1話 会いたい……

弓月ゆづき 鷺ノ宮病院 502号室にて〜


「今日も独りぼっち。私の大切な人はもうここには居ない。お母様もお父様もお姉様もお兄様もみんなみんな……。」


窓を見つめながら私は涙を落とした。


「こんな寂しい思いをするなら、私も一緒にあの世に行きたかった。なのに……なのに!」


大切な人達はみんな死んでしまったのに、自分だけのうのうと生きているのがたまらなく嫌になり、部屋に置いてあった鋏で手首を何度も切った。切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って切って……………。


「どうしてよ!!!」


私は鋏を投げ出した。どんなに力を入れても、私の腕が傷つくことはなかった。痛みも感じない。いつの間に部屋に入ってきたのか、白衣を着た大人たちが私をみてニコニコ笑っていた。


「どうやら不老不死と言うのは本当の様ですな。しかも怪我もしないとは……。これは研究するのが楽しみですな!」


「しかし、現代にも居たんですね。人魚の血を受け継いだ娘なんて都市伝説だと思ってましたよ。」


「この子が生まれた家庭はなんの変哲も無い普通の家庭だった。母親も父親も兄弟達も特にこれと言った異状はなかったのに、どうしてこの子だけ……。」


私をまるで化け物を見ているかのように蔑んだ目で見ている大人達に腹が立ち、鋏を拾って投げつけた。


「煩い!出て行け!お前ら人間なんかの実験に付き合う気なんかない!もう来るなと言ったでしょ!どうして何度も来るの!ほっといてって言ってるじゃない!」


鋏だけじゃ飽き足らず、近くにあった花瓶や本も投げつけた。


「ヒィ!恐ろしいお嬢さんだ。今日はもう帰るけど、明日も来るから気が変わったらいつでもおじさん達に言うんだよ。」


そう言って逃げる様に白衣を着た大人達は去って行った。


「っ!なに……これ……。」


大人達が去り、我にかえった私は荒れている部屋を見て泣き出した。また私は暴れてしまったのだ。お母様にいつも


「お淑やかに過ごしなさい」


と言われていたのにまた言いつけを破ってしまった。言いつけに従うことの出来ない自分が嫌で仕方なかった。色々な言葉が頭の中に木霊して、胸が苦しくなる。荒れ果てた部屋の中でまるで小さな子供の様にずっと泣き喚いていると、看護師がとんできた。


「何かあったの?話してごらん?」


と看護師に言われたが、とても答える気にはなれず私はただただ泣き喚いていた。

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