11日目 猿カミ合戦

 再び教習に来たアナタ


「よく来ました勇者候補よ。拳立て伏せで拳と手首の鍛練にはげんでますか?」


「・・・・」


「そうですか。まあ、拳なんか鍛えても使う機会なんて滅多にありませんけどね」


「・・・!?」


「そう怒らないでください勇者候補よ、冷静に考えてください。魔物と戦争してる様な人間は普通に武装していますし、魔物を殴り殺せるって双頭ですよ。殴れる間合いに近づくのは難しいですし防具の上から殴っても大した効果はないし怪我するでしょう。服の下に防具を仕込んでいる事も有るので油断は禁物です」


「・・・・」


「そこそこ使えるとなると怪我をし難い手の平下部の肉厚の部分で殴る掌底と踵で踏みつけるスタンプですが、掌底は狙える場所が頭部に集中しますし、顎が露出してないと難しいです。スタンプも使うには相手を地面に倒す必要がありますが、小手先の投げ技では訓練を受けた兵士に逆に投げ返されますし、掴んだり掴まれたいしている間に他の相手に攻撃されます。前蹴りの要領で踵蹴りを放って蹴り倒そうとしても、鎧の曲面を利用して受け流されてしまうでしょう」


「・・・・?」


 女神があなたの疑問に酒場の絵をホワイトボードに描き説明した


「じゃあ何で教えたって? 異世界転生物って西洋的な文化の所が多いじゃないですか。ああいう所って手の平で叩くのが侮辱行為だとかで避けなきゃならない所が多いんですよ。ですから酒場の喧嘩とかにわざわざ掌底使わずに拳で殴り倒さないといけない事が有ります。酒場では武器を抜くのが禁止されてる場所が多く、荒んだ場所なら素手同士の喧嘩は余興として黙認される場合が有りますから覚えておいて損はないでしょう。下手すると見物人に囲まれて逃げ場がないですし・・・・」


「・・・・・」


「まあ、そんな荒んだ場所にアナタが召喚され無い事を祈りつつ。今日の教習です勇者候補よ。今話した通り素手で対応する事は難しい状況の事が多いでしょう。そこでざっくりと武器についての教習をします。現地で武器を入手しても使い方が分からないと困りますからね」


「・・・・・」


 女神は何故か原始人の絵を描き説明しだした


「まず、人類最古の道具は棍棒や石のナイフと言われています。それらを使い素材をさらに細かく加工し武器や道具を作り人類は発展してきました・・・が、今回は更に原始的な攻撃方法の物を紹介します。ズバリ投擲武器です!」


「・・・・」


「武器と言うより投げるという行為そのものですね。サルでも物を投げますが、人間の場合は肩の可動域が広いのでさらに効率的に投げる事が出来ます。手ごろな物を掴んで投げて攻撃できるのは人間の強みですので積極的に利用しましょう」


「・・・・」


「かっこ悪い? まあそう言わず。物を投げれば相手の攻撃の間合いの外から攻撃できますし、致命傷を与えられなくても隙を作れればそのまま逃げる事も出来ます。例え手に平に納まるような石でも相手より高い位置から攻撃すればさらに有効な打撃を与えられます。遠距離武器を使う際は高い位置に陣取った方が広い視野を確保できますから攻撃し易く有利ですが、場所によっては逃げ場が無くなるのでご注意を」


「・・・・」


「あと問題になるのは間合いの取り方です。近すぎれば反撃され、離れすぎると今度は投げた物を視認され避けられやすくなります。また投げた物を投げ返される危険もあります」


「・・・・」


「そんな時はですね、相手が投げ返そうと物を掴んが隙を狙って攻撃してください。他にも近距離で何か相手に投げ渡す感じで投げて相手が受け取った瞬間の隙に攻撃する手もあり、これの応用でワザと自分の武器を落して、相手が無防備にその武器を奪おうとしたら攻撃する手もあります。武器を使おうとその武器を手に取る瞬間に隙が出来るは全武器共通ですから留意してくださいね。武器を持ってるだけでは意味がありませんよ勇者候補よ! ちゃんと使える様に手で握り装備しなければ意味がありません」


「・・・・」


「どっかで聞いた事ある? ハハ、一度言ってみたかったのですよ。そして単に物を投げる攻撃から、投げる事に特化した投擲武器が生まれる事になります。一例としてはブーメラン等ですね、薄く横長で回転しながら飛ぶので気距離が延び、斬り付ける様な打撃が与えられます。カーブしながら飛ぶのを利用し飛ぶ鳥を追い立てたり、避けようとしても曲がりながら飛ぶので相手が軌道を予測しにくく当てやすいくなりました。狩猟用の物は大型で手元に戻ってくることは無いですけどね。ですがこれのせいでくの字の物なら何でも投擲武器だと思ってしまう人間が現れました・・・」


「・・・・」


「例えばククリですね。くの字に曲がった刃を持った鉈なんですが投げる物と思っている人が居ますが特別投擲に優れた武器ではありません。造りによっては投げた衝撃でグリップが割れたり刃が欠ける恐れがありますし、ククリの重量と形状では飛距離が伸びるなんてこともありません。格闘戦の武器として優れているのに投げてしまってはその武器を自ら捨てることになります。ちゃんとそこら辺は見極めてくださいね」


「・・・・」


「投げるとしたらナイフを非常時に隙を作る為に投げるのと一緒ですね。刃物が飛んでくると動揺してしまい隙が出来てしまい易いです。ですがそれで止めを刺すのは難しいですよ。ナイフを投げて刺す場合は回転しながら飛んで行くナイフの切先が丁度相手に当たる必要があります。高い技術が必要で距離感が大切ですから、昼間は問題ないなく刺せるのに夕方になって光の加減から距離感が変わり刺せなくなってしまう事も有るくらいです。急所に正確に刺すのはさらに難しいですからゲームの様に一撃でキメるのは至難の技でしょう」


「・・・・」


「特殊な物だと円の外側に刃が付いたチャクラムの様に回転しながら対象を切り裂いて致命傷を与えられますがね。どうしても投擲で止めを刺したいなら重い物を頭部に当てる方が確実です。ですが失敗しても確実に止めを刺せるように他の武器を用意しましょう」


「・・・・」


「他には逃げる相手の足に長い物を水平に投げ、足に絡ませて転倒させる技が有ったりします。アメリカなどの警察がトンファーを足に投げて犯人を捕まえる技術が有ります。それに特化した武器だと繋がった幾つに別れた紐の先に重りを付けて絡まる様にしたボーラ等の武器が有ります。投げると重りが遠心力で外に引っ張られ回転しながら飛び、獲物を捕らえるのです」


「・・・・」


「今日の教習はここまでにしましょうか。では勇者候補よ、また次回! しばらく座学が続きますが身体の鍛練も怠らない様に!」


 そう言って女神は帰って行き。アナタは日常に戻って行った

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