第2話 魔導書

 くろくもおおわれたそらとどろいている。

 理事長りじちょうは、そっと、おれあしうえいていた自分じぶんあしをおろす。

 かたちからをスっーとくかのように深呼吸しんこきゅうをして、理事長席りじちょうせきもどっていく。

 おれは、理事長りじちょうおそろしさををもってったのだ。

「ついてきなさい」

 そういうと、理事長席りじちょうせきいてあったリモコンをにして、よこにあった本棚ほんだなけてボタンをす。

 すると、本棚ほんだなりょうサイドに自動じどうひらいていく。

「こ、これはなんですか?」

理事長りじちょう一部いちぶ関係者かんけいしゃしからない秘密ひみつ研究所ラボよ」

 つめたい視線しせんおれおくりつつう。

 理事長りじちょうは、それだけつたえると、秘密ひみつ研究所ラボおくすすんでいく。

 おれも、われるがままに理事長りじちょうあとった。

 そして、おれがその研究所ラボへの入口いりぐちあしれて数秒後すうびょうごに、本棚ほんだなまった。

 おれは、理事長りじちょう見失みうしなわないように、あとについた。

 それにしても、薄暗うすぐらくて不気味ぶきみ場所ばしょだ。

 しばらくあるいていると、理事長りじちょうきゅうあしめる。

「ど、どうしたんですか?」

「ここよ、、、今からあなたには魔導書グリモアール強制きょうせい戒禁かいごんさせます。ぬこともあります」

「し、死ぬ!?」

「嘘よ………」

「冗談か、」

 ホッとしたような、すこ不安ふあん気持きもちもある。

 魔導書グリモアール戒禁かいごん本来ほんらい天使エンジェルこえこた戒禁かいごんするのだが、おれには天使エンジェル記憶きおくがない。

「あ、あの、魔導書グリモアール戒禁かいごんしたらなにわるんでしょうか」

 おれは、そこまでして魔導書グリモアール必要ひつようなのかわからなかった。

 単純たんじゅんなことだとおもうけど、いておかなければいけないことでもある。

魔導書グリモアール戒禁かいごんすることで、ちかられることができるのよ」

 物静ものしずかな、こんなところでなにをしようとしているのか、理事長りじちょうかんがえてることが何一なにひとつわからなかった。

ちかられて、おれたちは、この学園がくえんなに目的もくてきなんですか!?」

 理事長りじちょうおれ背中せなかけてるが、それでもつたわるあきれたかんじがした。

人生じんせいよ」

 その言葉ことばには、おもたい理事長りじちょう、いやみんなのおもいがかんじられた。

 理事長りじちょうはさらにあしすすめだす。

 おれもそのあとう。

 すると、あかりがともる。

 あかりのおくには、おおきなおおきな、もんのようなものがそびつ。

 おれおおきくつばんだ。

 おおきくそびもんまえで、理事長りじちょうあしめて、ゆっくりおれほうを見る。

 そして、くちひらく。

準備じゅんびはいい?」

準備じゅんび……」

こころ準備じゅんびのことよ」

 理事長りじちょうおれのことをにかけてくれてるが、それよりもいまからなにこるのかをりたかった。

 理事長りじちょうは、もんほうへ、き、もんひらく。

 徐々じょじょに、ゆっくりとひらいていく。

 ゆっくりひらもんが、三割さんわりひらいたところで一度いちどまる。

 そのまま、ひらきつづけ、完全かんぜんもんひらききると、理事長りじちょうは、おれほうう。

「ここからは、一人ひとりよ。なかはいれば、中央ちゅうおう魔法陣まほうじんいてある。そこにってれば、こえこえるから、それにこたえればいいわ」

 そういうと、理事長りじちょうおれうしろにまわる。

 おれこわくなってきた。

 えみかべることのできないくらいに、元気げんきうしなわれていく気分きぶんだ。

 ここまできたからには、はらくくるしかなかった。

 おれは、理事長りじちょう指示しじどおりに、魔法陣まほうじんうえった。

「あ、そういえば、天使の指輪エンジェルリング理事長りじちょうわたしたままだ〜」

 おれ不安ふあん本当ほんとう的中てきちゅうしたかのように、さらに不安ふあんせてきた。

 なにきる気配けはいがない。

 そして、もうすこってみると、ひらいてたはずのもんまりだす。

「お、おいおいおい、、、大丈夫だいじょうぶかこれ」

 そして、完全かんぜんもんまりきった。

市ヶ谷冬馬いちがやとうまおおきくなったな」

 ビクッとした。

 どこからかてんからこえこえるかのように、この部屋へやひびく。

「だ、だれ?」

冬馬とうまわれわすれてしまったのか、、、それは仕方しかたあるまいな」

 でも、かすかにおぼえのあるこえではある。

 すると、おれまえに、その姿すがたがあらわになる。

 しろっぽくもあれば、すこし、赤身あかみびたかんじで、はねがある。

 おそらく、理事長りじちょうっていた、これがおれ天使エンジェルだろう。

冬馬とうま、まずは二人ふたり魔導書グリモアールくのだ」

「う、うん」

われらの戒禁かいごんは、真実しんじつだ。この戒禁かいごんまえでは嘘偽うそいつわりはゆるされない」

 天使エンジェルは、そういって淡々たんたん戒禁かいごん儀式ぎしきすすめる。

 魔導書グリモアール……おれたち天使エンジェル使つかいとしてなくてはならないもの、それがいままえきていることなのだ。

冬馬とうま…いつかこの戒禁かいごんはきっとやくにたつ。そして、冬馬とうまがこの学園がくえんをいや、魔導書グリモアール支配しはいしたときねがいはきっとかなうだろう」

 天使エンジェル言葉ことばは、真実身しんじつみびて、こころさるようなかんじがした。




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