パークセントラルへ行ってらっしゃい!
第27話 ひっかかり
〜園長の日記〜
遂に明日、ミライさんは行ってしまう。
思えばこのジャパリパークに来た時からあの人には世話になりっぱなしだった。
動物やフレンズのみんなにとても詳しくて、すっごく好きなんだなと知った。
そんなあの人に追いつきたくて、動物についての勉強をやったりもしたなぁ。
しかし、私は日が近づくごとに辛くなっているのにサーバル達からは微塵もそんな様子をうかがえない。
彼女達はどうして悲しまないのだろう。
私にはわからない。
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まだ朝だというのに、日記に手をつけた園長。パタンと日記帳を閉じて、ペンを置くと大きく伸びをした。
窓から差し込んでくる日の光が机の上にあるコップの水をキラリと輝かしたその時、ノックは鳴らされた。
ゆっくりとそちらへ顔を向ける。
気怠さと少しの悲しみ、寂しさに浸っていた園長はその扉を開けるのが面倒に思えたが、出ないのは悪いので大人しく開けることにした。
「はい、どちら様ですか?」
しかし、そこには誰もいなく、ただ呑気な雰囲気で誰もいない道しかそこには何もなかった。聞き間違いか、或いは悪戯か、園長はドアを閉めようとした瞬間視界の下から何かが飛び出した。
「がおー!」
「うわっ!?な、なんだ!?」
「ドッキリ大成功!」
そこにはいつものにへら顔のサーバルが居た。驚いた園長はそのまま固まって居たが、数秒経てばすぐに気を取り直した。
「びっくりするよ、どうしたの?」
「園長、今日予定空いてる?」
……特に何もないな。
園長は空いてると言うとサーバルは嬉しそうな顔をして要件を伝えた。
「じゃあ!今から二時間後にあそこの遊園地の西ゲートに来てね!絶対だよ!」
「ああ!ちょっと待った!」
呼び止めようとしたがサーバルはあっという間に走り去ってしまい、姿はもう見えず、代わりに太陽の光が園長を迎えた。
……今から二時間後、か。
園長はとりあえず行ってみようと考えて用意を始めた。
それから一時間半…
遊園地の西ゲートにやって来た園長は適当な所で待っていた。
暇つぶしにパンフレットなどを読み漁っていると視界の端で遠くから手を振る誰かの姿が見えた。チラリとそちらを見るとサーバルとミライさんがそこにいた。
「おはようございます。随分早いんですね、まだ時間はあるかと思いますが…」
「おはようございます、園長さん。それは園長さんにも言える事ですよ」
ちょっとした挨拶を交わすとサーバルにここで何をするのかを尋ねた。するとサーバルはとても不思議そうな顔をして答えた。
「遊園地ですることなんて一つしかないじゃん!」
「……遊ぶのかい?」
「うん!思いっきり遊ぼ!」
サーバルは笑顔でそう答えてしまった。
園長は困っていた。
今はとても遊んでも楽しめそうになかったからだ。
明日、とても親しい人が居なくなってしまう。その事実は園長の心を締め付けてしまうのだ。
しかし、サーバル達の笑顔を崩すわけにはいかない。ミライさんも、楽しみにしていそうな顔つきである。これらの理由から、園長は笑顔を作って応えた。
「うん!いっぱい遊ぼっか!」
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