第3話 まさかの迷子

俺は普段からもっと外出しておくべきだった。

…ここどこ。なんで林?この辺りはハゲの爺さんがやってる美容室じゃなかったっけか。

こういう時に限って、スマホは通信制限。今やっとマップの真ん中付近だけ表示され始めた。

ガチャイベントがせめて昨日じゃなくて今日だったらなあ。全力注いじゃったからなあ。


しかし俺の日頃の行いが良かったかな。向かいから爺さんが歩いてきた。


「すみません。『老人ホームヒカリヤ』ってところに行きたいんですけど、場所がどこか知りませんか?」

「はい?」


耳に手をあてて聞き返してきた。耳が遠いようだ。


「あの、『ヒカリヤ』って建物、どこですか」


なるべく短く、出し慣れない大きな声で伝えると、爺さんはうん、うんと頷いた。


「そこの林んとこの、小さい道をまっすぐ行けば着くはずだなあ~」


どうやらそんなに間違ってはいなかったようだ。むしろ結構時間が余るかもしれない。

爺さんに礼をして、進んでいくと、逆光で見えにくいが、確かに「特別…養護…ヒカリヤ」と書いてある看板が見えた。木の影になっていてところどころ隠れているが、もうちょっとで着きそうだ。

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