さようなら全てのエヴァンゲリオン~庵野秀明の1214日~

番組名:さようなら全てのエヴァンゲリオン~庵野秀明の1214日~

放送日:2021年4月29日(BS1)


こんな人にオススメ:

・庵野監督に興味がある人

・特別興味があると言うほどではないけどどんな人か気になる人

・エヴァの旧劇場版やテレビ版を全部見たいというわけではないし新劇場版見てないけどせっかくシン・エヴァやってるから予備知識と言うほどではないが前情報を少し入れたい人

・庵野監督のファン

・困っている鶴巻さんの顔を見たい人(プロフェッショナルにしろ)


こんな人にはお勧めしない:

・庵野監督の濃密な信者とアンチ

・シンエヴァ見る前に情報は一切入れたくない人

・監督の人柄に興味がないもしくは見たくない人

・監督に振り回されているスタッフ陣を見たくない人

・安野モヨコ氏(監督の奥様)のアンチ


* * *


私はショパンの夜想曲第2番 変ホ長調 Op. 9, No. 2を聞くと

(曲名を覚えていなくても検索して聴いてみるとわかると思う)

街の中をさまよい歩いているイメージが沸く。


もっと具体的にするなら、


夜の8時から数分前の、

店のシャッターが下り始めた名駅か栄の地下街を

少し焦りぎみの速足で歩いている。

だけども

帰りを急いでいるわけではなく

ただとにかく何かに対して焦燥感を覚えながら歩いている。



そんなありえない過去の自分を思い浮かべる。

曲からのイメージがほぼラブ&ポップの特番(1998年)の見すぎである。


* * *


『プロフェッショナル 仕事の流儀』は?とお思いのみなさんへ:

他の人の回を全く知らないので書けません。以上。

同様の理由でネコメンタリーの通常版も最低でも一年は書けないでしょう。


* * *


大雑把な違いをまず挙げる。


プロフェッショナル庵野回は監督の仕事として制作現場を追っていたが

こちらは完全に映画の特番である。

番組自体75分から50分が2本と長くなり、

同じ場面でももうすこし前後が見られたりする。

インタビューもあのアニメーター板野氏や

ジブリの鈴木敏夫氏が追加されている。




場面の出てくる順番や前後のあるなし、ナレーションの有無で、

同じ映像なのに急に意味深になる場面もある。

もちろん一か月分の様々な発表やネタバレ解禁などの情報の変化による

見え方の違いもあるだろう。

さらに、こちらはナレーションがないので

カメラやディレクター氏の目線がプロフェッショナルより薄い。

先にあちらを見てしまった人がフラットに見るのは難しいが、

両方見てない人にこちらを先に見て感想を聞きたいと思ってしまう。




そして前後のシーンがある分、例えば

シンジの声優である緒方恵美氏はほかのキャストやスタッフなどと目線が違うと

プロフェッショナルの時に個人的に思ったのだが

後ろの一言で

目線というより立ち位置が違うなーと思わされた。

監督から見て緒方氏の立ち位置が実際に他の人と比べどうなのかは知らない。




個人的に好きな場面のひとつは、電柱について語るシーンである。

なぜプロフェッショナルではなくこっちに入れたんだと一瞬思ってしまうが

エヴァってテレビ版からずっと、結構電柱が映る。

監督のトークにかぶせられていた映像の、

特に初号機が電柱に挟まれた道を夕日の中歩いている映像なんか、

他の人だったら電柱の本数減らしたり、

アングルで電線があまり入らないようにしたりすると思うんです。


だが庵野監督だからこそ電柱も超目立つ画面にする……。


電柱好きな人は式日もイイデスヨ……

見た後デジカメ持って自宅や会社や出かけた先でうろうろして電柱と線路撮る謎の人と化した。




二つ目は学校で特別授業の講師をしているシーンである。

2017年10月だそうで、いつエヴァ終わるの?的な質問をされて

いま作ってるけどまだ言えない

という返事をしている監督。

色んな意味で…………完成や公開がいつなのかなんて答えられるわけがない。

事情を知らなければ仕事上のひみつだしー、と社会人的解釈のみで納得してもよいし

分かるわけねーだろXXXX(ピー音)なんだからよォ!!

と思う人が多いかもしれない。

そしてサインに書かれたキング(ナディアに出てきた仔ライオン)が可愛い。


* * *


プロフェッショナルで好評だった(?)シーンもある。

合宿中の暴風雨(インサートに使えるよ)とか、

アヤナミの声のまま「うん」と返事をする林原氏とか、

メカ担当の山下氏の夢の話とか

モヨコ氏のズッキーニの話とかである。


ズッキーニの話は

監督知らない人が知らないおじさんのエピソードとして聴いても

充分に面白いと思う。

なんだかんだ、初見のものを食べるのって勇気がいる。

関係ないが個人的にはズッキーニは

自分の好みの炒め物に入れるとうまいという文脈で知ったため

初めての時でも抵抗はなかった。

カボチャの皮をまとった胡瓜くらいにしか思えなかった。

カボチャや胡瓜の畑も知っているし、

苗や花が似ているから初めから想像がついていたからだろう。


* * *


監督の作品の作り方は、個人的にはモザイクアートだと感じた。

通常のアニメや映画の製作が

完成図があり、合うピースをはめてジグソーパズルのように作るのだとしたら、

この場合

完成図はあっても完成品そのままではないし、

大量に集めた素材から使えそうなものや合いそうなものを選んでピースにする。

そしてそれが嚙み合っても、

他と合わなかったり、もっといいものがあれば

没になる。


確かに、どうなるかは分からないが、

出来上がった作品を最初に見たときに、きっと制作側もわくわくするんだろうと思う。

製作中は地獄ではあるが。


* * *


監督の故郷・宇部市については『式日』の撮影場所だなということしか知らない。

私の親父は若い頃にバイクで日本中走り回ったことがあるヤツなので

私がシン・エヴァを見た後のあるときに、


「山口の宇部ってところに行ったことある?」「何かある?」


と私は尋ねた。造船所があるところだと親父は答えた。

それをツイッターでつぶやいたところ、

フォロワーさんの一人がリプライをくださって、そのままその人と話をした。

(その人も山口出身だとそこで知った)


* * *


父親の片足とロボ絵の話は悲しさもある一方、

なるほど、というか

理由を知ったことで単なる負傷描写だけでなく

意識的に欠けた状態を描いているんだろうな、という感想を抱いた。


欠けたものこそ美しいと思ったことは私にはないが

今年に入ってからツイッターで見た、ダメージ画像のタグで上がってる

負傷メカ画像はかなりぐっと来てしまったので

ネットスラング的な意味での『性癖』に引っかかる可能性はある。


ささる原因に心当たりがあり過ぎてしんどい。

もちろんその中の一つにナディアの最終回が入ってるのだろう。


* * *


プロフェッショナルの時にはいちばん最初に流れた全力疾走の映像に

テレビ版エヴァ主題歌の残酷な天使のテーゼを流して締め、

あの太い明朝体ででっかく



と表示して終わるというところに、番組制作側の心意気というか、

売られた喧嘩を買いましたお返しだ(ドーン!!

という印象を受けた。


プロフェッショナルという言葉が嫌いであると言われてしまった制作側が

全力全開でアンサーをぶつけたのだ、と

そんな風に思った。

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