第2話マイ フィロソフィ 1−2
—ピンポーン。
「あ、はーい」
僕は呼んでいた小説を閉じて玄関に向かった。
小説と言っても小説といってもこの頃呼んでいたのはライトノベル系のキャラクター小説なのだが、この頃はこういうたぐいのものをよく呼んでいた。ただ、中学の3年頃になってくると僕は重松清とかを読み始めたのだがまあ、それはいいだろう。ちなみに僕には姉と妹がいる3人家族だ。そして、この日本ではありがちな事にこの僕たちは仲が良くない。姉はファンションとか友達の関係ばかり気にする、ちょっと派手目の女性で僕と全く馬が合わなかった。
それに最近は僕は映画とか海外文学に興味を持つようになったし、ゲームをまったくしなくなった。しかし、この当時は当然の事ながら友達など皆無だった。つまり、僕は家の中で完全に孤立していたのだ。
それはともかく、僕には家庭教師の先生がいる。その先生が教える時間が今ぐらいなのだ、だから今チャイムを鳴らしているのはおそらく先生だろう。
—がちゃ。
若い20代ぐらいの男が立っていった。ひょろりとした体格で何か自信なさげな雰囲気(ふんいき)を漂わせている。その人が言った。
「あ、こんにちは笹原君。あがってもいいかな?」
「どうぞ」
やはり。想像していた通り鳴らしていたのは先生、後藤正和だった。
後藤先生は純粋な家庭教師だ。何でも入社したてだとか、そのため昼からはみっちり先生に教えてもらってる。
後藤先生は週五日、僕の家庭教師をしてくれる。
「さて、一樹君。先週の宿題はやったかな?」
「あ、はい」
僕は先週した宿題を提出した。たしか、金曜日したのは世界史と数学なのだ。
「ああ、これね。採点するからちょっとまっててね」
後藤先生が採点を始めた。僕はやる事がないので外でも見ておいた。
街は何も変わる事はなくひたすら流動(りゅうどう)し続けていく。僕はそれを見て自分が一人取り残された気がした。街の人は動き続けているのに自分だけ変わってないと思うのだ。
「よし!採点終わったぞ」
「あ、はい」
それで僕は後藤先生の方にいった。
「笹原君、この問い3が間違っていたし、、問い7や8も……」
「あ、そうですか……」
僕は後藤先生の解答をひたすら聞いた。
僕は今地理の授業を受けている。それが一通り終わったところで後藤先生から休憩がはいった。
「はい、お疲れさん。今から十分休憩をしますからお茶でものんで来なよ」
「…………」
でも、僕は動く気はなかった。代わりにこんな事をいってみた。
「先生………」
「ん?なんだい?」
僕はかねてから言いたい事を先生に言っておきたかった。いや、誰でもいいから言っときたかった。その中で一番近くにいたのが先生だっただけなのだ。
「……先生、僕の将来はどうなるのですか?将来の事を考えると頭がおかしくなります。それほど将来の事が不安でしょうがないんです。それもあるし、この家にいる事自体嫌です。家族がとにかくいやです。ぼくはこれから、どうすればいいんでしょう。将来も不安だし、家族とも折り合いがつかないし、本当にどうすればいいんでしょう」
「はは……」
先生は困ったように笑った。
「まあ、だいじょうぶだと思うよ。この期間がいつまでも続くわけではないと思うから、君は若いからわからないと思うけど生きてればいい事があるよ。だからそんなに考えすぎない方がいいよ」
「はぁ…………」
僕はそういうものかな?と思っていた。しかし、心の中ではまったくそれに納得できなかった。人から言われた事を納得できずに頷いてしまうというのは僕の最高級に悪いところだ。今も、納得できずに頷いてしまって、あとでもっと言っておけばよかった!と後悔ばかりしてる。でもあとで後悔しても遅いのだ。今、瞬間言わなければいけないのだ。しかし、当時はまだ中学生だ。知識や人生経験もなく自分がやってるずるい行為にもある程度許されるだろう。だが、20過ぎてからはそうはいかない。
それはともかく、僕は先生の答えに心底納得できずにまた、勉強を始めた。
僕は今自室にいる。もう日は沈み街は誘惑するかのように鮮やかな光を輝きださせている。
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