第28話 楽しい時間

「うーん、まだかなー。あとちょっとなんだけど…」


サーバルは尻尾を慌ただしく揺らしながらちょこまかと動き回っていた。そして、耳を少し動かせば嬉しそうな顔をしてその足音の持ち主の名を呼んだ。


「カラカル!来てくれたんだね!」


「当たり前じゃない。それにしてもどうしていきなり呼んだのよ?もっと前もって教えてくれればいいのに」


「実は本当についさっき思いついたんだ。ほら、帽子はもうあげちゃってなにも考えつかなかったからさ」


「だとしても、もし誰かが欠けてしまったらどうするのよ?」


「その時は、なんとかする!」


「はぁ…」


カラカルは呆れてため息をついた、そしてまた人混みの中から二人のフレンズがやって来た。


「待たせたわね」


「お待たせしましたわ」


二人はこちらに来てそう言った。ギンギツネとシロサイだ。


「やった!二人とも来てくれたんだね!嬉しいよ!」


「まあ、なんの予定もありませんでしたので」


「私もそうよ」


そして次にサーバルの耳が捉えたのは二人の友達の足音と羽を羽ばたかせる音。

直ぐにそちらへ向いて、大声で呼んだ。


「あ、おーい!ルルー!トキー!セーバルー!こっちこっちー!」


遠くに三人の姿が見える。

楽しみにしてたのか、駆け回りながらこちらへ近づいてくるルル。そして、なぜかげっそりとしたセーバルとスッキリしたわと言いたげな表情のトキが居た。


「!?、せ、セーバルどうしたの!?」


「う、歌を…聞かされた」


「歌ってたら偶然セーバルが通りかかったから聞いてもらったの」


「あらら…」


「やっほー!間に合ったかな?」


「うん!ちゃんと間に合ってるよ!」


一通り喋り終えたらサーバル達はチケットを買って園内へ入った。

とても賑わっていて、そこに笑顔でない者は居なかった。そして、サーバルはさっそくアトラクションを指差して行こうと言った。それは遊園地の定番、醍醐味、ジェットコースターであった。それを見た途端に園長の顔は真っ青になる。が、サーバルが園長の方へ振り返った途端笑顔になっていた。

そして、ジェットコースターで並んでいる中フレンズ達は思い思いにお喋りを楽しむそして、一人の人間はこれから訪れるであろう悪夢に備え、決意を固めていた。


「そういえば猫って高いところが好きなんだよね?サーバルとカラカルもそうなの?」


と、尋ねるルルにサーバルは


「うん!私は好きだよー高いところ」


「そうね、昼寝するときによく木の上に登ったりするわ」


「そうなんだ!」


「あ、でもロケットみたいに飛ばされるのは嫌だよ!ね、ギンギツネ」


「ロケットじゃなくてスキーよ、サーバル」


「そういう問題じゃないよ!」


「見たかったわね、いや、ジェットコースターでも見れるかしら?」


「む、絶対泣かないもん!」


「安心して、サーバル。もし怖かったら私が歌って和らげてあげるわ」


「これが四面楚歌なのかな?」


楽しそうな声が聞こえてくる。楽しそうな笑い声が聞こえてくる。

その声に園長は恐れを無くし、チラリと彼女達の姿を見て、顔を綻ばせるのだった。

もっとも、それはジェットコースターに乗るまでの話であったが。

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