第4話 他人の道案内は信じるな

「すみませーん」

玄関で上履きに履き替えながら、事務室の方へ声をかける。…返事がない。

勝手に開けようとしてみたが、鍵がかかっていて無駄に終わった。

なんでだ。土曜日だから休みとか?……いやいや、だったらボランティア募集なんかしないだろう。

このまま進んでみるべきか、もうこのまま帰ってしまうか。いや、せっかくここまで来て帰っては何しに来たのか分からなくなってしまう。帰るべきか、帰らざるべきか。真剣に迷っていると、玄関のドアが開いた。


「……だれ?」


救世主、いや、天使が現れた!白銀のストレートヘア、白い肌に薔薇色の頬、ぱっちりとした青い目。RPGの天使みたいな子が、小首を傾げてこちらを見ている。


「えっと、俺は優斗。今日ここの老人ホームのお手伝いに来たんだけど、誰か大人の人見なかった?」

「……老人ホーム?」


ぱちぱちとまばたきして、彼女は怪訝そうに言った。


「老人ホームじゃないよ。」

「え!?ここ、老人ホームヒカリヤじゃないの?」

「うん。お爺さんお婆さんなんていないよ。ここは、私たちの学校。」


いったい何がどうなっているんだ。


……とりあえず、爺さんの道案内なんて信じるんじゃなかった。

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