空色の狙撃手(シューター) BEFORE STORY
丹花水ゆ
第1話
ここはカルアの森にある、テクシアの村。その村は商隊を護衛する仕事を主な生業としていた。商隊は他の地域に商売に行く際、危険な森を通る。獰猛な獣や山賊。そして、ゾンビ。これらから守るのが仕事だ。ある日、村一番の手練れであり、巫女であるリコリスが護衛の仕事に城塞都市シュテリヒードまで出かけた。その商隊の中にはとても強い槍使いの少年がいた。その少年のおかげもあって仕事は途中までは順調だった。ゾンビの群れに襲われるも、少年の活躍により、被害を抑えることもできた。しかし、ゾンビを倒し、安心したところに、1本の矢が飛んでくる。当たったのは商隊長。撃ったのは、この一帯の山賊を束ねているポメラヌスだった。1人だけだったら簡単に倒せただろう。しかし、なんと奴は生き物全てに襲い掛かるはずのゾンビを大量に従えていた。さすがの少年も商隊を守りきれず、リコリスと少年の2人を残して隊は全滅。少年はリコリスを庇ってケガをしており、どう見ても分が悪い状況だ。それでもなお、敵討ちに突っ込んでいこうとする少年をどうにか静止し、シュテリヒードまで戻る。それから3年後。村の外に出かけていた子供たちがいなくなるという事件が発生した。一緒にいた護衛は殺され、その血痕をつけていくとある洞窟にたどり着く。中に入ると子供たちが檻に捕まっていた。そこから助けだし、子供たちが落ち着くのを待ってから洞窟を脱出する。そして森を抜け、村に戻る。しかし村はゾンビたちの大群によって全滅していた。その中心にいたのはなんとポメラヌスだった。次々と襲い掛かってくるゾンビ。リコリスは守り切れず、子供たちはみんな死んでしまう。しかし、ポメラヌスはリコリスを気に入ったようで殺さなかった。その後リコリスは村を出て、シュテリヒードに移り住んだ。そして、あの奇妙な連中と出会い、新しい生活を始めるのであった。
これはあの奇妙な連中、商隊護衛団ピチュリアー・コンパニオンに出会うまでの話。そう、ちょうど村が私を残して全滅した時までの話だ。私はカルアの森のテクシアという村に住んでいた。
「ん……、朝……。リュピ……、朝だよ。」
リュピと呼ぶと毛布の中から白いモコモコした生き物が出てきた。
「ピュー。」
「おはよう、リュピ。」
あまりにもモコモコし過ぎて目も口もどこにあるか分からない。羊とも犬とも似つかなくて、毛も切りたいのだが、リュピはとても嫌がる。よって、切れずにいる。とりあえず、体を起こし、カーテンを開ける。
「こーら、リュピ。」
「ピュー?」
腰下まである髪で遊んでいたリュピを床に下ろす。リュピが遊んで乱れた水色の綺麗な髪をくしですく。ひとまとめにするとトミコ婆が巫女の証と言ってくれた赤い紐で括った。村の子供たちはいつも綺麗な髪だと言ってくれる。目も水色なので、リコお姉ちゃんはお空みたいだねと言ってくれる。顔を洗い、黒いズボンを履く。
「ピュー、ピュピュー。」
「ん?お腹すいたのか?ちょっと待ってね。すぐ準備するから。」
黒いアンダーの上にさらに黒いコート。ハンドガン2丁の入ったこれまた黒いホルダーを腰に下げる。トミコ婆曰く、巫女は黒いものを身につけておいたほうが良いらしい。そして、父の形見の黒い短刀を腰に吊るすと、黒いブーツを履いてリュピと外に出た。
「あー!リコお姉ちゃんだー!」
「おはようー、リコお姉ちゃんー!」
外に出ると、朝から親の手伝いをしていた子供たちがちょうど休憩に入ったようで寄ってきた。
「おはよう。みんな、朝ごはん食べた?」
「ううん、まだー。リコお姉ちゃんも一緒に食べよー?」
「うん、一緒に食べよう。」
子供達と手をつないで、仲良く食堂へ向かう。この村ではそれぞれの家庭で食べるのではなく、食堂に集まってみんなで食べる。と言っても、全員が集まることは稀だ。村人は総勢300人ほど。だいたい100人くらいが村の外に出ており、さらに100人が畑仕事などで集まれない。村の外に出ている連中は皆、仕事に行っているわけだが、この村の主な収入源は商隊の護衛だ。だから、100人行って100人帰って来る訳ではない。商隊が通る森には山賊や獰猛な動物がいる。それだけなら良いが、さらに悪いことにゾンビまでいる。こいつらがなかなか厄介で、何回か体が動かなくなるまで刺すか、手練れになると脳幹をきれいに破壊して一撃で殺すことができる。はたまた火炎放射器を使って焼き殺すこともできる。ゾンビたちは光に集まるが、火には弱いのだ。死体は必ずゾンビになるのでどんなものであれ、火を通す。朝食の焼き魚もしっかり火が通っている。そんなものから商隊を守るのだから収入は良く、村はある程度裕福だった。
