狂詩曲:終
椛は、私に手を差し伸べてくれた。
そうだった……。
私には…私達にはいつだって導く者がいた。
それは、鳥使いの少年だったり迷い子だったり。
けれど、今の私にはわかる。
彼等は、私の本の住人ではない。
きっと、同じ人物が書いた物語に住んでいる人ね。
「また、彼が私を導いてくれたんだね」
「…そうね。でも今度は、私達が彼を
まだ眠ったまま椅子に座っている少年に、1度だけ視線を向けると、客席へ向かい言の葉を紡ぐ。
椛と2人、離れない様に手を繋ぎながら。
———
一面の花が咲いた春
数多の星が燃えた夏
貴方と出逢えた
貴女に出逢えた
乾いた荒野に降り注いだ 槍
大地に 注ぐ雨
———
私達の声に反応するように、集った四人の精霊が幻想を魅せてくれる。
そうだよね…。
歌っていうのは、こんなにも楽しい事なんだよね。
あの時、私の紡いだ言の葉は確かに他人の悪意で満ちていたのかもしれない。
けれど、やっと思い出せた気がする。
———
髪も
私の心は乾いたままで
染み付いた
見上げた空と 繋がっているから
空が繋がっているなら
私は貴女の意思を継ぐ
私は貴女の意思を継ぎ
———
繋いでいない方の手を、それぞれ大きく広げると背中が少し重たくなった。
ばさり。
椛の方に視線を向けると、先程までの朱色は白く変色していた。
私も自分の姿を見ると、青色が黒く変色していた。
白と黒…それは
かつて、少女は白を望んだ。
それは、白を無色だと思っていたから。
でも、白と黒は集めるモノが違っただけ。
たくさんの色を集めたら、白にも黒にもなる。
———
希望を胸に眠る冬
嵐の跡に実る秋
私はヒトリ
私は フタリ
草花を踏み潰し生きる
生命を弔い 生きる
私達は
貴方達は
どんなに異物を積み上げたって
太陽に
月に 触れることはできなかった
でも 未来の 私ならできるから
でも 今の 私ならできるはず
空を舞う 貴女と共に
空へ舞い 貴女の元へ
———
2人で顔を見合わせて、少年の元へと飛ぶ。
少年は相変わらず、まだ眠っているみたいだった。
なんて幸せそうな表情で眠っているんだろうか…。
「あなたは運が良い。だって、ずっと此処に居たのでしょう?つまり、まだ彼女から“本”を受け取っていないのだから。」
「それは、また私達に会える可能性があるという事なんだよ」
だからその時は……
「「今度こそ、ずっと一緒にいてね」。」
私達は、ずっと独りで花冠を編んでいるであろう少女に会うために、精霊たちが作った窓から外へと羽ばたいた。
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