22日目 安全✚第一

アナタは何時もの様に教習に来たのだが、工事現場で被る様なヘルメットを被って待ち構える女神に遭遇したのだった


「・・・」


「安全第一!勇者候補よ! よく来ましたね」


「・・・・?」


「このヘルメットはなんだって? 今回の教習は防具だからです! 特に頭ぁ! 顔を売る為とか適当な事を言って、最近の勇者は兜を被らないんですよ! それどころか、そんな勇者に毒されてか、異世界の人間でも兜をかぶらないんです!! 特に重要人物っぽい人間が!!! 最近の異世界はたるんでますよまったく・・・・」


「・・・・・」


「そんなに怒る事? 大問題です! 鉄板を軽々と貫通する銃弾が飛び交う戦場で戦う現代の軍隊だって防弾効果はなくともヘルメットで頭は守りますよ。古代ギリシャ兵なんて盾は持ってますが全裸に兜です! 例え男の急所が丸出しでも頭はしっかり守るんです。頭を守る重要性を再認識させるべきでしょう!」


「・・・・・」


「さて、前置きが長くなりましたが、さっそく本題に入らせていただきますよ」


 女神はヘルメットを脱ぎ投げ捨てて静かに言った。女神の前には様々な種類の兜が並べられている。それらを手に取りながらアナタに女神は説明した


「・・・・」


「さて、では防具選びの教習を始めます。まず頭の防具ですが、安価な物のだと頭部しか保護されてません。その分通気性が高かく旅に使うのは良いかもしれません、山道では上からの落石の危険もありますからね」


「・・・・」


「岩? いえ、岩が落ちてきたらさすがに助かりませんが、山道では上から小さな石が上から転がって来ただけでも大参事になりかねません。それに岩場や洞窟だったら岩壁に頭をぶつけたりしたら大変です。致命傷でなくても頭の出血は多いですから、血が垂れて目に入れば視界が塞がりますし、感染症になったら最悪です。戦闘中でなくても頭部はしっかり守りましょうね。防具が無いならバンダナや帽子で間に合わせる等の対策をする事をお勧めします」


「・・・・」


「出来れば後頭部をプレートでしっかり守れる兜を選ぶ事をお勧めします。剣の教習で教えたように相手が真正面にいても後頭部を攻撃される危険がありますからね。広い視野を確保したいのなら陣笠の様に縁の広い物ではなく小さい物を選びましょう、視野の広さのチェックは前に教えた通り、試着する際に意識してみましょう」


「・・・・」


「逆に縁が広い物を選んで、大砲の衝撃等で上から振ってくる破片や矢等をしっかり防げるようにし、日差しから目を守るれる物を選ぶ手もあります。想定する状況に合わせてくださいね。防御力を重視するなら顔を覆うバイザーなどが付いてる物が良いですが、頭を被いすぎると音が聞き辛くなったり、息がしずらく視界も狭くし、慣れないとストレスの原因になるので注意です。このストレスは兜をかぶる上で最大の敵ですからね」


「・・・・?」


「人間に頭に何かが乗ってると強いストレスがかかり、兜を脱いじゃいたくなるんですよ。なんとそれが戦闘中であってもです! ストレス対策はかなり重要ですから慣れてない内は顔を覆う様な兜は避け、着け心地の良い物を選びましょう。ちゃんとストレス対策しないと戦場で ”うわー!” となって自ら防具と理性を捨てる愚行を取るかもしれません。言うまでも無く非常に危険ですからね」


「・・・・・」


「後、兜のデザインで尖がった物が有りますが、アレは上から攻撃された際に力を横に受け流せる様にしたものです。くちばしの様に前に尖がったバイザーの付いた兜が有りますが、アレも飾りではなく攻撃の力を受け流す工夫によって生まれた物です。こう言った事を考慮してデザインから選ぶのも手ですね」


「・・・・・」


「さて、次は頭の次に大事な部分である、人間の大切な臓器が詰まった胴体を守る防具です。いきなり服の上から鎧をまとうのではなく、鎧の下に何か着るのが普通でしょう。ガンビスンなど防御性の高い衣類や、鎧の隙間を攻撃されないようにチェーンメイルを着こんだりとかですね。これくらいは知ってる人も多いでしょう」


「・・・・」


「ガンビスンの腕にジャックチェイン等の板のついた追加装甲をつけたり、チェーンメイルを着るだけでも防具として十分ですが打撃に弱いので、プレートアーマーは欲しいところ。プレートアーマーは板で打撃力を分散させ、着用者との間にすき間を作って、衝撃が伝わり難くするので優秀です。胴体をすべて被うのではなく背中が空いた物もありますので通気性や機動力をある程度確保するならそれらを選びましょう。鎧にも流線形の形をしていて衝撃を受け流す構造になって利る物が有ります」


「・・・・」


「そして日本の甲冑は腰に帯を巻いて、鎧の重量が肩に集中しない様に腰でも支えられるようになっていたりします。疲れにくい様にこれらの工夫をしながら着みるのも良いでしょう」


「・・・・」


「頭と胴、これで重要な部分は守られたわけですが、このままだと重心が上に偏ってしまい転倒し易くなってしまいますから、そこは注意してください。重量を分散する為に手足にも防具をつける人も居ます。個別に防具をバラバラに選ぶよりフルプレートの鎧一式ならその辺りのバランスはバッチリでしょう。お高いですが、元からセットで使う事を想定してますからね。しかし、しっかり守られた防具程通気性が悪いですからご用心を。戦場で脱水症状で死んでしまった騎士もいるくらいです。メンテナンスの事を考えても初心者には色々と敷居が高いのが難点ですねぇ」


 そう言いながらも女神はフルプレートを着込み、ガシャガシャと鳴らして見せつける様に言っていた


「・・・・・」


「そして手足に防具をつけると、その重さで動かす時に疲れやすくなってしまいまう事も考えましょう。ですが戦闘では手は狙われやすいので、前腕ががしっかり守られた小手が有ると便利です。その為、胴は付けずに小手を優先し装備する人も居るぐらいですね。自身の戦闘スタイルと戦場の状況を見極めてあえて極端な装備をするのも手ですね。何度も言いますが頭の保護は大切ですよ!」


 女神がそう言った後、女神が来た鎧は兜と小手を残して、バラバラに崩れていった


「・・・・・」


「そして小手とは逆にないがしろにされやすいのが足の防具です。機動力が落ちますからね、それに剣での戦いは下段を攻撃すると上段がガラ空きになるので避けますから。しかし相手がハルバード等の長物を持っていた場合は積極的に攻撃される恐れがあります。剣でも下段を攻撃しても上段を守れる様に二刀流にしたり、盾を持ってたりしたら下段も狙ってきます! ですから体力に余裕が有るなら足もちゃんと保護しましょう」


「・・・・」


「名を売るなら防具を目立つ物に特注するのも手です。顔を売るよりこっちの方が手っ取り早いでしょう。写真付きの新聞なんてある可能性は低いですし、顔を売っても身内にしか通じませんからね。漆黒のフルプレートだの、身の丈越える大剣だの自分のシンボル的な物を身に着けて活躍する方が名を売りやすいです。偽物が出る可能性も無い訳ではありませんけどね」


「・・・・」


「今日の教習はここまでにしましょうか。ではまた次回出会いましょう勇者候補よ」


 そう言って女神は去って行き、アナタは日常に戻っていった

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