16日目 ナイフは旅の友

 今日も教習に来たアナタだったが、何やら何時もと様子が違っていた


「ようこそ女神の道具屋へ! 待ってましたよ勇者候補よ」


 何やら様々な道具が置いてある雑貨屋の様な場所で女神はそう言った


「・・・?」


「どういう事かって? 異世界に旅立った際に、いざ!道具を揃えよう! っとなっても何を用意すればいいか迷っちゃう人が居るかと思いまして」


「・・・・・」


「いやぁ~、最近の勇者は”武器防具と回復薬を持っとけばなんとかなる!” っと言った脳筋野郎が多くて、旅での生活に必要な物をそろえる事を怠る者が多いのです! そこで世界によって事情は違うでしょうから、ざっくりとこんな物を用意すると便利だよとお教えしようと。この教習で何となくでもどんなの用意すればいいか分かる様になっていただきます。よろしいですね? まず脳筋でも馴染めそうな道具であるこちらを・・・・」


「・・・・・」


 女神は何やら通販番組の様な事を始めた


「ではまず初めに、野外活動で何かと必要になるこちらの商品♪ 今日の教習はナイフをご紹介します。キャンプの為に木を切りたい! 食べる為に食材を刻みたい! しかし、剣やダガーでは細かな作業には向かず手を切ってしまい、乱暴な使い方をして大事な武器を痛めてしまった! そんな事にならない様に専用の雑用に使うナイフを持っておきましょう! 刃物ですが武器ではありません、道具に特化した物を選びましょう。武器に使うとしても非常用です!」


「・・・・」


 女神はズラっと目の前にナイフを並べて手に取り実演しだす


「様々な形状のナイフが有りますが、どんな物がオススメか例を出します。まず刃の形状! 両刃のダガータイプですが両側に刃がついている事により。鞘から抜いた時に刃の方向を気にせず直ぐ使え、何かに絡まった時など非常時に素早く対応できます」


「・・・・」


「ですが、日常的に使うならナイフの刀身の背に親指を乗せて使える片刃の方が良いでしょう。この方が細かな作業が出来ますし、親指を乗せないとグリップが細いナイフを使う時に力が入りません。刀身の幅はリンゴを剥く時に刀身の横に親指を乗せられるぐらい広いのが個人的のオススメです。刃渡りは15センチに届くか届かない位で十分でしょう。刃渡りが要る作業なら剣やダガーで間に合わせられますから。薪割りなどパワーが要る作業なら小型の手斧が有ると便利です。余裕があるならリュック等に入れておきましょう」


 女神に皮どころか身まで綺麗に剥かれたリンゴは芯しか残らなかった


「・・・・」


「そして刃の下にヒルトがついてるナイフが良いです。これなら手を滑らせても刃に指が届きませんから怪我の防止になります。刀身の幅が包丁の様に出っ張っていてヒルトの役目をするものでも構いません」


「・・・・」


「そして何と言っても強度が大切です。ナイフの背を思いっきり棒で叩いても安心な物を選んでください! バトニングと言って、木材などでナイフを叩き、そのままではナイフで対応できない大きさの木に刃を食いこませる事が出来るのです。例えばば薪を割る時はあらかじめ木片で三角形のくさびを作っておいて、この様に・・・ッ!」


 そう言って女神は薪にナイフを当て、別の薪を掴みナイフを叩き始め、ある程度く言いこんだ所でナイフを薪から外した


「カン、カン、カン!」


「・・・・!」


「バトニングで薪にナイフの刃を食いこませって裂け目を作り、ナイフを取り除いてその裂け目に先ほど作った木片の楔を挟んで、楔を棒で叩きます。そうすれば手間はかかりますが小さなナイフでも薪は割れます」


 女神が差し込んだ楔にポンと別の薪で叩くと、楔路撃ち込まれた薪はパカンと割れた。そしてさらに女神は言う


「楔の幅が足りず割れなかったら、更に幅が広い楔を作って叩き込めばいいのです。手元にナイフしかない非常時の為に覚えておきましょう」


「・・・・」


「もう一つ大事なのがグリップ。手に馴染むものが良いのは言うまでもありませんが種類が豊富です。まず強度だけなら包丁の様に板状になったナイフのグリップになる根元を板材で挟み込んだフルタング構造が丈夫で良いでしょう。ですが握る場所に金属が露出しているので、寒い場所だと冷気が手に伝わって不快です」


「・・・・」


「そう言った状況に強いのは、グリップになる棒材の中心を貫いてナイフの芯が通った構造になっているナロータングでしょう。グリップに鹿の角を使えれば寒い場所でも楽ですし耐水性も高いです。しかし!刀身の根元が構造上弱くそこから折れやすいのが難点です。そう言った強度面ではフルタングの方が良いですね。またグリップの底をハンマーの様に使える強度が有れば言う事なしです」


「・・・・」


「後、こんなのも有ります。グリップを鉄を丸めたパイプの様にして、狩猟の時に棒に差し込んで槍に出来る物です。差し込んだ後棒に固定する為に横に釘を差し込む穴が空いてたりします。蓋を作ってグリップの穴をアイテムを入れる収納ボックスの様にも使え。サバイバルナイフの原型の様なタイプになります」


「・・・・」


 女神はナイフをしまって今度は鞘を一杯取り出した


「そして見落としがちなのがナイフのさやです。出来るだけ鞘の先端が金属で補強された物など丈夫な鞘を選びましょう。鞘の先は座ったりして何かにぶつけるなどの原因で摩耗し易く、気が付いた頃にはナイフの切先が鞘から飛び出していた!なんて事もあります。コストパフォーマンスを優先し直ぐに取り換えられる鞘を選ぶという手もありますが次の点にご注意を。ナイフを鞘に納める際に切っ先が鞘の側面を貫いてしまい身体を刺さない様に! そしてナイフを取る出す際に鞘が切れて怪我をすることが無いように! この二点に特に注意してください」


「・・・・・」


「もちろんちゃんとご自分で研げる様にしてくださいね。先が丸くならない様、刃の角度を一定に保ち、押す時に力を入れて研ぐか、回す様に動かして研いでください。ナイフを使った時についた汚れはちゃんと拭き取る事!錆びる原因になりますよ。そして一通り作業が終わったら錆止めの油を塗るのもお忘れなく」


「・・・・」


「今日の教習はここまで! 次は別のグッツを幾つか合わせて紹介します。ではまた会いましょう」


 そう言って女神は去って行き、アナタは日常に戻っていった

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