「今日もご飯おいしいねー。」
「うん、美味しいね。」
今日ものんびり朝食。子供たちとの朝食を終えたら、私も仕事。一応巫女であるため、朝から祭壇に祈りを捧げなければならない。朝食の後片付けをして、子供たちと別れると村の奥にあ
る本殿に向かった。本殿に入り、祭壇に行くと、黒いマントをかぶったトミコ婆がいた。
「おう、やっと来たか。朝の祈りに時間はとっくに終わってんだよ。まったく、寝坊なんかすんじゃない。」
「ごめんてば。明日はちゃんとやるから。」
「あたしゃ、あんたの言う明日がいつ来るのか期待しておちおち死ねないよ。」
黒いマントを頭からかぶっているから表情は見えないが、きっと呆れているだろう。
「さあ、さっさとおし。あんたにも仕事は入ってんだから。」
私は巫女以外にも仕事を持っている。商隊護衛の仕事だ。村で一番強かった父直伝の技のおかげで私も今では村一番になっていた。
「はいはい。」
祭壇の前に立ち、片膝をついて手を組む。朝のお祈りと言っても、ただ村の繁栄を祈る言葉を言うだけだ。とはいえ、私だって村が繁栄した方がいいから、真面目に真剣に祈りを捧げる。
「終わったら、さっさと仕事に行く!」
「分かってますよー。じゃあ、行ってきます。」
「おはよう、リコちゃん!」
「リコちゃん。」
「リコちゃん、今日もがんばれよ!」
本殿の外に出ると村のみんなから挨拶をされた。こんな風に村を歩けばいろいろな人から声をかけられる。それに手を振りながら、護衛の仕事を引き受けている事務所へ向かう。
「おはようございます、モウさん。」
「おはよう、リコちゃん。この時間だとまたトミコさんに怒られたろ?」
「いつもの事です。」
事務所に入るとモウさんが椅子に座って作業をしていた。モウさんはトミコ婆の昔からの知り合いの白髪の初老だ。ここの事務員をしている。
「で、早速だが今日の仕事はシュテリヒードからトンシャン山脈の森までだそうだ。」
「これはまたゾンビやら山賊の多い地域ですね……。あっちにはもっと専門の先住民族がいるでしょうに。」
「なんでも、リコちゃんの事を聞いてわざわざ頼んできたそうだ。」
「なら、断りづらいですね。引き受けるしかなさそうですね。」
「すまんな。じゃあ、シュテリヒードまで向かってくれ。これ、相手のプロフィールと積み荷の種類ね。」
「了解です。じゃあ、行って来ます。」
「ああ、気をつけてな。」
プロフィールを受け取ると、一度家に戻り荷物をまとめ、竹を組み合わせて作った門に向かった。門ではみんなが見送りをしてくれた。それを背に森に入っていく。要塞都市シュテリヒードに出発した。森には当然の様にゾンビが闊歩していた。気づかれないように木の陰に隠れつつ、時には戦って、森を抜けた。森を抜けると、巨大な壁が見えてきた。まさに陸の孤島の状態で周りを谷に囲まれている。橋は5本あり、それぞれの橋では多くの商人が護衛を連れて都市に入っていく。その列に続いて、私も都市に入る。集合場所は3番ゲート近くのパブ。そのパブに向かい、到着すると、パブの入り口で20人ほどの団体がたむろしていた。
「お!あんたがリコリスさんかい?」
「ええ、そうです。」
「やっぱり!お噂はかねがね。申し遅れました、俺はアリスキーと申します。以後お見知りおきを。実は前々からあなたのファンだったんです!」
「ああ……、そりゃどうも……。」
「あ!で、こっちが俺の商隊の仲間たちです。」
紹介された商隊員たちは口々によろしくとあいさつしてきた。観察すると老人もいれば年端もいかぬ子供もいる。1番驚いたのはそんな年端もいかぬ子供の中に槍を持った子がいたことだ。あれは明らかに商隊の子ではなく傭兵か護衛だ。白いボロボロの服を着ているあたり奴隷だろう。あんな小さな子供に戦わせるのか……。
「さあ、人数も揃ったことだし、出発しよう!」
アリスキーの掛け声で隊員たちもテキパキ動き始める。積み荷の確認などが行われる中、あの少年はまったく動く気配がなかった。
「ねえ、君。君も護衛なの?」
声をかけたが反応がない。もう一度声をかけようとしたところで少年はゆっくりと首を横に振った。
「じゃあ、傭兵?」
今度は首を縦に振る。反応があまりにも薄く、村の子供たちと違いすぎて驚いた。そんな私を見かねたのか、アリスキーが頭を掻きながら近づいて来た。
「リコリスさん、気を悪くしないでください。彼は最初からああだったので……。」
「彼を雇ってるんですか?」
「ええ、とても腕の立つ槍使いでして。彼の腕を見込んで傭兵として雇ったんです。」
