隠居が通る11 知らなかったのかと聞くといえまったく、知りませんでした、そのような者を隆久殿の正室にやってしまったとは、隆久殿に頼まれまして、それがしには女子の子がいま


隠居が通る11


知らなかったのかと聞くといえまったく、知りませんでした、そのような者を隆久殿の正室にやってしまったとは、隆久殿に頼まれまして、それがしには女子の子がいませんでしたの、

で戸田の娘を養女にして嫁がせたのです、母上に知れればそれがしに切腹せよと言うでしょう、お役ごめんを願い出て、自害しますると言うので、それはならん、お峰を乱行過ぎると、

して隆久と離別させ、


戸田には適当な理由をつけて隠居させよ、そなたはお構いなしとする、この事はくれぐれも春日の局には内密だぞ、処分は正直が戻ってからにせよ、2人には内々に伝えよ、逆恨みし、

て正直を亡き者にしょう等の不届きな所業は慎むのだと言うと、承知致しましたと言ったのです、正俊は屋敷に戻り用人の戸田を呼び、何と言うへまをしたのだ上様は全てご存知だぞ、


シラを切ってきたが参ったなと言うと、正直が帰ってきてから仕置きすると言うておられたが、わしにはお構いなしにすると言う事だ、春日の局の息子には手が出せないのさ、やはり、

刺客をおくりますかと言うので、仕方あるまい、但し刺客だと分かるのはダメだ、偶然に野党かただの剣客の勝負にするのだ、誰かに頼まれたと知れれば、直ぐにわしだと気づくだろ、

うと言うと、


承知しました絶対に口は割らないよう因果を含め、もし発覚しそうになったら始末します、証拠がなければどうしょうもないでしょうと言ったのです、正直さえいいなくなれば、正春、

を始末してこの手に幕閣が握ぎれるぞ、お峰には隆久を煽って放蕩するように仕向さけろ、そうだ奴は女癖が悪いので、手の者に町女をかどわかし隆久に手籠めにさせて殺して堀川に、

投げ込むのだ、


隆久の印籠を手に握らせておけば言い逃れはできまい、それで改易できるぞ、さすればわしが改易しょうとした事は間違いなかった事になる、お峰は離別させて又違う大名に嫁がせれ、

ば良いと言ったのです、お峰が早くわしの子を宿さないからこうなったのだ、懐妊すれば佐土原藩はわしの物になったものおと言うと、お菊の方の始末はどおしますかと戸田が聞くと、

中浦藩に匿われているなら手は出せないだろう、


ほうつて置け、その前に佐土原藩は改易にすれば良い、正直が江戸に帰りつくまでに事は運ばねばならん、行く先々で騒動を起こし早く始末するのだ、江戸入りはさせるなと指図した、

のです、正直達一向は佐土原を立ち高鍋をへて豊後との国境の峠にさしかかつていたのです、ばあさんに、元気でなによりだと言うと、中浦の殿様も元気そうで、今日はお供は少ない、

がと言うので、


隠居の身なればゆるりと江戸まで行くのだと言い、茶とダンゴを貰い握り飯を食べてたのです、馬引きはいないのかと聞くと、もうじきくるだよと言うと、峠の下から男が馬を引いて、

登って来たのです、熊蔵を見て、これは佐伯殿お久しゅう御座ると言うので、おう片柳殿か元気でござるかと聞くと、相変わらず馬引きと鳥撃ちに御座ると言うと、熊蔵が中浦の大殿、

に御座ると紹介すると、


片柳源八に御座いますと言うので、正直じあ熊造の知り合いかと聞くと、元小枝家の家臣にございますと言ったので、なぜ中浦に仕官しなかったのだと聞くと、倅れ源之進が夏正様の、

馬回り役として江戸詰めしております、私めは鳥撃ち等の暮らしがおうておりますゆえ、佐伯殿の小屋を譲りうけまして、そこで猟などして暮らしおりますと言ったのです、それでは、

そなたの馬にのってやろうと言うと、


ありがとう御座りますというので、源八の連れて来た馬に乗り、この馬も太郎かと聞くとさようで御座ります、これで3代目にござりますと言ったのです、馬に乗り峠を下って行くと、

家が見えて来たので馬を下りると、あばら家なれど茶など飲んで休んでくだされと言うので、中に入ると片柳の妻にてさよと申します、このようなあばら家にようこそおいでなされ、

ました、


お上がりくださりませと言うので、いろりの傍に上がると熊造がみんなを紹介したのです、いろりを囲むとゆのみに酒を注ぐので飲み干してなぜ倅の所にいかないのだ、風田には屋敷、

はあるのだろうと聞くと、源八がハイ主家が滅びまして佐伯殿と同じに、猟師を長年しておりまして宮使いを忘れたので御座います、さそいを受けたのでございますが、倅だけをお頼、

いしたのですと言うので、


源八はそれでよかろうが、妻女は辛かろうと言うと、いいえ、この暮らしも楽しゅうございます、倅からは時々便りも来まして、元気にやっているそうです、それにここは温泉もあり、

ますし、獲物も沢山取れますので不自由はしませぬ、倅が時々仕送りもしてくれていますと言ったのです、そうかそれなら楽にくらせるであろうと言ったのです、熊造が今日は庄屋の、

所に逗留する事になっていますと言うので、


そうか二人とも夕餉を一緒に囲むとしよう後で参れというと、もつたいない事です、イワナ、キジ、猪肉など持参いたしますると言うので、それは馳走じあなあ、それでは温泉にでも、

入ってくるぞ、おみな行くぞと連れだって下の川の温泉に行ったのです、2人で湯に入り気持ちいいのおと言うと、ほんに気持ちいいですね、これではここを離れなれなくなりますと、

みなが言ったのです、


温泉につかりあがってきて熊造お前達も入って来いというと、2人は温泉に行ったのです、源八が酒を湯のみに注ぐので飲み干し、温泉の後の一杯はたまらんと言うと、さよが倅の便、

りの通り、大殿様は気さくな方にござりますなあと喜んでいたのです、イワナ、キジ、猪は庄屋に届けておきましたゆえ、夕餉に出してくれるそうですと言うので、そうかそれは楽し、

みじあと言ったのです、


みんなが上がって来たのでそれでは行くぞというと、みなが二分銀を二枚源八に馬と酒代じあと渡すと、要りませぬと言うので、正直がここを通る時の仕来たりじあ取っておけという、

と、ありがとう御座りますと受け取ったのです、みんなで庄屋の内に行くと門前で平伏するので、これ、これそのような事はせんでもよいと立ちあがらせると、庄屋が座敷に案内した、

ので、


みな元気でなによりじあと言うと、大殿様が最初におみえになってもう30年以上経ちました、月日の経つのは早いものですというので、そうじあなあ此処から大阪に出たのであったな、

熊造ともその時からの付き合いじあなと言うと、あの時はまだ20の若様で御座いました、それが90万石の大大名にご出世されたのですからそれがしは嬉しゅう御座ると言うのでお前達、

のお陰じあと言ったのです、


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