28日目 間合いの壁
教習に来たアナタを・・・
「「よく来たな勇者候補よ! キサマをここで血祭りにしてくれるわ!」」
謎の人物達が取り囲んだ。と言うか女神達だった
「・・・・・」
「何事かって? 今回は多人数との戦闘の教習にしようかと思いまして、ちょっと分身してみました」
女神は基本何でもありな様だ
「・・・・・」
「じゃあまず、一人づつ対処する為に間合いの壁を覚えましょう。さあ棒を持って」
「・・・?」
「壁って何? 例えば相手に武器を真っ直ぐ構えられると、その武器の先より前に踏み込み難いですよね? 攻撃されちゃいますから。それが目に見える武器の切先が生む間合いの壁です。分かり易い様に簡単な図を用意しました。●がアナタで〇が敵、線が武器になります。これに合わせて私の分身と向かい合ってください」
● ━〇
「・・・・」
「何故自分が黒丸なのか? この間、同僚とオセロをやった時に私が白だったからです。多少アナタの位置を視認し易いかな?と思ったぐらいで意味はありませんよ。アナタは白派でしたか? オセロの色でモチベーションが変わって強さが変わる人っていますよね。でも今は白波でも黒で我慢してください」
「・・・・・」
「そしてこの間合いの壁ですが視認し易い物だけでなく、目に見えないけど攻撃が最大まで届く距離や少し踏み込めば届く距離などが有り、逃げて離れようとしているか、アナタの方が間合いが広い武器を持ってる場合を省いて、その中で戦う事になるでしょう。離れ過ぎるとアナタが攻撃できませんからね」
「・・・・・」
「アナタの武器が相手と同じ間合いか、それ以下ならこの切先の壁を越え無いと攻撃が相手に届きません。その為、まず狙うのは武器です。相手の武器を払って隙を作り、こちらの間合いに相手を捉えるのです。ですがそれは相手にしても同じで逆に武器を払われない様に警戒する必要があるでしょう。互いに少し動けば相手の武器を捉える事が出来るこの間合い牽制し合う事になるでしょう」
●━ ━〇
「・・・・・」
「この戦いは相手がアナタを攻撃しようとした瞬間や、武器ををそらそうと動こうとした瞬間に打ち込む事になります。そしてもう一つが、アナタと相手の切先の間合いを越えて、互いの武器が交差したもの、鍔迫り合いに似た間合いです」
●═〇
「・・・・・」
「武器同士が接触し合っていて、どちらが主導権を握るかの取り合いを積極的にしている状況ですね。西洋剣が得意とする間合いで油断すればアナタの切先を相手が根元で捉えられれ武器を逸らされつつ相手の切先がアナタを襲うでしょう。ちょっと厄介ですね」
「・・・・・」
「さて、ここからが本題。多数の敵を相手すると仮定し、素手同士の戦いでのアナタが一度に相手にする人数は前方、後方、左右の4人です。これは空からの攻撃や地面の下から攻撃を省いた数字になります」
〇
〇●〇
〇
「・・・・」
「ですがアナタが武器を前に出して構えていたらこうなるでしょう」
〇〇
〇●━〇
〇〇
「・・・」
「対処しなければならない人数が増えました。アナタが武器を持っていたらその武器が使えない様に相手は動きます。刃がついていない棒なら誰かが掴みかかって動きを止め、その隙に誰かが攻撃すればいいのです。相手にとっては武器も攻撃対象になりますから敵を寄せ付けない様に武器を前に構えると、その武器を向けた相手以外の人間にも狙われる危険が有ります。では逆に相手が武器を持っていた場合はどうでしょう?」
〇 〇 〇
\ ┃ /
〇━ ● ━〇
/ ┃ \
〇 〇 〇
「・・・・」
「この様に相手はアナタをより多くの人数で取り囲み攻撃する事が可能でしょう。アナタや相手の持つ武器の間合いによりこの様に変化します。射程の長い射撃武器ならさらに増え、数は膨大になるのでしょう。ただしこれはある程度の長さの武器を、前に突き出したように構えた場合です」
「・・・・?」
「剣道の様に切先を相手に向けるのは一対一には有利ですが、前に出した武器を大きく旋回させねばなりませんから旋回速度が落ち、多人数相手の戦いには不利なのです。そこでもっとコンパクトの構え直してやります」
〇
〇●╸〇
〇
「例えば剣術言うところの八相構えで、武器の先を上に向け、利き手の肩の位置に剣の鍔が来る感じで構えます。そうすると重心が身体に近くなり旋回速度が速く多方面に対応でき、力をかけられると弱い先を頭上に上げてしまいますから武器がとられ難くなります。武器を小さく構える事で、相手にしてみれば武器を狙った行動が取り難くなります。ですが攻撃の際に振り下ろした所を狙われるので、相手がフェイントを多用して来たら注意しましょう」
「・・・・・」
「また、この構えは正面から体当たりや、盾で腕の動きを抑えられてしまうと抑え込まれてしまうと武器を振り下ろせないので注意しましょう。剣ならさらに大上段に構えて対応する手もあります。武器を持った腕を高く上げて腕をを自由にし、上から武器を振り下ろすか先を突き下ろして攻撃するのです。ですが胴がガラ空きになるので防御力が低くなります。ですから盾での押し合いが多かったころの騎士の絵には、身体をを守るための盾を持ち、上段に剣を構える姿が描かれていたりします」
「・・・・・」
「さて勇者候補よ。敵に仕方なく囲まれた時の事を考えお教えしましたが、囲まれた時点で絶望的な状況ですので包囲から脱出せねばなりません。どうにか包囲の穴を見つけてそこを抜けるか、・・・自爆覚悟で突っ切るしかないでしょう。例えばですね」
〇
〇●═〇
〇
「囲んで居る敵の1人に鍔迫り合いを挑みます。そして相手を倒すのではなくその周りをクルっと回り背後を取ります」
〇 → ⤵
〇↗ 〇━ ━●
〇
「そして相手全体が入る様に離れ対応します。相手に場合掴まれてたり、足払いで転ばされて離れられずに囲まれる危険が有りますので、危険な行為であることをしっかり認識しましょう」
「・・・・」
「そして敵全体を視界にとらえる場所に移動するのは対集団戦の基本です。そうしたら距離を取って相手を誘い込みましょう一人づつ相手にしながら相手の数を減らしていくのです。例えば」
〇
● 〇
「こう、ほぼ同時に敵が走って来たとします。そう言う時は焦らず敵の1人を壁にできる様に移動しましょう」
〇
〇
●
「この様にして自分が一対一で戦える様に位置取りをしながら倒すのです。しかし不利な事には変わらないので逃げれるのなら逃げてしまった方が良いです。また、蛇を潰すなら頭からと言いますが、リーダーを失って暴走する危険もありますし、練度の高い兵士なら司令官を失っても混乱は最小限です。相手にするなら弱い相手から確実に潰して数を減らすことに専念してください」
「・・・・・」
「では今回の教習はここまでになります。それでは次回お散歩しましょうか」
そう言って女神達は去って行き、アナタは日常に戻っていった
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