「あんな子供がそれほど強いとは思えませんが……。」
「まあ、見ればわかります。」
「そうですね。どうせ、敵には出くわすでしょうから、その時になれば分かりますね。」
荷の確認を終えると、それぞれ馬や荷台に乗って出発した。3番ゲートから出て橋を渡り、森に入る。3番ゲート前の森が一番危険だといわれている。獰猛な獣やゾンビの数が特に多いのだ。気を引き締めていかないと。橋を渡り、その森に入っていく。最初の内は順調に進み、特に何事も起こらなかった。しかし、開けた場所での昼休み……。昼食を取っていると、突然、あの少年が槍を持って立ち上がった。
「何か来ましたね。」
少年とほぼ同時に立ち上がり、昼食を片付けて、2丁のハンドガンを抜く。
「いつでも逃げられるように準備しといて下さい。」
「はい……。みんな準備しろ。」
アリスキーは少し動揺しながら、隊員たちに指示を出した。あの少年は私とほぼ同時に気付いた。確かに期待できそうだ。
「そこの3人はその少年と前方を。君もいいね。」
少年は黙って先ほどと変わらず頷く。
「あなたたち3人は私と後方を。」
他の護衛にも指示をきっちり出す。前方と後方にそれぞれ剣士2人と弓兵1人+アルファ。みんな私の事を知っているのか、素直に従ってくれた。目をつむり、全神経を集中する。何かが近づく音がして、それがだんだんと大きくなる。来る、と思い、目を開けるとゾンビが視界に飛び込んできた。構えて、狙いを定め、撃つ。いつも通りだ。素早く3体のゾンビの脳幹を右のハンドガンで破壊すると、1度戦況を見る。前方の3人は剣で切ったり、弓矢で貫くなどどんどん死体(?)を積み上げていた。それよりも、少年の動きには目を疑った。それを上回る速度で少年が死体を積み上げていたのだ。槍を縦横無尽に振り回し、ゾンビの首を4つ同時に跳ね飛ばす。しかし、少年の表情は変わらない。少し背筋が寒くなった気がした。
「あ、しまった!」
気づいた時には遅かった。後方の護衛の1人がゾンビに頭を食われた。それにさらに他のゾンビも群がる。見ていて気持ちが良いものではない。すぐに背後から襲い掛かり、ハンドガンで脳幹を破壊する。食われた護衛は見るも無残な姿になっていた。他の護衛は何とか2人で持ちこたえていた。そこに助けに入り、また6人ほど打ち抜く。そんなことを1時間ほど続け、ようやく全滅にした。
「ようやく終わった……。アリスキーさん、油とマッチはありますか?」
「え、ああ、ありますよ。」
「この人を火葬してあげないと。」
その後、みんなでその護衛を火葬して、祈りをささげた。火葬しなければ彼もゾンビとなってしまうからだ。それは彼も嫌だろう。しかし、何度やっても慣れないものだ。
「出発しましょうか。」
みんな一様に暗い顔をしていたが、とりあえず出発した。
「彼は創設時から協力してくれていた古株なんです。だから、みんな……。」
「申し訳ない。私がもっと注意していれば……。」
「気にしないでください。彼のためにもこの旅を成功させなくてはいけませんから。せめてもの償いにね。」
「はい……。」
矢が刺さる音がした。どこかと探すと真横、アリスキーの頭だった。少年が防ごうとしたのか、槍をこちらに向けていた。が、届かず、むなしく宙を切っていた。
「あれ~?命中しましたか~?お~、命中しましたね~。良かった良かった~、防がれたかと思いましたよ~。」
森の中からピエロのような恰好をした男が弓を持って出てきた。
「あなたは誰ですか?」
「私ですか~?私はこの辺りの山賊を束ねている~ポメラヌスと言います~。」
ポメラヌスと名乗った男は気色が悪いほどにニタニタしながら近づいて来た。こちらも応戦しようとハンドガンを抜いたその時、真横を何かが横切った。あの少年だ。その表情は先ほどのような無表情ではなく、初めて感情を見せた表情だった。怒り、憎しみ、悲しみ。それらがない交ぜになったような表情だった。
「ううううおおおおあああああああ!!!!!」
先ほどの無口な彼とは打って変わって、叫び声をあげながら突っ込んでいく。
「待って!」
静止の言葉も届かず、少年は槍を振り下ろす。
「ん~?何ですか~?うるさいですよ~。」
ポメラヌスは素手で槍を受け止め、少年は即座に逃げようとしたが、槍が抜けない。
「んふふ~、なかなかかわいらしいお坊ちゃんだこと~。ゾンビのえさにでもし……。」
そこで言葉は途切れた。少年はポメラヌスの手から槍を取り戻し、1度後ろへ下がった。ポメラヌスの手に向かってハンドガンを放ってやったのだ。
「え……。あ……。痛いーーーーー!!!!!何するの!!!!ころす!!!コロス!!!!殺す!!!行きなさい!私のペットたち!!!」
