アスカ退魔録
身に纏うのは、とある国のとある世界では一般的であったセーラー服と呼ばれるそれに似た服。
長い黒髪は何処か青っぽい艶があり、切れ長の瞳は気の強さを示しているようだ。
美しくも苛烈さを感じさせるその風貌は美少女と呼ばれるには相応しいが、何より特徴的なのはその手に持った七支刀だろう。
青い浄化の光を放つそれは油断なく構えられ、ドーマを見据える瞳には一切の親愛の類は感じられない。
立花明日香。OVA「アスカ対魔録」においてそう名付けられていた少女は風にその黒髪を揺らし、アルフレッドとヒルダを庇うようにドーマと睨み合う。
「……大体の事情は分かってるわ。道摩法師のクソジジイは私が抑えとくから、貴方はその子を助けてあげて」
「ああ」
短く頷き合うと、明日香はスカートのポケットから無数の符を片手で取り出し投げる。
すると符はまるで生き物か何かであるかのように飛翔しアンデッド達へと張り付く。
「爆!」
その言葉と同時に符の張り付いたアンデッドが近くのアンデッドを巻き込んで爆発し、それを合図に明日香はドーマへ向かって走り出す。
「爆炎符……その大雑把な術式、正しく立花の小娘! 先程の術式……あれが召喚の術式だったとでもいうつもりか!」
「説明してあげる義理はないわ! 外法退散・護法陣!」
「なめるなああああ! 六道呪法陣!」
明日香の描いた五芒星とドーマの描いた六芒星が空中で輝きとなってぶつかり合い、その隙を狙うよう符が乱れ飛ぶ。
その二人の激闘の中、アルフレッドはヒルダの前に膝をつき抱き上げる。
倒れたヒルダの中には恐らく、まだドーマの式神とやらがいるのだろう。
傷は先程放出した魔力がある程度塞いではいるようだが、それ以外の問題が大きすぎる。
ドーマの式神をどうにかしなければ、治せたところで繰り返しになるだけだ。
ならば、どうするか。
その答えは……アルフレッドの中で叫ぶ力が持っている。
「……
アルフレッドの額に大きめのサークレットが現れる。
額の部分に赤く大きな「目」を思わせる宝石がついているのが印象的で、材質不明の装飾部分も含め抗いがたい何かを感じるようなソレは今……強い魔力の輝きを「目」に宿している。
その輝く目が、ヒルダを捉える。
アルフレッドは第三の目を透視能力や知覚を補完する目として使っていたが、第三の目は本来はそういうものではない。
数々の知覚能力は第三の目にとって、たった一つの能力を補完する為の補助的なものに過ぎない。
その能力とは「見えぬものを見通し触れ得ぬものに触れる」力。
OVA「幻夢ハンター」の世界において、数々の呪いや悪霊といったものに対抗した力。
そう、すなわち。
「第三の目よ……ヒルダの中に居座るものを祓え!」
アルフレッドの魔力を力に変え、第三の目がその真の力を発揮する。
輝ける第三の目がヒルダに絡みつく「式神」を可視化し、触れ得ぬ無形の力から形持つモノへと堕とす。
それはアルフレッドの剣によってバラバラに切断され、断末魔の悲鳴をあげながら消えていく。
「……まだだ。
アルフレッドの剣は青く大きな宝石のついた丸みを帯びた杖へと変化し、魔力を受けて輝き始める。
「杖よ……ヒルダを癒してくれ!」
―ヒーリング―
杖から声が響き、同時に優しい光が溢れ出しヒルダを包む。
目に見える場所、見えない場所……ドーマの式神の憑依により傷ついていたヒルダの魂をも癒し、やがてヒルダから「うう……」という呻き声が聞こえ始める。
そしてヒルダはアルフレッドの腕の中でゆっくりと目を開き「うひゃっ」と色気の欠片もない声をあげる。
「え、え!? どういう状況!? 確か変なジジイが出てきて……え、なんか凄い音してるけど、うおえっ!?」
「……よかった」
アルフレッドに抱きしめられ目を白黒させていたヒルダだが、アルフレッドがその身を離す頃には何がなんだか分からないままに顔を真っ赤に染めてしまっている。
「えっと……えー?」
「すまないが、下がっていてくれ。すぐに決着をつけてくる」
そう告げられてヒルダは「えーと……うん?」と呟くが……次の瞬間、爆音と共に飛んできた一人の少女を見てその思考を一気に覚醒させる。
「うえ、だ、誰!?」
「ちょっと! ラブコメしてる暇あんなら手伝ってよ! あのジジイ、私の記憶より強いんだけど!」
「立花ァァァァ!」
「うわ来た!」
「杖よ、攻撃だ!」
―ファイアミサイル―
スタッフオブノアから無数の炎の矢が射出されドーマを吹き飛ばすと、アルフレッドは杖を元の剣に戻す。
スタッフオブノアは便利ではあるが、この局面では適当ではない。
「
そうして現れた七支刀を目にして、明日香はニヤリと笑う。
「……それが女神様に授けられた「私」の力ってわけだ」
「ああ。君にとっては本意ではないだろうが……」
「いいよ。分かってんでしょ、「私」はまだ動けない。それより……やるよ! あのジジイを冥界に叩っ込む!」
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