鹿が感じた海

「はぁ、はぁ、ぁ、海、だぁ」


これが、海


海についての詳しい情報は知らない


知らないから、知りたい


けど昔に少しだけ

本で海について読んだ事があった

水が地平線まで広がっていて

水中でも息が出来る生き物がいて

綺麗でとても危険な場所だと

そう書いてあった


本はもう燃えカスも残ってないけど


お母さんは

私が海に興味を持つのを怖がった


私を外に出してくれなかった

海関連の物を見つけては燃やしてた


だから私は昔嵐が来た時に抜け出した


……失敗に終わったけど


抜け出した先で狼に襲われ

私を追いかけたお母さんは


私を庇い、私を抱き締め


最後に私に言い付けて


死んでった


普通はコレで海の事を諦めて

懲りて、嫌って、妬むかもしれない


けど無理だった


私は私の好奇心に勝てなかった

でも今じゃ後悔のこの字もない


お母さんの最後の言葉に逆らって


良かったとさえ思ってしまう程







嵐の海は


荒々しく、激しく、恐ろしくて














美しかった


周りは何も見えないぐらい暗いけど


海の水は怪しく、美しく


水状の宝石のように輝いていて


いつも細く渦を巻いてるらしい白水は


ずっと向こうまで真っ直ぐな道を


水上で表すかのようで


ただただ、美しかった





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