14日目 頑張るのです、超素人よ!
再び教習に来たアナタは用意されていた席に座った
「よく来ました勇者候補よ。さて、今日で仕上げといきますよ」
「・・・・・」
そう言って女神は、前回の1メートル前後の長さの棒を取り出し、アナタに言った
「また前回のこの棒を使います。もう一つの持ち方、槍持ちの一種で前回の構えよりも近い間合いで戦える持ち方です。棒の両端辺りを握ります。握る位置は肩幅より少し広く、持ったまま腕をだらんと下げた時に両手の甲が前を向く様に持ちます。戦う時は普通に前出して構えます」
「・・・・」
「防御する際は棒の持ってる手と手の間で攻撃を受けるのが主になります。攻撃は片方の端を握った手を滑らせ引き、棒の片側を伸ばす様にして打ちつけます。これにより棒の攻撃する側を瞬時に切り替えながら攻撃し、相手に動きを予測されにくい攻撃が出来ます。これまで教えた持ち方だと棒の先の動きさえ見れば動きは読めますがコレだとそうはいきませんからね。この伸ばした側で攻撃を捌いた後、直ぐに引っ込めて逆側を伸ばして攻撃するなど変幻自在な動きができます」
「・・・・・」
女神は棒を床にトンと突いて、説明した
「後は片手での特殊な持ち方を二つ紹介します。一つは片手での逆手持ちです。この棒のサイズで気づいたかもしれませんが、杖と同じくらいの長さです。ですから杖を突いていた様に棒を持っていた時に襲われても身を守れるようにする為の戦闘法にもなります」
「・・・・・」
「杖持ってないし、自分が使う機会あるのかと? お年寄りでなくても長旅に杖があるとかなり楽になりますから、それらの理由で使う事が有るかもしれません。しっかり身に着けましょう。攻撃は下から振り上げや、片手持ちでご説明した身体の横で回して勢いをつけ振り下ろしたりして牽制し、逆手から順手に持ち替えるなどして他の持ち方に切り替え戦います。難点は腕の可動域の関係上、棒を持ってる腕と逆方向からの横薙ぎに振るのには向いてません。相手にとって安全な空間が出来てしまいますから危険です。直ぐに持ちけえられる状況を作りましょうね」
「・・・・・」
「もう一つの特殊持ちは、棒の中間を片手で握る持ち方です。上下に伸びた棒の部分で攻撃も出来ますが攻撃力が低く、この部分で攻撃を捌く防御に向いてます。ですから防御し易い様に棒を縦に構えて盾のように使うのが主な戦闘法です。シャレではありませんよ? アフリカのズールー族の棒術やインドの武器マドゥと似た戦闘法になりますね」
「・・・・」
「基本的に防御の持ち方ですから、攻撃の為の他の武器と合わせて使います。その際は防御に使う棒を前に出して構えます。この棒を持つ手にさらに小型の盾を一緒に握って防御力を上げて使う事もでき、奇妙な握り方ですが他の装備と合わせる事により、これまでの持ち方とは別の意味で応用力が有ります。さて、次は・・・・・」
「・・・・!」
女神は棒を空間にしまって、さらに長い棒を取り出した
「よいしょっと! この棒!2メートルを超える様な棒ですが…、まあ、今更教える事はないですよね、槍の様な使い方です。剣の様に持つのには長すぎて当然むいてませんが、端を持って頭上で振り回し牽制したりと言った攻撃もあります。注意としては槍の様に持つ際にあまり端の方を持つとリーチは伸びますが、重心が前にに偏り過ぎて機動力に欠け、相手が懐に入って来た際に棒の底で反撃する事も難しい事です。丁度いい位置を探り、状況に合わせて変えるなどして柔軟に対応しましょう」
そう言って女神はさっき出したばかりの棒を置いてしまった
「・・・・・?」
