狂詩曲:第三幕

 私は1歩、紅い花の群れへ足を踏み入れる。

 すると、じんわりと花の色が白く変化する。

 着ていた服は、椛に似た…けれど違うのは燃えるような青だった。

 天井には星空が広がっている。


 椛と視線を合わせ、『今度は私が謡うよ』と心で語る。

 瞼を閉じて深く息を吸う。

 そして客席の方を向いた。


 ———

 あなたに出逢って 月が笑ったの

『大丈夫』


 愛しい人の声が

 聴こえたはずなのに すぐに埋もれてしまう

 キラリと輝いた希望ほし

 ノイズにかき消された

 だけど


 もしもこの空が

 繋がっているというのなら

 心を込めて 歌うから

 ———


 楽園から逃げて、この場所に辿り着いて…。

 椛の声をずっと聴いていた。

 歌う事が億劫になってしまった私だけれど、椛はずっと歌う事をやめなかった。

 私は鳥になってしまったのかもしれない…。

 ねぇ、椛。

 本の外の世界では、星の数ぐらい音楽で溢れているよ…。

 でもね、それはビジネスだったり名誉だったり色んなものでくすんでいたりするんだ。

 あの時と同じ…でも、さすがに戦争の引き金になるようなことは少ないのかもしれない。

 私も、を歌うなら、恋を想いを紡ぎたかったなぁ…。



 ———導く流星ほしが消える前に 抱きしめて


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