第33話 海底へ…

「気をつけてね!」


そう言って声を大きくあげたサーバルを横目に園長達は海の中へとダイブしていく。

海上とは違い、孔雀青の海中は透き通った太陽の矢のような光が地へ突き刺さる。キラリと光るものを見れば、そこには悠々と泳いでいる魚が鱗を輝かせている。

海中の中だというのにまるで彼らは空を飛んでいるかのような、そんな錯覚ををするほど恐ろしく美しい海の底をただ目指して手足を動かす。

ぐんぐん底へ落ちて行くほど冷たさはダイバースーツを通り抜けるようになっていく。

海のフレンズ達は楽しそうに泳ぎ回りながら底へ降りて行く。人間はそんな彼女達に必死に追いつこうとばたつかせていた。その時であった。

強烈な視線


海の冷たさを遙かに超えた無機質で冷淡な、ただ機械的な強烈な視線に、園長達はまるで銛で突き刺されたような衝撃を受けた。

ぶくぶくと、園長のマスクから泡が明るい海へと向かって登って行く。しかし園長は下へ降りて行く。そうしなければならないからだ、

海のフレンズ達は少し顔が青ざめ、船に近づくことに躊躇する。しかしシロナガスクジラが一人一人の頭を撫でてやればすぐに調子は戻り、感じた視線の向こうにある大きな不気味な船へ泳ぎ始める。

やがて船の姿がはっきり見えるようになると、園長はそれに既視感を覚えた。


…どこかで見たような。そう遠くない日に。


ふと視界にマルカ達の姿が入り込む。

移動を止めていたことに気づき、園長は慌てて後を追った。


沈没船は暗いせいか、或いは塗装のせいか、全体的に黝く見える。船首には巨大な穴が開いており、何が起きたのかは推測できなかった。園長はまず、船の周りを泳ぎ始めた。

ライトに照らし出される沈没船の壁はまだあまり錆びてはいなく、よく映画等で出てくる沈没船のようなボロボロな状態ではなかった。穴は先ほどみた船首だけにしか存在しないし、海の生き物が住んでいるようには思えない。そして園長は気づく。

まず船の形を見る限りそれは恐らく貨物船であるという事。次に船が黒色に染められていると。つまり暗さなど関係ないということだ。

一通り観察した後、園長達は船首の穴から沈没船の中に入り込んだ。

入り込んだ部屋の中には舵輪を中心にして様々な計器のような物が設置されている。

マルカはそれに気がついて、近づくと同時に舵輪をぐるぐる回転させて遊び始めた。それにつられてドルカが計器のそばに着いて、何やら弄くりまわしている。

面白い光景に園長はカメラを構えて一枚。

そしてナルカは二人を止めて、引き続き調査をしようとした。その時、園長はおかしなことに気づく。


…どうしてブリッジでもない場所に舵輪があるんだ?


途端、そこは暗闇に包まれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る