第2話 わたしと音素

 「ゼェ」

 誰かの発する音の響きが濁音混じりの澄んでいない音がわたしの耳に響いた。

 音の方向に反応して身体の向きを変えると、荒く呼吸をしている女の子が地べたに座り込んでいる。呼吸しながら音の塊を吐き出していた。

 わたしは親切心の芽生えを感じそばによると話しかけた。

「近くに赤いベンチがあるので、そこで休みましょう。公園というところは、椅子やベンチが用意されているところがいいところですからね」

 女の子はこくこくと頷くと、砂を蹴りながら立ち上がりわたしの誘導に従った。小柄で華奢な身体を背中から押して補助した。ゆらゆら揺れるその様子は、獅子舞の踊りや酔拳を連想させた。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る