第6話 ドラゴンとの死闘

オレたちは金竜山に向かった。

人跡未踏の地。

大ジャングルだ。


ドラゴンの巣がそこらじゅうにある場所。

しかも、宝剣の守護者(ガーディアン)はゴールドドラゴンとシルバードラゴンか…。


物理攻撃は言わずもがな。

ブレス攻撃はもちろん、魔法だってハイクラスのを使って来る。

長命で体力はとんでもない…。


人間や魔族とも隔絶して、ひっそりとこの地で一族とともに暮らしてる…。


そんなドラゴンがなんで聖なる剣を守ってるの?



オレとエビネスは魔力温存のために飛ぶのをやめて歩き出した。


「ふむ…。そこらじゅう、ドラゴンの眷属だらけだな。怒らせぬようそっとすすもう。」


そうだよ。ひとたび怒れば、こいつらが全部襲って来るってことだろ?


陸、空、水辺…。

あらゆるところに、小型、中型、大型のドラゴンがいる…。


エビネスが空を指差した。


「おい。あれはなんだ?」


「え?」


上空、遥か彼方に空飛ぶ船、飛空艇が飛んでいる。


「クリムゾンイーグルだ!」


「なんだそれは。」


「王国からオレたちに貸し出された飛空艇だよ!今の主人はクランプだ。」


飛空艇は、金竜山を指して飛んで行った。


「くそ…クランプに先を越されるってことか…。」


「オイ。ではフラスカを使って飛んで行こう!」


でも…。あそこまで飛んだら魔力をけっこう消費するぞ。

それでゴールドドラゴンとシルバードラゴンと戦えるのか?


「ここは平地だ。あの森に入る前に飛ぶことにしよう。それまでは節約で…。」


「…。ハイハイ。勇者グレイブくんに従いますよ…。それが戦略なんでしょうから。」


トゲのある言い方…。

オレだってあせってんだよ!

クソぉ…。


広い大草原を越えて、ようやく大森林に差し掛かった。


「ここまでくれば、マジックパワーをかなり温存できたろう。」


「だろうな。では、肩を抱け。」


ゴクリ…。


「それでは…、若輩者で僭越ではございますが…、抱かせて頂きます…。」


「なんだそれは。前口上が長い。早うせい!」


「はい…。」


ギュ!


彼女の肩を抱きよせた。

ふわりと浮き上がるオレたちの体。


目指すは金竜山!


大森林を飛び越え、クランプたちの飛空艇クリムゾンイーグルの停泊場所も通り過ぎ、金竜山へ到着!


「よし!ここまでくればいいだろ。エビネス。マジックパワーは大丈夫?」


「大丈夫だ。グレイブくんはどうだ?」


「うん。オレも大丈夫。でも、ゴールドドラゴンとシルバードラゴンがどれぐらい強いかわからない。気を引き締めて行こう!」


「うむ。」


オレたちは、入り口であろう洞窟に足を踏み入れた。


「ふふ。」


「?」


エビネスが少し笑ったのが気になった。


「どうしたの?」


「ふふ。さっきの気を引き締めて行こう!というセリフなぁ。よくグレイブくんを観察している時に聞いていた。あの頃はバカにしていたが…。」


エビネスはオレの目を見た。


「実際に聞いてみるとなかなかいいものだな。元気が出る。」


「そ、そうか。」


「ふふふふ。」


なんだよ。変なことに感心するもんだなぁ。


洞窟の奥からグギャーという咆哮が聞こえた!

クランプとドラゴンたちが戦ってるんじゃ!?


「行こう!」


「毛頭よりそのつもりだ!」


「ピラトぉー!」


オレは光の呪文を唱えた。洞窟内が明るく照らされた。


「ほぉ。便利なものだ。」


「あざっす!」


オレたちは足場の悪い道を駆けた。


途中、たくさんの兵士の亡骸が転がっていた。


うーん。団体戦を仕掛けたのか!

そーゆー戦術得意だもんな。

でも、相手は最強のドラゴンだぞ?ほとんどやられたってことか。

今までこんなにたくさんの兵士の死体を見たことないや…。


走り抜けると、大きな広間に出た。

天井は高く、奥行きは暗くてどこまであるのか分からないほどだった。


中央ではクランプがゴールドドラゴン相手に大立ち回りをしていた。


ゴールドドラゴンは大きな爪を以ってクランプに振り下ろしていた。


「ぐあ!」


エミリは必死に防御を高める呪文を唱えている。

鼻血までだして。


「ウォルト!さっさと回復魔法だ!早くしろ!」


恐怖に震えているウォルトは我に返り、


「ああ、す、すまん。クリエイド!」


と、上級の回復魔法をかけていた。


エビネスは、妖しく笑った。


「はっはっは。アレが君の座を奪った新勇者さまか!無様だな。仲間も守れず、励ましの言葉すらかけれんのか!どうだ?グレイブくん。彼らが死にゆく様をここで高みの見物と行こうではないか。」


な、なに言ってんだよ…。


「そ、そーゆーわけに行かないだろ?いくらなんでも元仲間が死ぬのを黙ってみてられるか!」


オレは走り出した。もと仲間の元へ。


「サンドラジャベリーーーック!!」


と、オレが叫ぶと、光の槍が何十本もゴールドドラゴンに突き刺さった!


「グギャオ!」


と、一声叫んで、ゴールドドラゴンは飛び上がった。

元仲間たちは気づいて、オレの方を見た。


なんでいるの?って感じの顔だった。

オレはみんなの前に立って叫んだ。


「さぁ!体勢を整えるんだ!」


「お、おう…。」


みんな、武器を構えた。


「ウォルトはエミリを守ってやってくれ。クランプはオレと一緒に剣にて攻撃をする!」


「ああ。」

「ええ。分りました。」


ゴールドドラゴンは滑空してきてブレス攻撃を仕掛けてきた。

今まで味わったことのないブレス攻撃だ!


こいつはやばい!元仲間の前に立ちブレスを和らげる光の呪文を唱えたが、遅かった。

兜は吹き飛んで、髪の毛を全部焼き、顔や体の三分の一は黒く焦げてしまった。


「あぎゃーーー!!!」


オレは叫んでひざをついて倒れ込んでしまった。


それを見計らってか、クランプはゴールドドラゴンの腹に剣をつきたて、引き裂いた。

ゴールドドラゴンは、地面に倒れ動かなくなった。


そして、オレも…火傷のヒドさに起き上がることが出来なかった。

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