ダイビング!へーん
第31話 ちょっとしたロマン
シャーシャーや、みんみんや、様々な声が聞こえるこのゴコク。いよいよ夏の到来であった。カンカン照りの陽射しは外に出るもの全てを焼き尽くさんと襲いかかる。人々は団扇を片手に行動するようになった。そして、ある通りの脇に存在するカフェにて、それは起きた…。
食器の音、話し声とクーラーで発生した冷気がこのカフェの中いっぱいに広がる。そんな中、長い耳の先に毛が付いている一人のフレンズが向かいに居る大きな耳を持つフレンズの話を聞いていた。
「マルカ達からすっごーい話を聞いたんだ!」
「へぇ、どんな話よ」
「夏と言ったらやっぱり海でしょ?それでマルカ達も泳ぎに行ったそうなんだけど…」
「あの子達はいつでも泳いでると思うけど」
「その時に、キョウシュウの方へ泳いでみたんだって、すると何があったと思う?」
何があったか、そう言われてカラカルは少し考える素振りを見せて、分からないと返事をした。するとサーバルは両手を広げて答えを出した。
「こーんなにおっきな船が海底に沈んでたんだって!凄くない!?」
「なにそれ、沈没船ってこと?」
「うん。それで、その中に入ろうとしたらしいんだけど…」
「だけど?」
「船の方からとても強い視線と気配を感じて結局そのまま帰ることにしたんだって」
「へー」
カラカルは少し興味はあったが、結局それの詳しい話を聞けないと察するとすぐに興味をなくしてしまった。
その反応にサーバルは不満気に文句を言った。
「もー、カラカルは分かってないなぁ。この話を聞いて何も気づかないの?」
消えていた興味は再び小さな灯し火となる。カラカルはその話に少し耳を傾けると、その反応を見たサーバルは話を続けた。
「船の方から強い視線と気配…、これって間違いなく幽霊船に違いないよ!」
「幽霊船だったらなんなのよ」
「幽霊船って事は、海賊船って事でしょ?つまり…」
「お宝がいっぱいあると、言いたいわけ?」
「なんだ、分かってるじゃん」
カラカルはとことん呆れた。
一体なぜ幽霊船が海賊船に繋がるのかがよく分からないし、それ以前に何故それを幽霊船と思ったのか。ただの沈没した船という考えは無いのだろうか。これらの疑問をとことんサーバルに問い詰めてみると、サーバルはムッとした可愛らしい顔で文句を言った。
「カラカルにはロマンがないよ!」
「無くて結構、だいたいそんなお宝があるのは小説や映画の世界だけよ」
「むぅ、でもカラカルだって見たでしょ、私たちが見つけた“ほしいものが手に入る不思議な宝箱”を!」
「あれは私が…」
「私が?」
あ、と呟くとカラカルはすぐに咳払いをしてなんでもないわよと返した。
ほしいものが手に入る不思議な宝箱、これは以前カラカルがサーバルにプレゼントをしようとしたのだが、面と向かって渡すのは恥ずかしかったのか、プレゼントをある宝箱の中にしまい、そしてほしいものが手に入る不思議な宝箱の噂を流してサーバルに取りに行かせたという話だ。
プルル、突然カラカルの携帯電話が音を発した。何事か、表示される名前を見ればそこには園長とあった。
電話に出てみればすぐに焦ったような声が聞こえてきた。
「はい、もしも…」
『カラカルかい?大変なんだ。すぐそこにサーバルは居る?』
「え、居るけど…どうしたの?」
『とても大きなセルリアンを感知したんだ。これが間違ってなかったらとんでもない大きさだ!悪いけど急いでサーバルを連れて管理センターに来て!』
「分かったわ。少し待ってて」
そう言うとすぐに電話は切れてしまった。カラカルは首をかしげたサーバルに事情を話すと二人はすぐにカフェから出て管理センターのある方へと走っていった。
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