィムは無傷で逆に首領が倒れ込んでいた。慌てて駆け寄る部下達、それよりか部下達も一瞬であっさり倒れ気を失った。


「よぉ! 随分とやってくれたな!」

「ルーク!」

「ご主人様ぁ!」

「テ、テメェ! いつの間に?」


 間一髪、ルークがやって来た。ロゼッタとセラの縄を手解き、聖剣セラフィムを直ぐ様奪取。だが、ルークの体にはあちこちに傷が出来ていた。


「テメェ、俺が仕掛けたモンスターの大群をくぐり抜けたのか?」

「あれか? おっさんの仕業か? おかげでいい道標になったわ!」



 遡る事約二時間前、ルークがホルン平原をひたすら進む中、茂みから数十体のモンスターの群れがルークを取り囲む。


「おいおい.....こんな奴らホルン地域に居たか?」


 そのモンスターはハウンドウルフ。群れをなし獲物を集団で狩る厄介な狼のモンスター。

 構える隙も与えず、ハウンドウルフが鋭い爪と牙で集団でルークに襲いかかる。


「チッ!」


 あっという間にルークの体を鋭い爪と牙で切り裂き体を傷つけ、ルークの服をもボロボロにしていく。

 だが、ルークもホルンベアーやオーガと言った自分より大きい相手を退けた武勇伝がある。こんな犬っころに負けてたまるかと強烈な回し蹴りをハウンドウルフお見舞いする。


「おいっ! 犬っころ共、今は忙しいんだよ! 邪魔をするんじゃねー!」


 ルークの鋭い眼光にハウンドウルフ達が一歩も動けない。ハウンドウルフも本能が働き、ルークにあっさり降伏をし、直ぐ様ロゼッタの居る場所へと案内したのだった。


「チッ使えねー犬共だな!」

「おっさん覚悟はいいか?」

「覚悟だぁ? 覚悟するのはテメーだ小僧! おっさんおっさんて言うけどなぁ、俺は盗賊団シルバーフォックス首領のベルガー様だ覚えておけ!」


 そう言ってベルガーは部下達を起こし、一斉に丸薬みたいな物を取り出した。


「後で後悔しても知らねーからな!」


 丸薬を一飲みすると、みるみるとベルガーを始め、部下達の周りに邪悪なオーラがはびこり出す。

 次第に体が人間の形を保てなくなり、爪が伸び、牙が生え、体は体毛で覆われ出した。


「やべーな.....」


 身の危険を感じたルークは、慌ててロゼッタとセラに逃げるように促すが、ロゼッタの足がすくんで動けない。
































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