「な……!」
血だらけの手を抑えたポメラヌスが後ろに向かって叫ぶと、背後から大量のゾンビがわらわら出て来た。
「ゾンビは生き物全てに襲い掛かるはず!なのになぜ!?」
「知らな~い?ゾンビって簡単に餌付けできるのよ~。餌をやる人以外の言うことは聞かないけどね~。」
少年は再びポメラヌスに向かおうとして、ゾンビに邪魔されていた。先ほど以上の勢いで切り捨てているが、まったく近づけていない。その間にもゾンビたちは隊員たちの方にも押し寄せていた。
「キャー!!」
その声で我に帰ったのか、少年は即座に隊員たちのほうへ走った。そして、ゾンビたちの首を切りまくって助けに行こうとするが、追いつかない。どんどん隊員たちを殺され、ついには10人に減ってしまった。私も撃つが間に合わなかった。どうにか道を作り、隊員たちを助けに行こうとしたとき、突然彼がこっちに突っ込んできて、槍を突き出した。背後にゾンビがいることに気が付かず、すぐ後ろではゾンビが串刺しにされている。彼が助けてくれなかったら、今頃死んでいた。しかし、無理をして、相手をしていたゾンビ引きはがしたのか、左足が引き裂かれていた。その後も、どうにか隊員たちを助けに行こうとしたが、近づくことさえできなかった。そして、二人で庇いあいながら戦ううちに本当に2人だけになってしまった。それなのにゾンビは一向に減らない。
「この森を脱出しよう。」
ものすごい形相でにらまれた。しかし、このままでは敵討ちもできず死ぬだろう。一方はけが人。一方は弾切れの心配がある。このままではいずれ戦えなくなる。
「体制を立て直すのよ。今の私達じゃどう考えても敵討ちすらできない。生きていれば再戦の機会も必ずある。それとも敵討ちもできずにここで無駄死にしたいの?」
こちらを見つめたまま、なかなかうなずかなかった。が、やっと、ものすごく悔しそうにうなずいた。
「よし、まだ生きている馬があそこにいる。あれに乗るよ!」
荷台を引いていた馬で一頭だけ残っていた。2人で同時にその馬に向かって飛び出し、馬の周りのゾンビを蹴散らす。馬に素早く乗ると、全力で走らせる。走る間も絶え間なくゾンビは襲い掛かってきた。それを蹴散らしながら走る、走る、走る。夢中で森を抜けると目の前にシュテリヒードが見えた。そのまま城門の兵士のところへ行き、事情を説明し門を閉じてもらった。ギリギリのところだった。どうにかゾンビの大群は門でせき止めた。あの少年を探すと、兵士に説明している間にどこかへ行ってしまったようで姿が見当たらない。その後も探したが結局見つからなかった。門の前に群がったゾンビたちは門兵が城壁の上から矢である程度撃ち落としてから、剣を持った兵士たちが門の外へ出てしっかり掃討してくれた。
それから、3年後。私はいつの間にか17歳になっていた。テクシアの村では秋祭りの準備で忙しい時期になった。私はこれでも巫女なので祭壇を秋祭り仕様にいろいろと配置換えをしていた。子供たちも木の実などを取りに行くために護衛の仕事をしている大人と村の外に出た。たまには外に出してやらないと子供たちも可哀想だからだ。今回は子供たち4人と大人3人で採りに行っていた。しかし、彼らが出発してからもう6時間が経っている。もう夕日がいい感じに沈もうとしていた。
「遅いな。リコ、あんた見てきな。」
「じゃあ、こっちの祭壇もトミコ婆に任せたよ。」
「ああ、さっさと行って、さっさと戻ってきな。」
それから森を探し回った。不自然なほどに静かな森。ゾンビ1人いない。自分の勘が告げている、明らかに何かがあると。
「あ……。」
護衛の武器が落ちていた。しかも血の付いた……。子供たちの持っていったバスケットもある。連れ去られたのか、はたまたゾンビにでも食われたのか。先ほどからゾンビ1人見当たらないが……。しかし、よく見ると枯葉の上にまだ乾いていない血が点々と落ちている。たどっていくしかないようだ。そうしてたどるうち、たどり着いた先には洞窟があった。入り口には盗賊のような見張りが2人。明らかに連れ去られたようだ。さて、どう侵入したものか……。
「ピュー。」
「リュピ!ついてきてたの?どうかした?」
「ピュー、ピュー。」
入り口の2人の見張りを見て、私を見つめてくる。
「自分が囮になるから、その間に行けってこと?」
毛が多くて分かりにくかったが、どうも頷いたらしかった。
「分かった。でも、無理をしてはダメよ?」
「ピュー!」
任せろといった感じか。そのままの勢いよく飛び出して行ってしまったが、とても心配だ。
「ギャー!!」
「何だこいつ!?離れろ!!」
