第11話 究極のその先…

エビネスと共にクランプ達とクランプが率いる兵団達を飛空艇クリムゾンイーグルまで送った。

魔剣士クリフォードも使者として同行した。


クリムゾンイーグルが人間の国に向けて飛んで行く。

完全な終戦合意が行われるだろう。


腰に帯びた二本の宝剣がみるみるドラゴンに変わって行く。

ゴールドドラゴン、シルバードラゴン、ブラックドラゴンにダークドラゴン。


あ~。闇の宝剣も二匹のドラゴンだったのか…。


頭にドラゴンの声が聞こえる…。


「さて、勇者よ。もう我々は不要です。すみやかに山に帰り余生を送りたいと思います。よろしいですね?」


「うん。もう大丈夫さ。」


「ではさらばです。」


といって、四頭並んで大空に飛んで行った。


あーあ。終わったな。


「さぁ、グレイブくん。これからどうする?」


「どうするもこうするもないよ。キミのそばにいていいだろう?」


エビネスは大きくため息をついた。


「はぁ~…。しかし、大魔王とは不自由なものであるな。」


「どうして?」


「キャー嬉しい!グレイブくんとずっと一緒にいれるなんてぇ~。…なんて言えんだろ。」


プププ。


オレは腹を抱えて大爆笑した。そして


「ねぇ。」


「ん?」


「手を繋ぐ、腕を組む、肩を抱く、腰を抱く、キスする。で5つの究極魔法が使えるのは分かった。」


と彼女の前で指を折った。


「うむ。」


「その先って…?」


と言うと彼女は顔を赤らめて


「…何を言う…。昼間だぞ?やっぱり、余をそういう目で見ていたな!好色もの!近づくな!」


「いやいや、探求心でサ。もう究極魔法って終わりなのかな?その先はないのかな?」


「知らん。文献や神話ではアウレーカで平和になった。で終了だからな。…でもまぁ、興味はあるな…。」


「ちょっと、試してみたいなぁ~…なんて…。はは。」


「…ふむ…。あくまで魔法研究だぞ?それ以上でも、それ以下でもない。」


「うんうん。それでいいです。」


それから、オレたちは鼻息荒くクリガラを使って足早に大魔王の寝所へ。

服を脱いで、もう発動はしないがライエネスしながら、何度も何度もアウレーカをした。


「じゃ…。」


「うむ…。」


…オレたちは互いに寄り添い合いついに…結ばれた。


そりゃ、今までの傾向からいけば究極魔法が発動するのかとドギマギしていたのは事実だ。

互いの鼓動が感じられるのは、それのせいなのか…。

それとも…エビネスを近くに感じるからなのか…。


しかし…。


「何も起きない…ね…??」


拍子抜け…。はは…。爆発でもするのかと思ったら…。


「なーんだ…よかったぁ~…。どうするの?やめる?」


「…やめる必要もなかろう…。言わせるな…。」


「はは。」


密着を高め、互いに歓びが極みに達する頃、辺りに光があふれて来る。


「んあぁん!?なんだ!奇妙な!真っ白になってく…。」


「んん!…ダメ…。もう止めらんない…。」


二人は陶酔し、やがて目を閉じて行く。

辺りは真っ白になって、次第に闇に包まれて行った…。






神話…。


最初に闇ありき。

次に輝く光ができた。


ふたつは水のように絡まり溶けて大地となった。


やがて大地にたくさんの生命が生まれた。


あるとき、楽園アグロムに男女が来た。

光のものと闇のもの。


二人は仲睦まじく我らの祖となった。



……………。



鳥の声が聞こえる…。

なんだ?城の中に鳥がいるのか?


「あ、あれ…?」


目を覚ますと、オレたちは森の中にいた。


「エビネスは…。なんだ。隣で寝てんのか?ここはどこだろ…。オイ。エビネス。起きろよ。」


「ん…?ああ…?ここは…?」


「わかんない。城の中じゃなさそうだ。」


「グレイブくんの情けない声がこの魔法を発動させたのか…?」


「…情けない声はお互い様だろ…。二人がああしたことによって未知の究極魔法が発動したって考えた方が妥当だろ?」


オレたちは近くに落ちていた服を着て手を繋いで歩き出した。

その時、違和感がなかったんだ。


小鳥のさえずりが木々から聞こえ、やがて森を抜けるとそこには人工物のない緑の大地が広がっていた。


「え?ここってどこ?」


「…わからん。究極魔法の何かも知らん。だがどうやら二足歩行しているのは我々だけのようだな。」


「そうだね…。」


オレたちは眺めていた。

輝く世界を。


いつもまでも飽きもせず。


「あれ?クリガラが使われてない?」


「ん?ホントだ!」


と言って、彼女は腕を組んできた。


「…あ、あれ?」


「チタクックも発動しない…。」


なんでだ?

でも…、まぁもう不要なものだしな。



それから、究極魔法は二度と発動しなかった。

エビネスは


「うん。グレイブくんと生活するならこの方がいい。」


と言っていた。オレも同じ気持ちだった。


他の魔法は失われてなかったので、狩猟とかするのは楽だった。


一年後、エビネスに子供が生まれた。

次の年にまた生んだ。


どんどん、子供を産んで、大きな集落になった。


「ここってどこなのかな?」


「さぁな。まぁ、楽しくて良いじゃないか。」


「うん。そーだね。」


他の人間はどこにいったんだろ?

魔物達はどこにいったんだろ?


ここにはオレたち家族しかいない。


ずっと暖かい気候に、豊かな食物…。

まるで伝説の楽園アグロムみたいだ。


ひょっとしたら、あの時の白く輝いたのは文献にも神話にも書かれていない最後の究極魔法でオレたちに過去から作り直させるって魔法だったのかもしれない。別の星に飛ぶ魔法だったのかもしれない。


でも、そんなのオレたちには関係ない。


エビネスがいる。


オレたちの家族がいる。


そして何より平和だ。


勇者の仕事は終わった。

これからは家族仲良く暮らしてく。


ただそれだけのことさ。



【おしまい】

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二人で究極魔法♡勇者&大魔王 ブーバン @bohban

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