第18話
真っ暗なステージをスポットライトが照らすと同時に空砲が鳴り、紙吹雪が舞った。空砲の残響をかき消すように観客が歓声を上げ、流れ出す音楽に合わせてアイドルたちが踊りだす。カレンはリョウの背中をちらと見たあと、客席に視線を向け、サイリウムを振るファンたちの笑顔にあてられたようにカレン自身もいっそう楽しそうに、いつものように歌い踊ることだけに必死になるのではなく、周りを見て楽しみながらパフォーマンスを披露した。
オープニング曲が終わってハナヨのソロになると、カレンとリョウが客席に向かって大きく手を振りながらステージ袖に戻り、ハナヨはひとりで舞台の中心に立った。
「やったじゃん。絶好調?」
リョウがそう言ってカレンの背中を叩くと、カレンは息を切らしたまま、リョウにピースサインを送ってそれを返事とした。彼女たちがステージのほうを振り返ると、ハナヨもカレンをちらと見てウィンクした。ハナヨのソロ曲が始まると、カレンは鼻をすすり、目元をこすってそれを見ていた。その横にミネコが寄り添うように立ち、カレンの肩に手をかけた。ミネコ自身、緊張しているのか、カレンは痛みを覚えるほど肩に食い込むミネコの指を、むしろ微笑ましい気持ちで受け入れた。
「まぐれなんかじゃないだろう?」
カレンは力強く頷いた。その瞳はもう、緊張で泳いでいたミニライブ時代とは違うものになっていた。
一周年記念ライブが終わると、雑誌、テレビ、ネット、ラジオはワイルド・スワンをこぞって取り上げるようになった。念願だった音楽番組に三人で出演し、マイクを向ける女子アナが眉尻を下げて困ったような表情になることを楽しむようにハナヨが話し、それをリョウが止めてカレンがフォローした。
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