見張りが騒ぎ始めた。リュピが足に噛みついて、気をそらしてくれている。今のうちに……!ばれないようにこっそりと見張りの横を抜け、洞窟に入る。中は松明が灯されており、薄気味悪くてちょっと不気味だった。
「……!!」
聞き間違いでなければ、今確かに子供の泣き声が耳に入った。聞こえた方向へ静かに走る。
「あ!リコお姉ちゃん!!」
「しーっ。」
「あ、ごめんなさい……。」
「今助けるから、静かに待っててね。」
みんな素直でいい子たちだ。言った通り、静かに待ってくれていた。鍵を短刀で壊し扉を開けると、子供たちは静かに出てきたが、外に出ると我慢できなかったのか、泣きながら抱き着いてきた。他の子もそれに釣られて抱き着いてくる。しばらく泣き止むまでそのままでいた。ある程度泣き止んだところで、大人たちはどこかと切り出した。
「木の実を取ってたらね……ヒック、怖い人たちが来てね……、それでミカ達逃げたの……ヒック、そしたらミカが転んじゃって……おじちゃんが悪い人に刺されちゃって……うあああああん!!!ごめんなさいー!!!」
「ううん、ごめんね。つらいこと思い出させちゃったね。ミカちゃんは悪くないよ、大丈夫。
ほかのおじちゃんたちはどうなったか分かる、ショウ君?」
「他のおじちゃんたちも、僕たちをかばって刺されちゃって、そしたらねピエロみたいな人が来てね、『こいつらゾンビに食べさせといて下さい〜。』って、連れてきてたゾンビに食べられちゃったの……。」
ショウ君も他の子もその時のことを思い出したようで、今にも泣きだしそうだ。もう一度みんなを抱きしめて、大丈夫と言い聞かせた。
「さあ、早くこんなところ出て、村に戻ろう?みんな心配してる。」
「うん……。」
左右を確認して、通路に出る。入り口までは誰にも出会わずにたどり着けた。
「ここで少し待ってて。で、後ろの方見張っててくれる?もし、誰か来たら大きな声で叫びながらこっちに走ってきて。いい?」
みんなしっかりうなずいてくれる。
「じゃあ、行ってくるね。」
「気を付けてね、リコお姉ちゃん……。」
とりあえずは入り口にそっと近づく。ハンドガンを構え、狙いを頭部に定めた。銃声とともに見張りの1人が倒れる。異変に気付いたもう一人が洞窟の中を見る。その時にはしゃがんで相手の死角にいた。顎の下からハンドガンで狙いをつけて撃ち抜く。完全に動かないことを確認すると子供たちの元へ戻った。
「後ろ大丈夫だった?だれも来なかった?」
「うん、大丈夫だったよ。リコお姉ちゃんケガとかしてない?」
「大丈夫、ケガしてないよ。行こう?みんな待ってる。」
「ピュー!」
入り口に出る、リュピが駆け寄ってきた。その後、森の中を子供たちと走った。一応警戒はしていたが、行き同様ゾンビは1人もいなかった。かなり、不自然だったが、今はそれよりも子供たちを村に連れて帰らなきゃ……!だが、村に近づくにつれ、ある異変に気が付いた。煙が上がっているのだ。確かにキャンプファイヤーの準備はしていたが、子供たちがまだ帰っていなのに火をつけるなんておかしい。そして、ある一つの結論に到達したとき、とてつもない悪寒を感じた。いや、それはない。秋祭りは村人全員が集まる。手練れもいるはず。だから……!心の中でそうないように、今まで真面目に祈ったこともない神様に祈った。とにかく村へ急いだ。村につくと、そこにはキャンプファイヤーを囲む人影も祭りを準備する人たちもいなかった。人はいたが、全員死んでいた。ある死体は、そこで死んだまま動くことはない。ある死体は、歩き回り、動かない死体を食べる。
「え……?お母さん…?」
「あ、ミカちゃん!?待って!!!」
遅かった。ミカちゃんはお母さんの死体に近づく。動かなくなったお母さんを見て、泣きだそうとしたのだろう。それは叶わなかった。
「うおおおおおああああ!!!!!」
夢中で銃とボーガンを打ちまくり、周辺にいる、ゾンビを蹴散らした。ミカちゃんに近寄って、体を持ち上げる。ドンと重い音がして、頭が重力に従って地面に落ちる。
「……………。」
何も言えなかった。また守れなかった。後ろにいる子供たちにどんな顔をすればいいのか分からなかった。
「リコお姉ち……。」
ショウ君が前のめりになって倒れる。頭には見覚えのある矢が刺さっている。
「あれ~?当たりましたか~?当たりましたね~。良かった良かった~。」
この声、このセリフ、この矢。
(そしたらね、ピエロみたいな人が来てね……。)
ショウ君のこの言葉で思い出すべきだったのだ。
「ポメラヌス……!また……!お前か……!!!」
「お~、名前覚えていてくれたんですか~。嬉しい限りです~。」