「長い棒の説明はそれだけか? これだけですよ。取りあえず、これの一つ前の長さの棒の使い方を覚えてもらえれば十分です。さて勇者候補よ、立ってください。素振りの練習を始めますよ」
そう言って女神は定規を持って教習した時に使った放射線状の絵と、これまで紹介した出して並べた
「・・・・」
「さあ勇者候補よ、好きな棒を持ち練習するのです。ご自分でホームセンター等で木の棒材を用意し練習される場合は、恐らくニスなどが塗られていないので使う前に油を浸み込ませた布で磨いておきましょう。異世界で木製の武具を使う際の手入れの練習にもなります。武具の専門店ならば強度が十分でちゃんとした物が手に入りますが、お高いですよ」
「・・・?」
「油磨きをやる必要性? 表面が保護されていないと気候の影響をもろに受けますからです、油を浸み込ませれば湿気や乾燥に強くなり強度も上がりますよ。向いてる油とそうで無いものが有りますから専用の物を使う事をお勧めしますが、クルミを布の中で潰して染み出た油で磨く事もできます。定期的に磨いて表面をピカピカにすればトゲが手に刺るような事態を抑えられます。布で磨くだけで不十分なら先に紙ヤスリ等で整えてから油で磨きましょう。注意としては油を浸み込ませた布は発火性が高いですから火事にならない様、大量の水でジャバジャバ洗ってから捨てないと危険ですよ」
「・・・・・・・・」
「ハハハ、紙ヤスリは異世界に無いでしょうけど代用できるものが見つかるでしょう。さあ勇者候補よ。そんな事より定規の時の様にあの線をなぞって練習するのです。太くて掴みにくいペットボトルで練習し、拳立て伏せで手首を鍛えたアナタなら腕力は十分でしょう」
「・・・ッ・・・ッ」
黙々と練習アナタに、女神からの指示を出した
「そうです勇者候補よ。しっかり打ち付けられるようにしっかり握り、握った棒にかかる衝撃をしっかり手で受け止めましょう。パンチと一緒です。拳で打つ場合は拳に当たった衝撃が手の骨を通って前腕の骨に真っ直ぐ伝わるように、棒で打った衝撃が手で受け止められて前腕の骨にしっかり伝わるよう意識して」
「・・・ッ・・・ッ」
「当てる部分は武器の先端よりやや後ろの部分です。刀は切先三寸で斬れって言葉を聞いた事ありません? 物打ちと呼ばれもっとも効率よく衝撃を伝えられる場所です。武器のバランスによって物打ちの場所が変わりますが、力をしっかりと伝えようと中央の部分で打たない様に! 素人が刀の試し斬りでよく中央の部分で斬ってしまい失敗する事が良くあるんですよ」
「・・・ッ・・・ッ」
「線をどこ方向からもなぞれる様にして! 突きをする際は線が重なる中央の線を正確に狙える様に! この線は相手が攻撃して来る場所の目安でもあります、防御の練習も怠らないで!」
「・・・ッ・・・ッ」
「長い棒を振るだけでなく手から少し飛び出る程度の短い棒の練習を! 飛び出たヵ所で突く様に線をなぞって! 飛び出たどちら側でも攻撃出来るように、線が重なる部分を狙って真っ直ぐ突けるよう鍛練も!」
「・・・ッ・・・ッ」
アナタはしばらく練習し、少し時間がたった頃に女神に話しかけられた
「そこまで! 今日の教習はもう終わりにしましょう。素材を細かく加工し物を作る刃物が発明の母なら、応用が利き様々な動きが出来る棒は武術の父なのです。他の武器にも応用できますからしっかり鍛錬を。そしておめでとう勇者候補よ。今回で超素人編は終わりです!」
「・・・・!」
「明日からは凡人編となりますので覚悟してくださいね。ではまた次回! 棒を振り過ぎて物をを壊さないでくださいよ!」
そう言って女神は去って行き。アナタは日常に戻っていった
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