第10話 悪徳商人を懲らしめろ4

 じーっと鉄の剣を眺めるルーク。柄の部分に小さい亀裂を見つける。


「親父ぃ、あの店黒だぜ!」

「本当か?」

「あぁ、これ見てみろよ」


 ザックスに鉄の剣を渡すルーク。見た目は綺麗だが、使い物にならない部品を集めて使い回ししている様子が伺える。


「こりゃひでぇな........こんないい加減な仕事をしやがって!」

「それよりもエリクサーだぜ親父、偽物売りさばいて大儲け、こりゃ王国裁判ものだぜ」


 いい加減な仕事と、偽エリクサーを売りさばく何でも屋の化けの皮が段々と剥がれていく。それよりも、ルークの店は何でも屋で買った冒険者が武器の修理依頼で殺到し、忙しくて外にも出られない。


「ルーク、銀シリーズの武器は修理終わったから後は磨き上げてくれ!」

「あいよー」


 キュッキュッと刀身を磨き、銀シリーズの武器が見事に綺麗な輝きを放つ。聖剣セラフィムにも銀を使いたいところだが、材料の銀はあるにはあるが、今は冒険者用に銀を全て使う。


「この忙しい時に、精霊様はのんきに寝てやがる」


 仕事をしながら、ちらりとセラを見る。無邪気な顔で、すやすやと寝息を立てていた。まぁセラが居なかったら、あのエリクサーが偽物だと見抜けなかったし、ロゼッタの知識も役に立った。


「ルーク!」


 自分の家の店番があるのにも関わらず、ロゼッタが押し掛けてきた。何か言いたそうだが、家が隣なのに何故か息を切らしている。


「ロゼッタ、お落ち着け!」


 カメに溜めてあった水からコップに水を汲み、ロゼッタに差し出すルーク。


「う、うん、あのね、被害に遭った冒険者達が白羽の矢を立てて、ギルドを通して王国に通達が入ったみたい」


 被害と言っても、おそらく偽エリクサーよりも、武器の不良と店主のいい加減な態度に怒りが頂点に来たのだろう。


「それなら、王国に任せよう。俺らの出る幕じゃねー」

「それがね、そうも行かなくて.....冒険者逹が聖剣セラフィムの勇者ルークを出せっ! て大騒ぎ」

「おいおい......何だそりゃ?」


 冒険者いわく、聖剣セラフィムを持つルークの力を是非とも借りたいと冒険者逹が一致団結していた。別にルークの力を借りなくても、束になってかかれば怖くないのに、最終的には王国裁判に発展するレベル。何故ルークの力が必要? 俺をそこまで有名にしたいのか? とルークは思う。


 そんな事より、今は目の前の仕事を片付けるが先と仕事に戻るが.....。


「うわっ!」


 何かがルークの頬をかすめた。目の前には一本の矢が壁に突き刺さっていた。


「おいおい.....何の冗談だ?」

「チッ.....外したか......」

「ルーク大丈夫?」


 影からルークを狙った犯行。その姿は口をスカーフで覆っていたものの、犯人は何でも屋の店主であった。ロゼッタが心配をするも、一歩間違えば、ロゼッタにも矢が当たっていた。


「そろそろ、俺も潮時か....盗賊団シルバーフォックスの面子にかけて、あのガキ共を始末しねーとな。王国が軍を上げて来られる前に....先ずはあの武器屋のガキからだ!」


 自分の素性を明らかにした店主。全ては金儲けのために穏便に過ごしていたが、いよいよ化けの皮が剥がれ出す。まさか、シルバーフォックスと言う盗賊団を名乗るなんて誰も知らない。


        ***


 その頃ギルドでは、何でも屋に対する悪行を成敗するため、作戦会議が行われていた。主にはルークに動いて貰って一致団結を試みるが、当の本人は乗り気じゃないのは冒険者逹はまだ知らない。冒険者から通達を受け、王国側も王国騎士団を筆頭に対策会議を展開。王国騎士団とは一番隊から八番隊までの八部隊で編制された部隊でその上に立つのが騎士団長だ。


「偵察部隊の報告により、例の何でも屋ですが、昨日店を休業し店主は行方不明となっております」


 白銀の鎧を纏い、スラッとした長い黒髪を束ねた女騎士が言う。この女騎士の名はミランダ。耳にはパールのイヤリングを着け女性らしさも兼ね備えている。ミランダは一番隊の隊長、剣の腕はもちろん、カリスマ性もある。


「何でも屋と関係あるかわかりませんが、最近盗賊団シルバーフォックスが活動をしているとの事です」

「!!」


 ミランダの報告により、王国内の会議室が静まり返りだす。シルバーフォックスとは、フォトン大陸に知れ渡る大盗賊団で、強盗暗殺何でもありの組織。金のためなら何でもやるタチの悪い組織集団だ。これは事が大きいと判断した王国はギルドにお触れを出し、盗賊団シルバーフォックスを捕らえた者には一人につき報酬金貨百枚を与えると。


 早速、冒険者ギルドに王国からお触れが届き、冒険者達もルークに頼らず王国の命令なら仕方ないと動き出す。


「皆さん王国は、一番隊騎士団を筆頭にシルバーフォックスを捕らえるそうです。なので皆さんは一番隊の下で動いて下さいね」


 エミリーが事の説明をする。何でも屋の店主を懲らしめるはずが、いつの間にか盗賊団の壊滅作戦に駆り出されるとは。


       ***


 仕事を終え夕飯を済ませたルーク。それにしても誰がルークを襲ったのか? 謎のまま考え込む。


「ルーク! 父さんを見なかった?」


 突如ルークの母がザックスの姿がないと言い出す。ルークの母の名はマリー元は女戦士の冒険者だったが、どう言ういきさつでザックスと一緒になったのかはわからないが、肝が据わったとても強い母だ。


「いや、見てないよ」

「多分、いつもの酒場だね! ルーク連れ戻して来て」

「お、おぅ」


 家を出て、酒場に向かうルーク。それを陰から監視するかのように店主が一部始終を見ていた。


「あのガキ外出か........丁度良いあのガキと共にいたチビ精霊と魔法使いの女を拉致して誘き出すか。」


 眠り薬を仕込んだ吹き矢の矢に、母親マリーの首筋目掛けて発射。チクリと命中し、程なくして母マリーは意識を失い、セラと聖剣セラフィムを強奪。引き続き、ロゼッタの家に忍び込み、同じ手口でロゼッタを誘拐する。


「おいっ! こいつらを運べ」


 店主の一言で部下が現れた。


「お頭! 一体こいつらは?」

「いいから、運べ! シルバーフォックスを舐めた仕返しにこいつらを始末する」


 店主の正体が明らかになった。世間を騒がす盗賊団シルバーフォックスの頭領だったのだ。



































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