「お前だけは……、お前だけは……、許さない!!!」
二丁のハンドガンを手に飛び出した。とにかく狙いを定めて撃ちまくる。しかし、1発も当たらない。すべて避けられる。ハンドガンの弾が切れると、短刀に持ち替えて切りかかる。今度は素手で止められる。これでは前回と同じだ……!前回と……同じ……?気づいた時には遅かった。つんざく悲鳴の中で子供たちがゾンビに頭から食われた。しかも目の前で、だ。なるほどあの時の少年もこんな気持ちだったのか……。前回と違うのは少年と違って、悔しい気持ちがあるが私は動くことができなかったことだ。もう足に力が入らない。そのままペタンと地面に座り込んでしまった。
「何ですか~。もう終わりですか~、つまりませんね~。まあ、あなたは取っておいた方が面白くなりそうですね~。今日のところは見逃してあげます~。では、ごきげんよう~。」
ポメラヌスはゾンビを連れて去った。私を生かしたまま、殺さずに去ってしまった。一緒に殺してくれれば良かったのに……!!!そんなことを思っているうちに、夜が明け、火も消えてしまっていた。結局一度も泣くこともできなかった。あまりに衝撃的過ぎて、涙が出ない。だが、とりあえずは立ち上がることはできた。このままにしておくことも出ないので、残っている死体は集めて火葬した。その中にはモウさんやトミコ婆のものもあったのにもかかわらず、何も感じることはできなかった。それは正直ありがたかった。ここで何か感じていたら本当に何もできなかっただろうから。火葬し終わると、灰は地面に埋めた。その後、山賊に荒らされるのも癪だったので、家財道具や貴重品で燃やせるものは燃やし、燃やせないものの多くはみんなと一緒に埋めた。一部はシュテリヒードまで持っていくことにした。どうするかはそこで決める。それを馬車の荷台に乗せると馬を走らせ、城塞都市シュテリヒードに向け出発した。というよりもだ。馬が残っていたのはありがたいが、これは奴が意図的に残したのだろうか。となると完全に村人だけを殺すために……。なら、リュピはどこに行ったんだろう?村までは一緒に走ってきたところまでは覚えている。しかし、その後見当たらなくなってしまった。まぁ、何にしろもうこの村にはいられない。そう思い、シュテリヒードに移ることにした。向かう間もゾンビに出会うこともなく、皮肉なことに安全に着くことができた。まず、みんなの物を、倉庫業をやっている者に預け、宿を取った。それから数日かけて部屋を探し、部屋を借りた。この都市内ならゾンビが来る心配はない。誰かを守れずに死ぬこともない。しかし、それなりにお金はあったが、結局は働かなければならなかった。巫女であったとはいえ、たかが村の巫女で、しかもこの都市には本格的な僧侶がいる。雇ってはもらえないだろう。となると、護衛しかなかった。そして、また城塞の外で働き始め、あの妙な連中に出会い、今こうしている。
夢か……。最近は思い出すことも少なくなってはいたがまだごくたまにあるのだ。朝からテンションが下がる。そこにテンションが高い奴が来るとさらに厄介だ。
「リコー!起っきろー!」
騒がしい声がして、目を開けると目の前には茶色い半ズボンに白い半そでのTシャツを着た少年が立っていた。しかし今はもう冬のはずなんだが……。
「うるさい……、まだ9時だよ……。ていうか、どこから入ってきたの?」
確かドアのカギは閉めたはず……。
「え?どこからって、窓から。」
「は?ここ5階だよ!?何考えてんの!?死ぬの?もう死ぬのバカなの?だいたい女の部屋に男が勝手に入るもんじゃない!出てけ!」
リョウは仕方なく部屋を出ていこうとしたが、ドアに手をかけたところでピタッと止まり、
「あ、で朝ご飯だよ。今日は団長が真面目な話があるって。」
「そう言ってしたことないじゃない。ま、いいわ。とりあえず着替えるから出てって。」
ようやく出て行った。まったく……。デリカシーのないやつだ。いつまでたっても変わらない。いろいろ言いたいことはあるが、とりあえずいつもの全身真っ黒の格好に着替えた。そして、朝食のためにみんなの、仲間の集まる1階へ向かう。本来は朝の7時には起きていたのだ。皮肉なことに村から離れて数年経ち、ようやく真面目に祈るようになった。朝の祈りを終えるとそのまま二度寝をする。これがいつものパターンだ。こんなことができるようになったのもこの団のおかげだろう。食堂に到着するといつもの面々が揃っていた。
「「おはよー、リコ!」」
「うん、おはよう。」
