第17話
話し終えたハナヨはパイプ椅子に座ったままにやつき、カレンの表情を楽しんでいた。向き合うように座っていたカレンは困ったように笑い、首をかしげた。
「そんな話よ。どう?」
「その、主人公はそのあとどうなったんですか?」
「カーレンはね、そのあと献身的な奉仕活動のおかげで罪を赦されるのよ。多分、天国に行ったわ」
よかった、とカレンは自分と同じ名前の主人公に同情し、幸せになれたことを喜んだ。
「赤い靴のおかげで幸せになれたカーレンはその靴に依存しちゃったのね。だから、呪われていると分かっていても履かずにはいられなかった。これを履けばまた幸せになれるはずだってね」
ハナヨはカレンの足元を見つめ、赤い靴をつま先で軽く蹴った。
「いいダンス靴ねぇ」
「やめてくださいよ、もう」
「そうね。高校生を脅かすにはすこし幼稚だったかしら」
ハナヨはにやにやとカレンを見つめ、カレンは唇を軽く噛んでハナヨを睨んだ。
「おーい。そろそろ」
リョウは楽屋の扉を開けて中を覗き込み、室内を支配する不穏な空気を感じてハナヨとカレンの顔を交互に見比べ、頭を掻いた。
「どうかした?」
カレンは激しく頭を振って否定した。
「まあ、いいや。着替え終わったんならステージのほうに行けってさ」
まずハナヨが席を立ち、楽屋から出て行った。かと思うと背を大きく仰け反らせて開いた扉から顔だけを覗かせ、にやにやとカレンを見た。
「い・い・ダ・ン・ス・ぐ・つ・ね」
「もう! しつこいですよ!」
カレンが大きな声を出すと、ハナヨは愉快そうに笑い声をあげながら楽屋から遠ざかっていった。
「なに? いまの」
「知らない!」
カレンは席を立ち、目元をこすりながら楽屋から出て行った。リョウはひとり取り残され、首をかしげた。
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