27日目 泥仕合になりがち
再び教習に来たアナタを、女神が出迎えた
「よく来ました勇者候補よ。さて、今日の教習を始めますよ」
「・・・・」
「今回の教習はダガーと防御です。何度か教習に出ましたね。しかし扱いが難しいので説明は省いていました。一応棒の使い方でも使えますしね。長さも逆手に持って前腕より少し長い位と何紹介した短棒と一緒です。ダガーと言うと両刃の物を想像するでしょうが片刃や刃の無い物もあり、どれも共通して刺す事に特化しています」
「・・・?」
「何が難しいのか? ダガーとか短く鋭い武器って相手と組み合ってると自分を刺しちゃう危険があるんです。緊急時では順手で抜いてる暇がないので逆手で抜き対応するので、間合いが短く相手と組み合う可能性が高いのです。また、完全に使いこなすには細かい動作と切先をコントロールする正確さが要求されます」
「・・・・・」
「と言う訳で使いこなすのも難しいけど、身を守る為に使わざる負えない状況で対応できなければ困るので、例をいくつか出して、攻撃と防御を一緒に学んでもらいます」
「・・・・」
「では始めましょう、ダガーは利き手側の腰に吊るすと以前に話しましたが、相手はアナタが武器を抜くのを封じようと利き手を狙ってくる危険が有ります。身体に身に着けて携帯する武器は、出来る限り両方の手で扱える様にしましょう。そして武器を抜く際は、武器を抜く手をもう一方の手で守りながらフットワークも使い武器を抜き構え直して対応します」
女神は武器を装備して、自ら実演しながら説明する
「・・・・・」
「もし無事に相手と間合いを取れたら逆手から順手に持ち変え対応し、さらに余裕があればダガーを利き手と別の方の手に持ち替え、さらに利き手で剣を抜くなどして対応します。ダガーを鞘に戻さないのは、武器を戻す時の方が抜く時よりも隙が大きくなりがちだからです。切先を鞘に入れなければなりませんから。失敗すれば自分を刺してしまうでしょう。だからと言って投げ捨てれば敵に利用される危険が有ります」
「・・・・」
「この方法は武器を抜くまでに相手の武器を素手で対処せねばなりません。方法の一例をお教えします。まず相手の前腕を押さえ攻撃を捌き時間を稼ぎます。攻撃して来る前腕掴むのは難しいですが、もし偶然出来てしまったら手首の動きを封じる必要が有ります。手首を回すだけで斬り付ける事も可能ですし、柄の部分で関節技をかけてくる危険もあるからです。こう言った刃物の対処は難しいのです」
「・・・・・」
「もう一つの方法は相手の武器を捌く方法です。相手の刀身の刃の無い場所を狙って払うか、刀身を可能なら掴みます。このどちらの方法も大怪我をしやすいですが、こうするしかない場合が有ります。ダガーの逆手持ちの攻撃を相手の前腕を狙って捌こうとしても、ダガーの長さだと切っ先がこちらに届いてしまう危険が大きいのです。こういう鎌やピッケルの様に一点が飛び出した攻撃は受け止めようと危険な事が多く、横に払いのけるしかないでしょう。こういう時に丈夫な小手が有ると便利です」
「・・・・」
「相手が武器を抜きアナタちゃんと認識できる様になるまで3秒はかかるでしょう。3秒生き残るか、可能なら仕留めてしまいましょう。必死に足掻いてください。相手も必死にアナタを殺そうと足掻くでしょうから、ちゃんと応えあげましょう」
女神は不敵な笑みを浮かべている
「・・・・・・」
「さて、では次の段階、片手でダガーを持ったまま剣を扱う二刀流です。この時のダガーは機動力を生かし防御に使うのがメインとなりますが、剣の方も防御に使える事を忘れないでください。自身の剣の攻撃で出来る隙をダガーでカバーしましょう。基本は片手剣と使い方は一緒ですが、左右の手で長さの違う武器をそれぞれ違う動きをさせるのは難しいので、慣れていないなら無理をせず複雑な動きはしない事をお勧めします。腕を切っちゃいますからね。もし使いこなさるなら強みになるので棒などで練習してみましょう」
「・・・・・」
女神は何かを思い出したかのように手を叩き、空間から何か板の様な物を取り出した
「ついでにこっちも紹介しましょう、盾です。こちらも扱いが難しく今まで紹介してませんでした。主に盾の裏の中心に取っ手が付いていて、そこを握ってつかうハンドルタイプと。前腕にストラップで固定して使うストラップタイプの2つのタイプが有ります」
「・・・・・?」
「盾の何が難しいのか? まず素人が盾を使うと戦闘でのストレスでその裏に隠れてしまうのです。それでは盾で視界が塞がり相手が見えずやられてしまいます。回り込んで攻撃する方法は剣で教習した通り、他にもいくらでも攻撃方法はありますから良い方法とは言えません。相手が見える透明な盾だったり、機動隊の様に仲間と陣形を組んでサポートが有る場合は別ですが」
「・・・・・」
「それと素人は盾を過信してしまう傾向が有ります。基本的に盾は攻撃を完全に防げるものではありません! そこをゲーム等の感覚で勘違いしているのです。盾は攻撃を捌く防具で、視界を塞がない様に相手に盾の面では無く縁を向け、やや斜めに構えるのです。そうして相手を攻撃を見て捌いて防ぐのです。他だと胸の前に構えて上から覗きながら構えて、盾をプレートアーマーの代わりにする様な使い方ですね。その構えで使う盾はストラップタイプで足の動きを妨げない様に、盾の下部がとがっています」
「・・・・・・」
「相手が見える様に構えても安全ではなく、盾の縁を攻撃されて盾がめくられたり、自身の持つ盾を押し付けられ動きを封じられるなどの危険が有ります。盾を扱うのは特殊技能なのです」
「・・・・・」
「盾を攻撃を防げる程丈夫に出来ないのか? 盾を厚く作れば重くなり機動力が下がります、簡単に回り込まれますので格闘戦では致命的です。例外として遠距離武器に対処する為に丈夫な盾を”設置しながら”隠れて進む位でしょう。設置すれば、敵が近づいて来て危なくなったら離れればいいのです」
「・・・・・」
「設置型でなくても盾は遠距離武器の防御によく使われ、手に持って矢を防ぎ”例え矢が貫通してきても”着ている防具を貫通しないまで威力を削いだり、身体に当たる前に止まってくれるのを狙って使うのです。ボウガン兵が再装填中に盾に隠れられるように背中に盾を背負う事も有ります」
「・・・・・」
「どうしても盾を使いたいならちゃんと訓練してくれる人を探して練習しましょう。それまでは鍔のしっかりしたダガーを持つか、刃物で捌くのが不安ならバックラーを使いましょう。小さな盾なので振り回しやすく、視界を塞ぎませんから使いやすいです。農民が畑仕事しながら片手剣と一緒に腰に携帯していたほどです。・・・ただ、矢には弱いです。小さすぎて防ぎきれませんし、もし矢がバックラーに当たっても貫通した矢が手を抉る可能性が高いのです」
「・・・・・」
「今日の教習はここまでにしましょう。では勇者候補よ!また次回!」
そう言って女神は去って行き。アナタは日常に戻っていった
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