真っ先に駆け寄ってきたのはフレル姉妹だ。姉のリーチェ・フレルと妹のシリル・フレル。薄い金色の髪を腰まで伸ばし、今日は黒地に白いレースのひらひらがたくさんついたいわゆるゴスロリの服を着ている。まるでお人形みたいですごく可愛らしい。歳は私より上らしいが、見た目12、3歳程度なのでまるで妹のように接している。(たまに怒られる。)
「おう、おはようさん。遅かったな。また、夜更かしか?」
「おはようございます、ジートさん。」
台所から作られたばかりであろう、湯気を立てている朝食を持って出て来たのはジート・
バクレイさん。背が高くて、艶のある黒髪を今は後ろで一つに束ねている。自分的にはすごく女性らしい女性だと思うが、なかなか言葉遣いが荒い。また、事故か何かで右足を失ったようで今は義足をつけて、仕事はせず、この住居の女主人をやっている。まさに母親という感じであれだけ個性的なみんながおとなしく言うことを聞いていた。
「さぁ、みんなさっさと食べな。冷めちまうぜ。」
テーブルにつくと、他のみんなもそれぞれの席につき始めた。
「ほっほっほ、リコよ、またお寝坊さんかね?」
一番奥の席に長い白髭と白髪をたくわえた老人が座っていた。
「おはようございます、シベリウスさん。昨日は少し夜更かしをしてしまいまして。」
「そうなのよ、おじい様。昨日はリーチェたちとたっくさんお話ししてたの!ね、シリル?」
「うん、楽しかったの、おじい様!」
二人がシベリウスの膝の上に両手を乗せて楽しそうに話している。まるで、孫娘とおじいちゃんのようだ。……。そう言えば、いつもおじい様と呼んでるけれどなんでなんだろう?
「ほっほっほ、そうかそうか。それは良いがの、あまり夜更かしはするものではないぞ。」
「「はーい!」」
二人ともニコニコしながら小さい手をそれぞれあげて返事をした。可愛い。
「それと、リコよ。いい加減、わしのことは名前で呼ぶのはやめてくれんかの?」
「じゃあ、なんて呼べばいいですか?」
「おじい様でいいのよ、ねー、シリル?」
「ねー、リーチェ。」
今まで自分には祖父がいなかったので、改めてそういう風に呼ぶというのはなんとも恥ずかしい。
「お、お、おじい……、ちゃん……。」
かなり恥ずかしい。おそらく顔は真っ赤だろう。思いっきり目を瞑っているので、三人がどんな顔をしているのかわからない。
「「可愛いー !!」」
「えー!?こらっ、離れてよ!くすぐったい!」
思いっきり抱きつかれるのはよくあることだが、なにぶんフレル姉妹の手は小さいため、腰に抱きつかれるとなんともくすぐったいのだ。
「ほっほっほ、良いではないか良いではないか。のう?」
「ええ、いいと思うでござるよ。」
隣でござるござるとチカヤスが頷いている。緑色のタンクトップに赤色のズボンなのでまるで煙突から入って来そうな雰囲気だ。今は茶髪を短く切りそろえているが、昔はある島国で侍というものをやっていたらしく、基本チョンマゲなる物を頭にぶら下げていたらしい。最近、ロリコンではないかと疑わしい限りだ。
「そう言えば、団長は?」
「まだ上でござるよ。寝ておるのでござろう。」
「リョウが団長が真面目な話があるって言ってたけど、寝ぼけて言ったみたいだね。」
「まぁ、そうでござろうなぁ。」
「ふわぁあ〜。」
大きなあくびを子供みたいにしながら、巨体が階段をのっそりと下りてきた。まさに、噂をすればなんとやらだ。
「おはよう、団長。」
「あぁ。」
ボリボリと赤毛の頭をかくと、どかっとソファに座った。すると、すぐに寝息が立ち始めていた。また寝てしまったようだ。
「ほら、団長。起きなよ、真面目な話があるんでしょ?」
ゆさゆさと肩を揺らして起こすが、なかなか起きない。ならば、最終手段に出るほかない。
「ジートさんが……。」
「む。」
いきなりむくりと起き上がったので、こちらもびっくりした。流石のお眠の団長もジートさんには敵わないようだ。しっかり目を開けてテーブルの方へ歩き始めた。
「朝飯か……。」
「そうだ。あんたは顔が汚いから先に洗ってきな。」
「あぁ。」
今度は洗面台の方にのっそりのっそり歩いて行った。まるで、大きな子供だなと思う。団長が顔を洗い終わって、全員が席に着いたところでそれぞれに朝食を食べ始める。ただ、いただきます、の挨拶はバラバラでシベリウスやフレル姉妹は神に祈ってからアーメンと言っているし、チカヤスは何か自然に対して感謝を述べているようだが、ちょっと重すぎるのではないかと思うくらいだ。食べれるのだろうか……。私は私で村にいた頃と同じように村の神に祈ってから、ジートと団長は最早何も言わないし。
「あ、そうだ。みんな、食べながら聞いてくれ。真面目な話がある。」
「本当にあったんだ……。」
