第2話 もう一度

僕は、僕の目で殺されている裕美ちゃんを見た。

かぎたくないような生臭いにおいだって。

ちゃんと覚えている。

……もちろん。あのフードの女だって。

でも、ちゃんと生きてる。

目の前で動いてる。

……夢だったのか?


「セーンパーイ」

「うわっ! どうしたの!」


気づいたら一歩近づけば触れるぐらいに彼女は近づいていた。

びっくりするなぁ……。


「もう! センパイってば私の話ちゃんと聞いてなかったんですか?」

「う、うん……少しぼーっとしちゃって……」

「仕方ないセンパイさんですねぇ。でもぉ、この優しくて超絶可愛い私はもう一回だけ話してあげましょう!」

「はいはい、優しいし超絶可愛いですよー」

「むぅ……適当ですね……まぁいいです。このラブレターを見てなんか思いませんか?」

「……え?」


この会話、どっかで……。


「なんか思いませんか、って聞いてるんですよ」

「あ、あぁ……ごめん。ラブレター、見せてくれない?」

「もう一回ですか? いいですけど」


ラブレターを見せてもらう。

あぁ……間違いない。

このイタイ文章、あの時と一緒だ。


「……心配だな」

「え、心配してくれるんですかー? できれば理由もお聞きしたいですなー」


裕美ちゃんがニヤニヤしながら問うてくる。


「そりゃあ……」


いや、待つんだ。

ここで素直に話してどうする。

「君が死ぬのを見たんだ」なんて言って誰が信用するんだ。

考えろっ、考えるんだ、及川 優馬!


「ゆ、裕美ちゃんは可愛いし! お、襲われちゃうんじゃないかなー……なんて」

「か、可愛いですか! そうですか……センパイが可愛いって……うぇへへ……」


なんかニヤニヤしてるけどとりあえず誤魔化せた、かな?

でも、問題はこれからだ。

僕が止めたところで裕美ちゃんは公園に行ってしまうだろう。

それじゃさっき見た夢と同じことになってしまうかもしれない。

それだけは、嫌だ。


「だからさ、僕も一緒に行かせてほしいな。もちろん告白の時はどっかに隠れてるよ」

「うぇへへーもちろん大丈夫ですよーふふっ」


……この子、大丈夫だろうか。


 ***


第二公園はやっぱり静かだった。

中で遊ぶ子供はいないし、辺りを歩く姿も見られない。


「じゃ、僕はそこら辺の茂みにでも隠れてるから」

「はーい。了解でーす」


まだ少しニヤニヤしている。

そんなに可愛いって言われたことが嬉しいのかな?

いつも言ってるんだけど。


「来ない……」


公園に街灯が灯った。

つまりは、あの時と同じくらいの時間になったということだろう。

今回は裕美ちゃんに立ってもらっていた。

もし倒れた時すぐにわかるようにだ。

裕美ちゃんも時間を気にしてか、辺りをきょろきょろしている。


「やっぱ夢だったのかな」


そう思い視線を下に落とした。

ゆっくりとため息をつく。


ばたんと、人が倒れる音がした。

視線を上にあげる。


裕美ちゃんは、また刺されていて。

土がゆっくりと裕美ちゃんの血で染まっていく。

そのそばにはあのフードの女が立っていた。

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