第10話
撮影の見学から一週間が経ち、ゴールデンウィークに突入した。カレンは目覚まし時計が鳴るたびにボタンを叩いて止めるが、起き上がることなく再び眠ろうとし、またスヌーズ機能のせいで起こされる、という繰り返しのなかにいた。
「カレン! 今日はミネコちゃんと出かけるんでしょう!」
「んー!」
カレンは階下から怒鳴る母親の言葉に布団の中から不機嫌そうな声で応じ、寝返りを打った。やがて階段を上がる足音が聞こえてくると、文句を言われることを察してベッドから降りた。そして、いかにもちゃんと起きていたかのように振る舞うため、クローゼットを開けて着ていく服に悩んでいるふりをした。部屋に入ってきた母親は起きていたカレンを見て意外そうな顔をし、息をついた。
「ご飯冷めちゃうから、そんなのあとにしなさい」
「はぁい」
なんとか咎められることを回避したカレンは母親のあとについて一階に降り、歯を磨いてから朝食の席に着いた。すでにバターが塗られたトーストにベーコンエッグ。茹でたブロッコリーにプチトマト。カレンが高校に入学してからいっさいメニュー変更が行われていないいつもの朝食だった。テレビを見ながらふたりで黙々とパンをかじっていると、カレンの母親は、
「ミネコちゃんねぇ」
と呟いた。カレンが上目遣いに一瞥くれると、母親は心配そうにパンを置いた。
「ミネコちゃんのお母さん、実家に帰っちゃったでしょう? その後、大丈夫なのかと思って」
「さあ。あんまりそういう話しないし」
カレンが肩をすくめると、母親はため息をついた。
「しなきゃダメよ。今日会ったら訊いときなさい。なにか悩んでるかもしれないでしょう」
カレンはパンをかじりながら曖昧な答えを返した。
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