第8話 昔話(後編)…は、置いといて

「それでね、それから…」


ルルが話を続けようとしたその時、大きな女性の声が響き渡る。

全員そちらを向いて、何事かと思うと


「お母さん!」


「大丈夫だった!?……もう、どこ行ってたのよ…。」


かなり疲れた様子の女性が少女を抱き締めた。


「ごめんなさい、お母さん。」


「次からはちゃんと手を握っててね。」


母親と少女は顔を見合わせると大きく笑顔を作り、母親は少女を大事そうに撫でた。

そして、スクリと立ち上がるとサーバル達を見た。


「もしかして、皆さんが私の娘を…?」


「えーっと、うん。そうかな。」


するとすぐに母親は大きく頭を下げた。


「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」


「大丈夫、セーバル達気にしてない。」


「ですが、なにもお礼をしないのは…あ、そうだ。これを」


そして母親はサーバルにある物を手渡す。

それはお金だった。三万円ある。


「え!?だ、大丈夫だよ!お金なんて!」


「しかしこれ以外には…」


「うーん、…そうだ!ねぇ、もしかしてジャパリパークには旅行できてたりするの?」


「え?はい、そうですけど…」


「それなら!」


サーバルは前に躍り出て、親子の片手を掴んだ。


「またパークに遊びに来て!私、待ってるから!」


「!、はい!絶対に行きます!サーバルさん!」


「本当にそれで…?」


「うん!また来てね!」


「はい!それじゃあ、お母さん、さっきまでサーバルさんの昔話きいてたの!一緒に聞こ!」


「あ…うーん、ごめんね、今日はもう帰らなきゃいけないの。」


「え…」


「そろそろ移動しないと飛行機に間に合わないの。ごめんね。」


「あ、ううん!大丈夫!こっちこそ、ごめんなさい…」


「ふふっ、じゃあ、行こっか。本当にありがとうございました。」


「えへへ、また来てねー!お話の続きはその時に!」


「うん!またねー!」


サーバル達と親子は手を振りあいながら別れた。


「ふっふーん!アライさんのおかげなのだ!それで、サーバル達はこの後どうするのだ?」


「あ、そうよサーバル、早く帽子買わないと。」


「そうだね!それじゃあ早速いこ…」


「待った、このまま行けばまたもみくちゃにされるわ。なにか変装が出来るものはないかしら?」


ギンギツネはサーバルを制すとアライさんに尋ねた。するとアライさんは答える。


「フェネック、確かアレがあったのだ。」


「ほー、アレねぇ…確かにアレなら変装に使えるかもねぇ。」


「それじゃあ早速持ってくるから待ってるのだ。」


アライさんはそう言うと奥の方へ入っていった。


「これで何とかなりそうだね」


「でもアレってなにかしら…?」


カラカルは少しの嫌な予感を感じていた。

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