第9話 帽子にはやはりアレがないと

「待たせたのだ!」


わっはっはと笑いながら帰ってきたアライさんは両手に大きな箱があった。


「これが変装の服?ありがとう!」


「どういたしましてなのだ!」


「……ねえ、サーバル。私の見間違いじゃなければこれは…」


「えへへ、可愛いよね、牛の着ぐるみ」


「いや、知らないわよ!ていうかこれホントに変装できるの!?かえって目立つわよ!」


「安心するのだカラカル。これを着れば一躍人気者なのだ!」


「ダメじゃない!」


「まーまー、それを着てれば揉みくちゃにされてもある程度ガード出来るから便利だよー」


「そんなこと言ったって…!」


「でもねー、もうそれしかないんだ。変装出来そうなヤツは」


「ほらほらカラカル、着ようよ!あ、猫の着ぐるみもあるよ?サルも」


「ホントだー!じゃあ、コレにしようかな!」


「あ、ルルは犬にするんだね!それじゃあ私は狐で!」


「……くっ、背に腹は変えられないわね。とは言え少しでもマシなのを…」


「あ、じゃあこの猫にしなよ!」


「……そうね、それにしとくわ。」


「わたくしは…、この牛にしておきますわ。」


「それじゃあセーバルはサル」


「私は鷲にしとくわ。(同じ鳥だし)」


「うーん、私は既に眼鏡があるからいらないわね。」


「「「「「「…………」」」」」」


「な、なによ…分かったわよ。それじゃあこの豚にするわ。」


「よーしっ!それじゃあ早速着替えよう!」


「部屋を貸すからそこで着替えるのだ。」






〜じゅっぷんご〜






「これでバッチリだね!!」


「はぁ…ホントに着ることになるなんて、暑いし」


「楽しまなきゃダメだよ!カラカル!それじゃあレッツゴー!」


「さっさと行ってさっさと買ってさっさと帰るわよ。」


こうして一行は帽子屋さんへ着ぐるみを着て向かった。

道中、やはり子供達に飛びつかれたりしたものの、着ていなかった時よりはまだマシなほうだった。

そして、ようやく辿り着いた。


「つ、疲れるわ。精神的に」


「うん…あんなに来るとは思わなかったよ」


「休んでる暇などありませんわ。早く帽子を探しますわよ!」


「いらっしゃい、ませ……。」


シロサイの一言でみんなは店内に入り、帽子を探す。

来店してきた七人の着ぐるみ達に店員さんは困惑していた。

店員だけではなく、他の客達も何事かと騒ぎ始めた。中には写真を撮る人もいる。


「さすがにかなり注目されてるわね。」


「スターはもうこりごりなんだけどなぁ…」


「スターじゃなくてただの見世物ね」


「あ、これなんか良いんじゃないかな!」


そう言ってルルは麦わら帽子を指差した。


「夏の間はいいと思うけど冬になるとダメになるんじゃないかしら?」


「そうかな…」


「これ、どう?」


続いてセーバルが指を差したのはカウボーイハット。


「ガイドさんが被るには大きすぎないかしら?」


「それはそれで面白そう。」


ガイドさんが出入りするたびにカウボーイハットが天井に当たり、ポロリと落ちる姿を想像してルルはクスリと笑った。


「やっぱり…ガイドさんにはコレが良いと思う!」


「これって…」


そう言ってサーバルが取り出したのは前回被っていたあの帽子とそっくりであった。


「前と同じ、か…確かに、それで良い気がするわ。」


「ホント?じゃあ、ギンギツネ以外のみんなも賛成?」


「決めるにはまだ早計すぎますわ。まずは一通り全て見ませんと」


「それもそうだね」


そして遂に似合いそうな帽子を見つけることはできず、サーバルの提案が通ることになり、購入した。

帽子にはプレゼント用の取り外し可能なリボンの飾りが付いていた。


「これで大丈夫ね、それじゃあさっさとこの着ぐるみを返して戻るわよ」


「それなんだけど、いや、まずは着ぐるみ返そっか」


そうして一行は再び人の目を集めながらモール内を歩いていく。

子供が飛びついてきたり、写真撮影を頼まれたり、いろいろあったがなんとかアライさんの所まで戻ることが出来た。


「もう着たくないわ…」


「でも全然痛くなかったね!」


「アレに比べればね…それで何か言いたがってたわねサーバル。なにかしら?」


「デデーン!突然ですが問題です!カラカルさん、この帽子には足りない物があります、なんでしょう!」


「いきなり何よ…」


「えへへ、普通に答えるのは簡単だから問題にしてみました♪」


「……羽ね。」


「あ!ギンギツネ言わないでよ!カラカルの困った顔が見たかったのに…」


「ふふ、残念だったわねサーバル。私に仕返ししようなんて100年早いわ!」


「くぅ…(カラカルが寝てる時にトキに歌って貰おうかな…)」


「!?、なにか、ゾッとしたわ。」


「そう?私は良いことが起きそうな気がしたわ。歌が歌えるとか」


「それで、羽がないって、羽も買うってこと?」


「あ!良いこと思いついた!緑の羽根はクジャク、赤の羽根はスザクから貰おうよ!ゴージャスに!」


「あの二人がくれるかしら…?」


「とりあえず土産は買っておきましょうか…またゴネそうだし」


ギンギツネがそう言うとみんなは頷き、モールから出て行って土産になりそうな物を探し始めた。

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