第22話 腹ペコせーばる
「カラカル、お腹へった。ジャパまん食べたーい」
「食べたーい!」
「私に言ったって…あ、あそこにラッキービーストが居るわよ」
カラカルが指をさす方向には確かにラッキービーストが居た。頭に籠を載せて、ジャパまんを配っている。
そこへセーバルはとてとて走って行った。
そしてそのまま二つのジャパまんを取り出して、両手に持った。とても幸せそうに笑って飛び跳ねる。まるで幼き子供のように…
サーバルは同じ様にジャパまんを手に取り、お互い顔を見合わせて笑って一口食べる。
そんな二人を呆れた様に、しかし目は細めて、見守るカラカルがそこに居た。
……昨日の夜の事はもう大丈夫そうね。
あの時、カラカルにもセーバルの言葉は届いて居たのだ。急いで見に行った時には既にサーバルが居て、慰めている途中であった。
カラカルは一安心したが結局また心配になってここへ来たのだった。
「私も食べよっかな」
「あっ!ねえねえ!あそこの高い場所のあたりで食べようよ!」
そしてサーバルがそう提案するとセーバルは頷く。そして、眼を瞑ったかと思えば頭の虹色の翼緩やかに広がり、大きな翼となった。
「セーバルが連れて行く」
「相変わらず綺麗…それじゃあお願いするね!」
「大丈夫かしら…?念のために」
カラカルはラッキービーストから三つぐらいのジャパまんを取り出すと、そのままセーバルの口に一つ咥えさせた。そして後の二つを右手で持つと、左手でセーバルの手と繋いだ。サーバルも手を繋ぐ。
セーバルはそれを確認するともう一度静かに眼を閉じる。
身体からサンドスターのような
「いつやっても凄いよ!地面があんなに下に!」
「少し楽しくなって来たわね!」
高いところに浮かび、調子が上がり出す猫二人。セーバルは集中を解かないように慎重に、眼を開いた。
「…あの時より難しい。」
「やっぱりちょっとだけでも力を使っちゃったからかな?」
「そうでしょうね…大半は四神達が担ってくれたとはいえセーバルの負担も無視できるものじゃないはずよ。大丈夫?」
「へーき。それじゃあ行くよ」
もう一度バサリと羽ばたかせ、前へと進んで行く。虹の翼は虹色の軌道を作りながら靄を降り注がせる。その姿まるで妖精のようであった。
「すごい!すごい!もうあの丘まであっという間だよ!」
その言葉通り、言い終わる頃には既に丘の上に浮かんでおり、セーバルはゆっくりと地面へ降りていった。
着陸した途端にセーバルは体勢を崩し、膝をつく。すかさずカラカルはセーバルにジャパまんを食べさせた。
力なくもぐもぐと食べていたが次第に元気が戻り、バクバクと一瞬で食べ終えてしまった。
「ごくんっ、ふぅ…やっぱり疲れる」
「綺麗で便利だけど、よく分からないから注意するのよ?」
「うん」
あの例の異変以来、使えるようになったこの翼。
ある時は友を助け、ある時は逃げる時に役立ち、またある時は……とにかくセーバルは飛べるようになっていたのだった。
しかし一人で飛ぶのはいざ知れず、誰かと一緒にとなると急激にエネルギーを消耗し、ジャパまんを食べなければいけなくなるのだ。
とはいえ例の異変解決以前はここまで消耗することは無かった。
現在は封印で力を少し失っているせいか、エネルギー消費の増大、所有エネルギーの低下などの問題があると思われる。
余談だが、この翼については分かっていないことが多く、カコ博士という優秀な研究者が現在研究中である。
「太陽の光がきもちー!日向ぼっこできるね!」
「そうね、ちょっと昼寝でも…」
「先に食べる」
三人は蒼空の下、緑の丘で並んで座る。
そしてジャパまんを食べていた。
セーバルは先ほど一人で食べた時よりも、味は美味しく感じた。
そして食べた後はゆっくりと寝転んで、暖かな太陽の光をその身に受ける。
すっかり寝てしまっていたサーバルとカラカルの二人に、セーバルはそっと、口を開いた。
「………ありがとう、二人とも。だいすきだよ」
その言葉は誰にも届かずに、ただ雲ひとつない蒼空の彼方へ…
「えへへ、今さら何言ってるの?私もセーバルの事だーいすきだよ!」
「!?」
「ホント、恥ずかしがり屋ね。…私も大好きよ、セーバル」
初めは驚愕した、聞かれてしまっていたのかと恥ずかしくもなった。しかし、それは嬉しさに変わっていった。
例えどんな時であろうとも、必ず自分の言葉を聞いてくれるとても大事な大事な友達。
その存在を改めて、認識したからだ。
だから、セーバルはもう一度口にした。
「ありがとう…!」
空は相変わらず蒼く、どこまでも透き通っている。太陽は遮られる事なく、この地に光を届かせる。緑は小さな風に揺れ、穏やかな日常がここにある。
そんな中、この丘で、猫三人は体をくっつけて、心地好さそうに寝ていた。
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セーバルの日記
きょうは、とってもいいひだったよ。
だって、だいすきなともだちといっしょにジャパまんたべて、ひなたぼっこしてたんたもん。
こんなにちじょう、セーバルだいすき!
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