「飯を食う時、飲み物から手をつけるか、それとも食い物から手をつけるか。」
「……。は?」
「いや、ふと思ったんだ。口の渇きを癒してから食い物に手をつけた方が良いのか、食い物で腹を満たしてから飲み物に手をつけた方が良いのか。悩みどころだな。」
「何から手をつけてもいいんじゃないかな……。と言うか、それが真面目な話なの?」
「む。そうだったな。真面目な話、というより仕事の話だ。今日は少し仕事の内容が違う。いつもの護衛ではなく、死体の回収の仕事だ。」
「回収って、死体ならもうゾンビになってるでしょ。生け捕りにしろってこと?」
「いや、倒してもいいができるだけ傷つけるなと依頼された。報酬はなかなかのものだぞ。」
なかなかの報酬と聞いて俄然やる気が出てきた。しかし、
「ということは、遠距離狙撃でやるの?」
「そうだな、頼む。」
「了解。」
「と言うことで、朝飯を食ったらそれぞれに準備をしてくれ。今日は四番ゲートに向かう。」
朝食を食べ終わり、それぞれにご馳走様の挨拶をすると、それぞれの部屋で準備を始めた。部屋に戻るとまずはハンドガンの残弾と予備弾の確認をして、それらと黒い短剣を腰のホルダーに入れる。そして、長い空色の髪をフレル姉妹から貰った黒い花のついた髪留めでまとめた。
「よし、あとはて……。」
「ピュー。」
「あ、リュピ。おはよう。」
白くてモフモフした毛に覆われて、目も口もどこにあるかわからない生き物を抱き上げると、おそらくは鼻であろう、それを押し付けてきた。すると、キュルル〜と言う音がどこからともなく聞こえてきた。
「あはは、お腹すいた?ご飯まだだよね。」
リュピを抱えたまま、階段を降りた。下の階に着くと、フレル姉妹がちょうど弓を抱えて部屋を出てくるとこだった。二人は今は深緑のロングスカートに茶色のカーディガンを羽織って、いつもよりあまり目立たない服装に着替えていた。
「あ、リュピ!おはよー。」
「おはよー。」
「ピュ〜。」
二人ともリュピを気に入っており、リュピも好いているようだ。撫でられても気持ちよさそうにしている。リュピをそのまま二人が交互に抱いて撫でながら、二階にある団の事務所に行くともうすでに全員準備を済ませて集合していた。行くのは私とフレル姉妹、チカヤス、リョウ、そして団長の六人だ。ジートさんは足の怪我でとりあえずは引退してしまったし、シベリウスさんはもうお歳のようで、リュピとともにお留守番だ。
「遅いでござるよ。」
チカヤスはがっちりとした鎧に身を包み、盾と剣をガチャガチャと鳴らしている。早く行きたくてうずうずしているのだろう。
「あんまり遅いから団長寝ちゃったよ。」
「それは、いけないね。」
リョウは先ほどと格好は変わらないが赤い、おそらくは自身の身長の二倍はある槍を持っていた。
「団長、起きて。」
団長は黒い袴の上に白地に背中に零と書かれた羽織を羽織っている。肩を思いっきり揺らして起こす。そして、またしても起きない。ならば。
「そうしないと、ジートさんが……。」
「む。リコか。」
「おはよう、団長。もうみんな揃ったよ。」
やはり、ジートさんの名を出せば言うことは聞いてくれるようだ。そこはとても不思議なところだが……。
「そうか、なら出発しよう。」
団長か立ち上がると、皆もそれに合わせて立ち上がって団長の後に続いた。
「じゃあ、おじい様、行ってきます。」
「行ってきます。」
「二人とも気をつけるんじゃぞ。リコもな。」
「ありがとうございます。行ってきます。」
リュピをシベリウスさんに預けると外に出た。外にはすでにジートさんが馬と荷台を用意して待っていた。
「全員気ぃつけてな。ほら、弁当だ。あと、リコにはこれだな。」
「ありがとうございます。」
ジートさんからかなり大きめの弁当と整備を頼んでいたライフル銃を受け取った。元々はジートさんの物だったので、整備も慣れないうちはジートさんに頼むようにしている。それらを持って荷台に乗ると、団長はまた寝ていた。
「まったく……。こいつは寝過ぎなんだよ。」
ジートさんが頭から落ちそうに団長を後ろからぞんざいに押して荷台に戻していた。これで起きないのだから不思議すぎる……。
「さぁ、チカヤス!行きな!」
「了解でござる!」
チカヤスが馬を走らせ、四番ゲートに向かった。四番ゲートに着くと、門番に料金を支払ってついに外に出た。今日もこの団での仕事が始まる……!
空色の狙撃手(シューター) BEFORE STORY 丹花水ゆ @sabosan
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