今日はおやすみ
ひと仕事終わって、さくらはベランダに出た。なんだかとってもすがすがしい気分だ。今日は色んなことをした。初めてのことばっかりだった。ドキドキしたけど、楽しかった。
すずしい風が吹いた。さくらの頭の上で、小さな葉っぱと赤い紙がひらひら揺れた。
さくらには、その紙切れが、なんだかとても大切なものに見えた。
そういえば、今日はいつもより色々なことが簡単にできた。両手で上手に物を持てたし、火だってそんなに怖くなかった。それもこれも、全部、あの赤い紙のおかげな気がする。なぜだか分からないけど、さくらはそう思った。
「ありがとう、今日は、すごく楽しかった」
さくらが大きな声で言うと、遠くの空で、二つの星がちかちか光ったような気がした。
さあ、さくらはもうすっかり疲れて眠くなってしまった。
寝る前に、さくらのトイレで用を済ませて、京一郎の布団にもぐりこむ。それからもういちど、京一郎のほおにそっとキスをした。
布団の中で、うつぶせになって目を閉じる。
京一郎は、会社から帰ってくると、必ずさくらの頭をなでてくれる。さくらは京一郎が大好きだけれど、京一郎もさくらのことがきっと大好きなのだ。
なんにもしなくたってそうなのだ。今夜はいっぱいがんばった。だから、明日はたくさんたくさんなでてくれるとうれしいなあ。
目が覚めたら、きっと京一郎は驚くはずだ。さくらは京一郎のびっくりする顔を思い浮かべながら、うとうとと眠りについた。
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