第29話 思い出

もうすっかり夕暮れだ。

ミライさんは今日は夜まで遊ぶという訳にはいかず、帰らねばならなかった。


「きょうはとーっても!たのしかったよ!」


サーバルが笑顔でそう言うと彼女達もそれに応えるように微笑み、頷いた。そうするとサーバルは指をさした。


「じゃあ、観覧車に乗ろうよ!」


現在、大きな大きな観覧車の中に七人のフレンズと二人の人間が座っていた。

ゆらりゆらりとゆりかごのように揺れて、少し、少しずつ、太陽の光を浴びていく。

窓からは多くの人が見える。

まだまだ遊ぼうと笑い合う者達、遊び足りないが別れを告げ手を振り合う者達、店を巡りお土産を買い集める人達。様々だ。

その中にはもちろん、フレンズの姿も見られた。


「面白いですね、ヒトとフレンズが一緒に遊んでいるなんて…あの頃じゃあ考えれませんでした」


「そうですね、ま、そのような発言は控えましょうか、古い人間だと思われますよ?」


「まだまだ若いです!」


「あ!でもミライさんは知ってたはずだよ!だって私たち友達じゃん!」


「ふふっ、そうでしたね」


窓際に座るミライさんに陽の光が当たり始める。帽子は光を遮っているが、それが役に立たなくなるのも時間の問題だ。


「後少しでてっぺんだね」


囁くように呟いたサーバルにカラカルは返事をする。


「そうね、なんとなく、こうして見下ろしてると落ち着くわ」


「そうなの?ネコ科ってよくわからないなー」


ルルは不思議そうな顔をして、うっとりと淡いオレンジの夕日を眺める。ふと、シロサイは呟いた。


「ふと、考えることがありますの。私たちはジャパリパークを守り切れたのかと。ですが…」


光の下、はしゃぐ者達を見たシロサイは答えを出した。


「守れたのね、自分でも驚きだわ。どんな発明品でも倒せない黒いセルリアンがいっぱいだったのに、本当にジャパリパークを救っちゃうなんて」


ギンギツネは驚嘆に満ちた表情になるが、みんなの姿を見れば、微笑みに変わった。


「私たちが団結したからよ、やっぱり歌は全てを上手くいかせるのよ」


「ふふ、そうだね。トキの歌はちょっとアレだけど、聞いたら力が出るもん!」


サーバルがトキと言葉を交わすとカラカルは目の前の親友によく似た友に声をかける。


「セーバル、あの時みたいに一人で全部解決しようとしないで、みんなで一緒に解決しましょ?私たちがみんな揃えば、なんだってできるんだから」


「うんっ!みんな、だーいすき!」


「みなさん!そろそろ頂上ですよ!」


ミライさんの声で再び静寂が観覧車の中に満ちる。今か今かと、みんなはその時を待つ。そして、その時は来た。


「ここが、一番上…」


「キョウシュウエリアが見えるよ!」


「すごい、キョウシュウエリアの観覧車より上じゃない?」


夕陽は迎える。

その姿を半分だけ見せて、微笑みかけるように光る。

空は青と橙のグラデーションがかかっていて、見るものに感動と、少しの寂しさを思わせた。

しかしそれもすぐに終わる。

何故なら当然、不意に火山が噴火したからだ。

綺麗な、虹が、サンドスターが遠くに見えるキョウシュウエリアへと撒かれていく。

その景色にみんなはただ黙って、感動していた。


「早い噴火ですね。次は一年後かと思っていたのですが」


「ええ、恐らく時間が早くなっているのが関係してるかと」


「……なんだか、」


「?、どうしたのサーバル」


「ううん、なんでもない!」


サーバルは明るく、目を閉じて、笑顔になった。夕陽は観覧車の中を光で満たしていた。

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