輝ける七支刀
七支刀。
それはOVA「アスカ退魔録」における、主人公「立花明日香」の振るった武器。
裏陰陽寮を名乗る敵と戦った彼女の七支刀は今アルフレッドの手の中にあり、アンデッドを切り裂いている。
一撃でアンデッドを滅ぼす七支刀ではあるが、この森の今の状況ではそれでどうにか対処できている……という状況だ。
元戦場というわけでもないだろうに、次から次へと湧き出るアンデッド達。
いや……その謎はすでに解けている。
アルフレッドの七支刀の切り裂いたアンデッドが、死体ではなく土塊となって地面に落ちる。
死体が動くアンデッドではなく、通常のアンデッドよりも動きの速いソレの正体が何であろうと、似たような何かであるのは確実。
故に、アルフレッドはその一切を容赦なく切り裂いて。
『七支刀か……まさか、その剣を再び見るとは思わなんだ』
「ドーマか……!」
聞こえてきた声に、アルフレッドは周囲を見回すが、何処にもドーマの姿はない。
第三の目の力を使えばドーマの式神が何処に居るのかは分かるだろうが……元より虚像。
探したところで大した意味もないだろう。
『じゃが、お主が立花の縁者とも思えん……あの馬もそうじゃ、現世のものとは思えぬ。幽世より来るモノか? ああ、興味深い。興味深いのう。もはや儂の興味を引く神秘など現世にはないと思っておったが、本当にこの世界は興味深い!』
「……」
この世界、とドーマは言った。ならばやはり、ドーマもまたこの世界の者ではないのだとアルフレッドは悟る。
「ドーマ……お前は、この世界のものではないのだな」
『くくくっ、そういう風に聞こえたかのう? そういう風に聞こえるなど、お主自身がそうではないとも聞こえるぞ?』
それに答える気はない。
次から次へと現れるアンデッドを切り裂き、アルフレッドは森の奥へと進んでいく。
『それにしても、迷うこともないか。そのアーティファクトの力なのであろうが……便利なものよのう』
第三の目があれば、魔力の痕跡を探すこともできる。
ドーマの魔力に満ちたこの場ではドーマ自身を探すことは難しいが、ヒルダを探すことは出来る。
……もっとも、それをわざわざ答えてやる必要もない。
無言でアンデッド達を切り裂き進むアルフレッドに、ドーマのつまらなそうな声が聞こえてくる。
『つまらん男だのう。ああ、実につまらん。娘を殺して死体傀儡にでもしてやれば多少は』
「ドーマ」
第三の目の能力を発動したアルフレッドが、ドーマの式神をその目で捉える。
暗い森の中に潜む羽虫を……その先にいるドーマを凝視し、アルフレッドは宣言する。
「そんな事をやってみろ……俺は、この森ごとお前を吹き飛ばす」
『カカカッ! それは怖いのう! ならば儂が退屈する前に辿り着くがよい!』
ドーマの気配が消え、アルフレッドの眼前に無数のアンデッドが地面から現れる。
犬、人、熊、何の生物かも分からぬ怪物達。
無数のアンデッドの群れに向けて、アルフレッドは七支刀を片手に構え突っ込んでいく。
七支刀はアンデッドに対して高い優位性を持つ剣ではあるが、多数の敵相手には向いていない。
故に、この場面ではたとえば広範囲攻撃を持つヴェガの剣のようなものを使う方が有利。
だが、アルフレッドはそうしない。
あのドーマを見た時から猛る力が……七支刀が、自分を使えと叫んでいるからだ。
アルフレッドの怒りに呼応するようにその力を増していく七支刀は激しく、強く輝く。
触れるだけでアンデッド達をその大小に関わらず土塊へと変え、アルフレッドは走り……気付く。
「この先は、確か……」
覚えている。
この先にあるのは、あの盗賊達のアジト。
ビオレを助け出した、あの場所だ。
そうして抜け出た場所。盗賊達が勝手に切り開いたが故に日の光の差し込むその場所に……影が差して。
巨大な拳が、振り下ろされた。一瞬早く躱したアルフレッドの居た場所を襲ったその拳の持ち主は……一言で言えば巨人。
その巨大な身体に無数の顔を張り付け、破城槌が玩具に見えるような異常に太く大きな腕を持つ巨人。
不浄な気配を漂わせたそれも恐らくはアンデッド。だが、ここに来るまでに屠ってきたアンデッドとは何かが違う。
「とっておきというわけか……!」
七支刀を構えるアルフレッドに、巨人が再びその拳を振り下ろす。
地面を砕かんという勢いのそれをアルフレッドは回避し、逆に七支刀を叩き付ける。
……だが、七支刀はこれまでのように相手を屠る事なく弾かれる。
その感触にアルフレッドが違和感を覚えたその瞬間、再びドーマの声が響く。
『く、はははは! お主がその七支刀を持っていると知って対策しないと思うてか!』
「……アンデッドではない、ということか」
『おうおう、アンデッドというのは此方での言い方じゃったの。その流儀で言うのであれば、それはゴーレムよ。儂の死霊術との融合……お主で試させてもらおうかの』
それを聞いたその瞬間、アルフレッドは振るわれる拳を避けながら七支刀を元の剣へと戻す。
アンデッドではない。ならば、ここで使うべきなのは七支刀ではない。
使うべき、力は。
「
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